カリフォルニア・オフィス便り

オフィスのある北カルフォルニアの夏は、
日中は強い太陽が照りつける3 0 ℃ 前後の
暑さですが、朝晩は20℃ 前後のヒヤッとする
涼しさになることが特徴です。
乾燥しているので日中でも木陰に入るとスーッとする涼しさになります。
それが日本の熱帯夜を知っている我々には一番うれしいことです。
それでも日焼けは著しく、アメリカ人は皮膚がんになることを一番恐れています。

米国九大同窓会の支援

 さて、このオフィスには七月末に、九大卒業生であるRobert Huangさん(一九六八工・電子工学)からの寄付が届きました。彼が社長をしているSynnex Corporationの株で一千万円に達する金額を寄付頂きました。実際は税控除の承認を受けた九州大学同窓会基金(Kyushu UniversityAlumni Association Inc.)がそれを受けております。改めてHuangさんにはお礼を申し上げます。これに加えて、他の数人の在米卒業生からも頂いていますし、九大本部から総長初め理事、特別補佐の十六人の皆さんからまとめて総額六十万円を越える寄付を頂きました。この特別の配慮に改めて御礼を申し上げます。

 今後それをどう使うかを梶山総長や谷川教授らと相談してきましたが、大口寄付者の意向を入れて九大生にシリコンバレー(SV)ツアーを提供することに使うことに致しました。将来の起業家を育成し、かつ、SVのオープンな雰囲気や目的に向かってまい進する人たちの姿に直接触れてもらうことによって夫々の将来設計に何らかのよい影響を与えようという考えです。こちらから見ると日本全体が閉塞しているように見えます。その中で九大の若者がそれを打破して、自分で考え自分の将来を自分で切り開く力をつけるよう同窓会が支援しようということです。具体的にはこれから詰めますが、今の予定では来年の三月に第一回のツアーを行う計画です。


他大学オフィスとの情報交換

ベイエリアにおける大学間連絡会議のメンバー(東大、鹿児島大、大阪大、大阪府、熊本県、JETRO、学術振興会など)

 九大だけではなくSVにあるいくつかの大学オフィスも同じようなことを考えています。ここには九大のほかに東大、大阪大、法政大、鹿児島大のオフィスがあり、ベイエリア大学間連絡会議(JUNBA, Japanese University Network in BayArea)と称して定期的に集まって情報交換し、共同で出来ることを探索しています。大学のほか地方自治体や学術振興会もメンバーに入っています。先日その集まりがあり情報交換しましたので他グループが何をしようとしているのかを報告します(写真参照)。

 鹿児島大学は十月二十四日に卒業生である京セラ名誉会長稲盛和男さんを迎えてオフィス開所式を行います。同時に十人の学生のSVツアー(今年二回目)を計画しています。今回は特にスタンフォード大の日本語を勉強している非日本人学生との交流を目玉にしています。

 大阪大学は日本から教授が二人駐在していますが、まず、十月二十一日に河田聡教授をよんで「ナノテクノロジーの技術紹介とそのポテンシャル」と題するセミナーを計画しています。また、すでに三年前からサマープログラムとして技術者向け英語講座(一ヶ月)を開催しています。今年はUCサンタバーバラで行い、二十人の工学系大学院学生が参加して英語のWriting, Presentationスキル、などを学びました。宿泊は全てホームステイだそうです。今後この中に他大学からの参加も受け付けるスペースを入れていただくようにお願いしました。そのほか、大阪大学は教養部学生を対象としたe-Learning講座でSVの著名人の話を定期的にインターネット放映しています(www.osaka-u-sf.org参照)。

 情報では、早稲田大学の国際教養学部では年間三百人の学生を必ず米国に一年間(単位つき)留学させることを決めているそうです。お金もかかることですが、お金には換えられないものがあり人気学部だそうです。

 学術振興会からの報告では多くのセミナーの予定が発表されましたが、私が関心を持ったのは来年二月にテキサス大で行われる「ソフトパワー」のセミナーです。ソフトパワーの重要性はハーバード大学のジョセフ・ナイ教授が語り始めたことで、国家の影響力を拡大するにはソフトパワーを生かすべきだと説いています。アメリカは軍事力ではなくてこのようなソフトパワーをもっと輸出し、それを力とすることができれば世界中からもっと尊敬を買うことができるのではないか、というのが彼の主張です。そういう観点でみるとODAや憲法第九条は日本のソフトパワーの一つでしょう。ただ残念ながら、日本人はこのようなソフトパワーを効果的に利用して、日本の立場を世界のなかで強めてゆく戦略をこれまではっきりと持っていなかったようで、それが問題だなと考えています。このセミナーではどんなことが議論されるのか興味あるところです。

 東京大学の学生が中心になって組織しているアイセック(AIESEC)という団体があり、海外留学や留学生の受け入れなどを事業として行っています。先日その代表八人がSVを訪れ私を含む数人のビジネスマンと意見交換しました。英語の必要性、プレゼンテーションの重要性、日本の将来への危機感、異文化コミュニケーション、日本との大学の違い、などがテーマに上がりました。みな一度はアメリカに来たいと思っているがどうやってチャンスを作ったらよいのか考えあぐねている感じでした。

アキュメンバイオファーマのメンバー(中央の3人)左から石倉、鍵本、山口の各氏

 過日、九大医学部からの初のベンチャー会社であるアキュメンバイオファーマ(株)のメンバーが当オフィスを訪れてくれました(写真参照)。フィラデルフィアのインキュベーターであるサイエンスセンターと組んで新薬開発を行うネゴをした帰りに立ち寄ってくれたものです。

 日本の若者にとって一度は必ず外国に出て日本と違う外国の雰囲気を直接肌で感じることが日本を変えるために必要なことではないかと最近考えています。九大生のためのSVツアーもその一環と考えています。SVには素晴らしい経験を持ち、ボランティアで意見を日本に発信することに関心を持った多く方がおられます。その方たちの話を伺うことは若い方にも多大の影響を与えるものと思います。

 ここに他大学が行っている幾つかの活動をお知らせしましたが、九大もその中で何か取り上げることを考えてみたらいかがかと思います。例えば、上記の英語セミナーやe-Learning講座などを取り上げてみたらいかがでしょうか。特に後者は、システムは百万円くらいで簡単に設置することが出来、効果はかなり高いのではないかと思います。九大学生にもっとSVやアメリカの優れたところを知ってもらうにはやはりここに九大からの駐在員をおくことが必要かもしれません。これも今後お考え頂きたいことかと思います。

2005年8月
九大カリフォルニア事務所所長
松尾 正人(昭和36年工・応化卒)

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