伊都キャンパス/理学系地区基本設計

理学系地区基本設計について

新キャンパス計画専門委員会委員長
理事・副学長  有川 節夫

次世代を担うキャンパス

 二〇〇五年十月に伊都キャンパスが誕生し、工学系の学生と教職員による新しい生活が始まりました。伊都キャンパスへの移転は、マスコミ各社が特集を組み、地元の歓迎を受けるなど、九州大学の次世代を担う事業として順調なすべりだしをみせています。このたび、理学系の地区基本設計について、ウエストゾーンワーキンググループ(二〇〇五年十月まで大城桂作WG長。二〇〇五年十一月より荒殿誠WG長)における検討を経て、学内了承されましたのでご紹介いたします。

理学系地区基本設計の了承

 「地区基本設計」は、「新キャンパス・マスタープラン2001」に基づき、研究教育施設が配置されるアカデミックゾーンを東から文系、センター、理学系、工学系、農学系に五分割し、地区毎に施設、道路、駐車場、オープンスペース等の配置計画および各施設の概略設計等を行うものです。

 理学系地区基本設計では、理学系地区の特性や、利用者から示された様々な要望をもとに、ウエストゾーンWGおよびコアチーム(チーム長荒殿誠教授)、施設部、新キャンパス計画推進室、設計コンサルタントであるシーザーペリ&アソシエイツ・ジャパン(代表光井純)のスタッフが、精力的かつ慎重な検討を重ねました。さらに、マスターアーキテクト委員会(委員長渡辺定夫・東京大学名誉教授)によって、マスタープランとの整合やデザインの方向性等に関する審議を経て、二〇〇六年一月の新キャンパス計画専門委員会と将来計画委員会で了承されたものです。

多岐にわたる検討項目

 理学系地区は、ウエストゾーン工学系地区の東側にあり、センター地区と隣接し、キャンパスの東西動線を結ぶ要に位置します。理学系の研究教育スタイルを反映した平面構成、キャンパス・モールの人の流れや立面構成と景観等、検討項目は多岐にわたりました。これらの項目は、いくつかの空間タイプを検討する過程で一つの空間タイプに収斂し、伊都キャンパスにふさわしい風格のあるデザインにまとめることができました。これにより、理学系地区に関する財政的措置が整えば、速やかに施設設計、建設工事へと移行することが可能になりました。

 伊都キャンパスづくりは、インフラ整備やまちづくりとの連携など、地域とともに引き続き検討すべき課題も残っています。キャンパス整備とキャンパスを核とする学術研究都市づくりに向けて、関係各位のご支援を引き続きお願いする次第です。



理学系地区基本設計 総合計画図
理学系地区東面をセンター地区より望む 理学系地区を南西より望む


伊都キャンパス/理学系地区基本設計

理学系地区基本設計の特徴

新キャンパス計画推進室
助教授  坂井 猛

施設部整備計画課
課長  松岡 力

理学系地区基本設計の概要

 理学系地区は、計画延床面積約五万七千平方メートルという大規模な施設を有します。施設配置にあたり、マスタープランにおける幹線道路やゾーニングに関する前提条件をふまえた検討を行いました。作業にあたっては、理学系教員を主体とし、施設部、新キャンパス計画推進室等のメンバーからなるコアチーム(チーム長荒殿誠教授)を編成し、設計コンサルタントであるシーザーペリ&アソシエイツ・ジャパン(代表光井純)とともに、精力的かつ実質的な検討を行いました。理学系利用者のニーズは、施設部によるアンケートおよびヒアリングによって集約されました。

 理学系地区周辺には、北側に幹線道路、南側に歩行者専用の「キャンパス・モール」、敷地の東西には、周辺の緑地を結ぶ「グリーンコリドー」が整備されます。マスタープランに従い、地区の中央に研究教育棟、北側に将来拡張用地、南側に講義棟を配置しています。また、南西部には、既設の理系図書館があり、さらに南側に開放的な屋外空間「キャンパス・コモン」を配置しています。

研究教育棟の平面計画

 キャンパス・モールに接する理学系研究教育棟の低層部には、学部学生専門教育を実施する講義室を中心に配置し、中高層部には、大学院(学府・研究院)が使用する諸室を配置しています。中高層部の各階は、研究院および部門間の学際的交流・連携を促進するために、東西に長く連続する敷地特性を生かし、研究教育棟内を東西方向に連続させています。八ないし十の研究室を1ブロックとして、これを四つ並べることにより1フロアーを構成します。実験室が主体の「ラボゾーン」を研究教育棟の中央に配置し、諸機能相互のつながりに配慮して、南北面に教員研究室が主体の「オフィスゾーン」および大学院生のスペースが主体の「セミオフィスゾーン」を配置します。「セミオフィスゾーン」は、「オフィスゾーン」に準じた施設装備を行いますが、実験室への代用も可能です。さらに、施設の弾力的・競争的利用を可能とする「全学共用スペース」を設け、総合大学の特性を活かし、専門性を重視した、学際的な研究教育活動を促進します。

立面構成とスカイライン

 理学系研究教育棟の立面は、内部に配置される機能を表現することを基本としています。低層部は、キャンパス・モールとの一体性に配慮し、内部空間と外部空間の相互の賑わいを繋ぐとともに、周辺の自然環境に配慮し、ヒューマン・スケールで変化のある表情を生み出します。中層部では、表情豊かで、大学として威厳のある空間を演出します。高層部は、豊かな自然環境と調和するとともに、空を意識し、周辺からの見え方に配慮します。

 壁面の分節により、東西方向が連続することによる圧迫感の低減や単調さを緩和しています。窓、バルコニー等の開口部や庇などは、日照、風向等環境負荷に配慮するよう、その位置、大きさ、材質等を決定します。

 スカイラインは、建物の高さや幅の組み合わせによって創出されます。キャンパス周辺から施設群を見るとき、施設群と空との境界線であるスカイラインは、景観形成に重要な役割を果たします。特に、理学系地区においては、研究教育棟が新キャンパスを南(JR九大学研都市駅方向)から遠望する際の主要な景観要素となります。造成前の地形や尾根線を意識し、研究教育棟のスカイラインが周辺の山並みに調和するように配慮しています。

ウエストゾーンのスカイライン
センター地区および工学系地区との連続性

 キャンパスの一体性を確保するため隣接する地区との連続性には十分配慮する必要があります。東側のセンター地区と理学系地区は、九メートルの高低差があります。センター地区から理学系研究教育棟の東側に向かうキャンパス・モールの緩やかな階段と施設のエントランス、さらに西へと続くキャンパス・モールとのつながりに配慮する必要があります。動線がわかりやすく、しかも快適な移動を実現するため、実施に至るまで更に詳細な検討が必要です。また、幹線道路からグリーコリドー沿いにアプローチ空間が形成されます。工学系地区との間につくられるゲートの構成は、二つの地区の連続性を演出するうえでも重要な役割を果たすことになります。

環境との共生

 環境に対する負荷を可能な限り低減するためには、施設計画段階より検討を行う必要があり、その際には、建築物のライフサイクルを視野に入れることが欠かせません。外気と連続した空間の確保のために吹抜けを四ヵ所設け、良好な居住環境を実現します。吹抜けは、通風・採光を極力確保するための広さと形状を確保します。

 理学系地区では、キャンパス空間の骨格の維持と施設機能の充足を前提とした環境との共生を目指し、建築計画、構造計画、環境計画、運用、施設の維持管理に関する総合的な検討をもとに、経済性、機能性、効率性等の指標により最適な施設づくりを目指しています。


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