九州大学学術研究都市の実現に向けて
九州大学新キャンパス計画推進室 助教授 石田 浩二
助手 渡邉 浩平
((財)九州大学学術研究都市推進機構出向)

学術研究都市構想の概要

 九州大学学術研究都市構想は、一九九八(平成十)年五月に地元産学官の総意に基づいて設立された九州大学学術研究都市推進協議会が、三年にわたる各専門委員会やWGの検討を重ね、構想検討委員会により二〇〇一(平成十三)年六月に策定したものです。

 本構想は、国が実現を目指す「科学技術創造立国」、福岡・佐賀両県とアジアとの連携を強く指向した「九州北部学術研究都市(アジアス九州)構想」、九州大学の大学改革と伊都新キャンパスへの統合移転といった一連の動きを総合的・立体的にとらえ、「知の時代」にふさわしい「知の拠点」「知的クラスター」づくりを目指すものです。

 構想では、九州大学伊都キャンパスを中心に生活圏を形成する糸島半島地域を一次圏域として、福岡市から唐津市までの伊都キャンパスから半日の行動エリアを二次圏域と位置付けています(図1)。

 また、「共生社会の実現」「世界・アジアとの交流」「創造性の発揮」「新産業の展開」の四つの理念と二つの核「知の交流・創造活動を促進する地域科学技術システムの構築」、「知・住・悠の舞台となる快適空間の形成」を掲げ、学術研究都市づくりを進めています(図2、3)。

 これらの受け皿として、分散型地域核「ほたる」という数ha.十数haの小規模開発を周囲の環境保全に努めつつ誘導していきます。

図-1 構想エリア

図-2 学術研究都市構想の4つの理念

HTSとは、Human(人間)・Science(科学)・Technology(技術)の融合をコンセプトに、大学と産 業、市民、行政が一体となって新しい価値や可能性、革新的な発想を生み出す「知の戦略拠点」「産 学民公の協働空間」です。
図-3 「地球科学技術システム」

コアゾーンのまちづくり

 伊都キャンパスを中心としたコアゾーンの整備を進めます。伊都キャンパスセンターゾーンと一体的に、元岡・桑原地区を整備し、研究・開発、居住、生活サポート機能等、学術研究都市の中心的な役割を果たす地域との一体的なまちづくりを行います(図4、5)。

図-4 「知・住・悠の舞台となる快適空間の形成」

図-5 九州大学伊都キャンパスを中心としたコアゾーン

図-6 福岡市産学連携交流センター

産学連携交流センター(仮称)

 コアゾーンでは、福岡市が新たな学術研究都市づくりの先導的施設として産学連携交流センタ ー(仮称)の整備に着手し、平成二十年度の供用開始を目指しています。同センターは、九州 大学の研究機能を活かして、国内外の研究者や企業との交流を促進することにより、新しい産 業・企業の創出や地場企業の活性化を図るとともに、企業や研究機関の進出を促すなど、新し い学術研究都市づくりに資するための施設です。多くの先生方や企業・研究機関の方々に入居 いただき、世界最先端の研究開発拠点として発展していくことが期待されています(図6)。

壮大な実証実験の場

 九州大学は、伊都キャンパスを研究成果の実証実験の場として、水素キャンパスプロジェクト や、ICカードプロジェクトなどの舞台として研究が進められています。

 ICカードプロジェクトは、産学官連携による実証実験として、経済産業省の二〇〇六(平成十八)年度情報家電活用基盤整備事業に採択されました。当事業では、九州大学を中心として九 州大学学術研究都市機構と地元自治体、交通事業者などにより実証実験を進めています(図7) 。

図-7 ICカードプロジェクト

泊カツラギ地区のまちづくり

 前原市では、平成十七年度に九州大学伊都キャンパスに隣接した、「前原北部地域」の「泊カツラギ地区」、「大塚溜池南地区」を「大学隣接集落地区における新しい学民連携の確立と門前町の形成」と題し、都市再生プロジェクト事業を行いました。

 この中で、泊カツラギ地区は、地区計画決定がなされ、「ほたる」として伊都新キャンパスに隣接する特長を活かし、学生や研究者の生活機能が充実し、実験的なコミュニティ創造活動ができるような土地利用を図り、地域と大学が一体感を保ちつつ交流を促進し、活気あふれるまちづくりを行うとともに、ゆとりある周辺環境に調和したまちづくりが進められています(図8)。

(いしだ こうじ)
(わたなべ こうへい)

福岡県前原市泊カツラギ地区
図-87 泊カツラギ地区(前原市)


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