宇宙飛行士 若田さん 学生と意見交換会

 宇宙飛行士の若田光一さんは、九州大学大学院工学研究科を一九八九 年修了。一九九六年と二〇〇〇年の二回、日本人初のミッションスペシ ャリストとしてスペースシャトル「ディスカバリー」で宇宙飛行を行い、 宇宙ステーション組み立てなどに大きく貢献しました。その若田さんが 本年四月、大学院工学府航空宇宙工学専攻の社会人博士後期課程(指導 教官:磯貝紘二教授)に入学したことは、「九大広報」第二十八号のイン タビューでお伝えしました。

 通常は米国で宇宙飛行士としての活動を行っているため、研究指導は 電子メールの利用が中心ですが、五月二十二日(木)には、博士論文の 打ち合わせのため九州大学を訪れ、プレゼンテーションや機械系博士課 程の討論会参加などで、学生たちと交流しました。

 プレゼンテーションのテーマは「有人宇宙飛行システム―スペースシ ャトルとISS」。また、「大規模システムの事故―事故を無くすために どうしたらよいか」をテーマに行われた工学系博士課程学生による研究 発表と討論では、積極的に発言。若田先輩の動画を交えたプレゼンテー ションと説得力ある発言に、工学部本館十番教室に詰めかけた約百八十 人の学生たちは、瞳を輝かせて聞き入りました。

 この日の授業参加は、二月に起きたスペースシャトルの事故後、飛行 再開に向けた作業にも携わっている若田さんに、「事故から学ぶ」をテー マとする授業への参加を村上工学研究院長など関係者が呼びかけて実現 しました。若田さんは、シャトルの事故防止について「機体損傷の際は 宇宙飛行士が船外で修理する方法もある」と話し、後輩たちへは「夢を 持って実現に努力すればかならず叶う」とメッセージを贈っていました。

教室は満席になった 学生の発表に対して意見を述べる若田さん
開学記念式典開催される
挨拶する梶山総長

 五月九日(金)、創立五十周年記念講堂で平成十五年度開学記念式典が開催されまし た。式典では、九大フィルの演奏、梶山総長の挨拶に引き続き、本学に対し多大な貢献を された、益尾幸弘氏(書道部の指導・支援)、中村宏氏(ボート部への指導・支援)、亀岡 エリ子氏(財団法人樫山奨学財団理事長)、隈智恵子氏(隈利實国際科学技術振興会代 表)、古賀英也氏(三千体に及ぶ人骨資料の整理・活用への貢献。十二頁参照。)に感謝 状が贈呈され、本年三月三十一日付けで退官した四十二名の教官に名誉教授の称号記が授 与されました。その後、本学の学生・大学院生の独創的・挑戦的な優れた提案に対し研究 助成を実施する「C&Cプロジェクト」の表彰式があり、総長賞を受賞した農学研究院の 佐藤剛史さんが研究成果報告を行いました。式典の後には、理学研究院の藤木幸夫教授が 「生命・遺伝子・ポストゲノム時代」と題し、記念講演を行いました。

 また、当日は、研究室等の一般公開があり、参加者は普段見ることができない大型実験装 置や貴重標本など、本学の最先端の研究を体感していました。

感謝状が贈られた(左から)益尾幸弘氏、中村宏氏、
亀岡エリ子氏、隈智恵子氏、古賀英也氏。
名誉教授の称号記授与式
システム生命科学府棟 竣工披露

 大学院システム生命科学府は九州大学での新しい取組みとし て八部局の教官が担当し、情報科学、工学と生命科学を融合し た、これからの総合生命科学を担う五年一貫制の教育組織とし て、平成十五年四月に設置されました。

 システム生命科学府の管理・運営、大学院生のための講義及 びセミナーを行う場所として新しくシステム生命科学府棟が完 成し、五月十六日(金)に梶山総長、有川副学長、早田事務局 長外関係者を招いて竣工披露が行われました。学府棟は、二階 建四四二uで一階に四十二席の講義室が二室、二階に学府長室 の外、三十二席の講義室が一室と演習室一室があります。

 また、一階の講義室は仕切板を取りはずすことにより二室を 一室として使用することもでき、大きなセミナーの開催も可 能です。さらに、情報科学教育の充実をはかるために、講義室 の各机にはパソコンの端末を設置し、受講者全員がパソコンを 使って講義を受講することも可能です。将来、本格的な※バイ オ・インフォマテイクスの研修の場となることでしょう。

※バイオ・インフォマテイクス:生物学と 情報科学を結びつけた新しい分野の学問
日本学士院講演会開催される

 五月二十四日(土)、「日本学士院第三十八回公開講演会」が国際研究交流 プラザで開催されました。日本学士院は明治十二年一月に創立された伝統あ る学術機関であり、今回の講演会は本学との共催で、九州地区においては初 めて開催されたものです。

 当日は、入谷明京都大学名誉教授・近畿大学教授がクローン技術発展の歴 史的背景・将来展望・有効利用等について、星野英一東京大学名誉教授がク ローン技術を認めることの法的な是非について、講演を行いました。講演会 には、一般市民、学生など約百六十名が参加し、クローン技術をめぐる様々 な諸問題について熱心に聴き入っていました。

21世紀COEプログラム 拠点形成発表会を東京で開催
熱のこもった意見交換が行われたパネルディスカッション

 五月二十九日(木)、九州大学は、東京都千代田区大手 町の経団連ホールで、二十一世紀COEプログラム拠点形 成発表会「九州大学の挑戦:研究戦略と将来構想」を開催 しました。

 当日は、産業界、大学関係者、OBなど約三百名の参加 があり、文部科学省からも、間宮馨文部科学審議官、有本 建男大臣官房審議官(生涯学習政策局担当)、広瀬研吉大 臣官房審議官(科学技術・学術政策局担当)など、多数の 参加がありました。

 発表会では、最初に梶山総長が「九州大学の挑戦:研究 戦略と将来構想」と題した講演を行い、引き続き、 平成十四年度二十一世紀COEプログラム採 択拠点リーダーである今西裕一郎人文科学研 究院長、藤木幸夫理学研究院教授、新海征治 工学研究院教授及び前田三男システム情報科 学研究院長が、各拠点のプログラムの概要及 びこれまでの取組みについて発表しました。

 続いて「社会と大学のパートナーシップ」 と題してパネルディスカッションが催され、 コーディネーターの倉 地幸徳独立行政法人産業技術総合研究所年齢 軸生命工学研究センター長、パネラーの増田信行三菱重工 業株式会社会長、小山竜司文部科学省研究振興局研究環 境・産業連携課技術移転推進室長、新海征治工学研究院教 授、居石克夫医学研究院教授及び高田仁経済学研究院助教 授(技術移転推進室)から、産学連携等への取組みの現状 について意見発表が行われた後、社会とのパートナーシッ プという視点から、九州大学が現在の取組みをさらに発展 させて挑戦できることは何かということについて、場内参 加者も交えて、活発な意見交換が行われました。

梶山総長 今西人文科学研究院長 藤木理学研究院教授 新海工学研究院教授 前田システム情報科学研究院長
大森治豊 福岡医科大学初代学長 ご遺族が史料寄贈
貴賓室にみえた三村義雄氏(左)と、大森裕子氏。

 一九一一年(明治四十四年)、工科大学と医科大学とから成る九州帝国大学が福岡に創設されまし た。九州帝国大学医科大学の前身となったのは、一九〇三年(明治三十六年)に県立福岡病院を母体と して設置された京都帝国大学福岡医科大学で、その初代学長兼附属医院長に任じられたのが、県立福岡 病院長であった大森治豊(おおもり はるとよ)です。九州大学医学部は、京都帝国大学福岡医科大学 の設置から数えて、今年を創立百周年としています。

 六月五日(木)、大森治豊の孫である大森陽(あきら)氏の奥様である大森裕子氏と裕子氏の実弟であ る三村義雄氏が来学し、大森治豊関連史料を九州大学に寄贈しました。

 大森裕子氏は、「治豊の孫である夫が亡くなって蔵を整理していて出てきたもの。九州大学創設時の歴 史を語る史料が、何らかのインパクトになればとお持ちしました。」と語り、有川副学長・大学史料室 長が九州大学を代表して寄贈品を受け取りました。

 寄贈された史料の中には、明治十二年十月に公布された東京大学医学部第一 回卒業証書など貴重なものが多数あり、同席した森良一 名誉教授(元医学部長)、大学史料室の折田助教授など 関係者は、「保存状態のよい貴重な史料。これからじっ くり調べていろいろな場で生かしたい。」と感謝していました。

 大森、三村両氏はこの後関係者の案内で、市内崇福寺での墓参、病院地区キャンパスに立つ大森治豊銅像 の見学などを行いました。
(詳細は、本誌二十二ページのトピック「大森治豊と大森関係史料の寄贈について」 をお読みください。)

建築家 黒川紀章氏が新キャンパス専門委で説明
委員会で基本設計を詳細に説明する黒川紀章氏

 六月十三日(金)の新キャンパス計画専門委員会で、イースト・センターゾーンW G長の竹下輝和教授、建築家の黒川紀章氏、コアチーム長の坂井猛助教授が、センター 地区基本設計の検討結果について、梶山総長をはじめ、出席した委員、関係者に説明 しました。

 黒川氏は、センター地区の設計を担当し た黒川紀章・日本設計共同体を代表して出席したもの。「頂戴した様々なご意見を、定 められた条件下で、ベストな状態で反映するのが建築家の役割」「開かれた九州大学を 表現したかった」と前置きして、新キャンパスの顔となるセンター地区の基本設計を 詳細に説明しました。
(詳細は、本誌十六ページのクローズアップ「タウン・オン・キャンパスの形成にむけ て」をお読みください。)

三菱重工業と包括的連携を推進
協定書に調印後握手する、
村上工学研究院長(左)と
柘植技術本部長。

 九州大学の工学研究院、システム情報科学研究院、総合理工学研究院、応用力学研究所及び先導 物質化学研究所の三研究院二研究所と、三菱重工業株式会社技術本部との間で、包括的な連携推進 に関する協定が締結されることになりました。

 この包括連携の目的としては、九州大学の基礎研究成果と三菱重工業株式会社の技術経営力を統 合し、エネルギー、物流及び情報に係わる新規技術開発の産学連携の推進と、広い視野を有する高 度技術者の育成が謳われています。また、連携項目として、共同研究や受託研究の実施とこれに伴 う研究者交流、博士課程学生のインターンシップの実施、連携評価会議の設置、技術交流会の実施 が挙げられています。

 六月五日(木)には、七日(土)に京都で行われる協定調印式を前に、工学部本館で村上敬宜工 学研究院長、前田三男システム情報科学研究院長、深野徹工学研究院教授が記者会見を行いました。 この中で村上研究院長は「国際競争を、コスト、スピード、技術面で有利に進めたい三菱重工と、 外部資金獲得と社会貢献を進め、実力を蓄えたい九州大学の思いが一致して今回の合意に至った。 技術は単独ではあり得ない。九州大学としてチームを組んで効率的に 研究課題に取り組み、確実に成果を挙げたい。」と語りました。

 九州大学の包括連携は、今年三月の西部ガス、大日本インキ化学工業に次いで 三件目で、今後さらに増加するものと見られています。

6月7日京都での調印式。(左から)九州大学の、今石宣之先導物質化学研究所長、小寺山亘応用力学研究所長、
村上敬宜工学研究院長、三菱重工業株式会社の、柘植綾夫技術本部長(常務取締役)、徳田君代技術本部長崎研究所長。
林野庁長官 演習林で特別講演
講演する加藤林野庁長官

 農学部附属演習林では、六月十七日(火)、加藤鐵夫林野庁長官を講師に招き「日本の 森林整備の方向と課題」についての特別講演会を開催し、約百三十名の教職員及び学 生が参加しました。

 初めに、小川演習林長から、大学演習林をとりまく情勢についての挨拶がありまし た。続いて、加藤長官から平成十三年の森林・林業基本法の制定に伴う森林政策の現 状と施策、林野庁の地球温暖化防止森林吸収源十カ年対策の策定(生産林から環境林 への転換、バイオマス・ニッポン総合戦略の推進、地域との共生等)、国際的な林業事 情、木材価格の現状等について、林業政策の責任者として具体的に、わかりやすい講 演があり、これに対し、学生から絶滅危惧種の保護の考え、シカの被害と保護の考え 等についての質疑がありました。

 講演会終了後、加藤長官は福岡演習林を視察。夕方から長官を囲んで催された懇親 会は、和やかな中にも盛会でした。

(財)九州大学後援会 評議員会、理事会開催
司会の大野茂理事長

 財団法人九州大学後援会は、九州大学の発展と学術の振興に貢献するため、教育研究活動、社会 連携、国際交流の推進、教育研究施設等の整備拡充、学生支援等の推進を目的として、平成13年 11月に設立されました。九州大学卒業生及び九州大学教職員からの寄附を基金として、地元各界 を中心に組織する公益法人です。

 6月17日(火)、その評議員会と理事会が、創立50周年記念講堂大会議室で開催され、大野茂 理事長(九州電力代表取締役会長)の司会で、役員の選任、平成15年度予算などを議決しました。

 今後、九州大学支援事業を充実させるには、財団の財政基盤強化が望まれるため、財団では賛助 会員を募集しています。ご協力をお願いします。

(お問合せ:092-642-4493)

先輩に学ぶ

 全学教育科目「社会と学問」は、一年生を対象に六本松キャ ンパスで開講されています。講師は、変革の時代を担って各界 で活躍している先輩たち。学生時代や学問が自分をそして社会 をどのように支えているかについての「講演」を聴いて、質問 し、レポートを書き、クラス交流システム(BBS)で討論す るというユニークなものです。

 六月二十五日(水)の講師は、法学部卒業後、労働省女性局長 を経て現在内閣府情報公開審査会委員である藤井龍子(ふじい りゅうこ)さん。特一番教室を埋めた約三百人の後輩たちに、 「行政改革の流れの中で」をテーマに、前半はマンドリン後半 は司法試験勉強に打ち込んだ九州大学生時代、育児休業法の制 定を担当した労働省婦人福祉課長時代、阪神淡路大震災で現地 の救援対策に奔走した大阪府生活文化部長時代の体験などに触 れながら、行政という仕事、行政改革とは何であるかについ て、具体的に熱く語りました。

 そして、後輩たちへのメッセージとして「今は一人一人が国 のために何ができるかを考えるべきとき。それができるような 人になるためにも、大学でしっかり勉強してください」と結び ました。

 初年次学生にとって、「社会と学問」での講師との出会いは、 社会や日本という国について想いをめぐらすインパクトある契 機となったようです。

平成15年度全学教育科目「社会と学問」講義日程

第1回4月16日(水)オリエンテーションオーガナイザー担当

第2回4月23日(水)講 演村山由香里(株)ファウプ代表取締役社長

第3回4月30日(水)講 演丸山 康晴JR九州(株)常務取締役

第4回5月14日(水)講 演松村 準平(株)福岡放送代表取締役社長

第5回5月21日(水)講 演宮田 清藏東京農工大学 学長

第6回5月28日(水)講 演海老井悦子福岡県教育委員会理事

第7回6月4日(水)講 演重渕 雅敏東陶機器(株)代表取締役社長

第8回6月11日(水)講 演小路 弘行旭化成(株)医療医薬カンパニー創薬第一研究所 所長

第9回6月18日(水)討論会オーガナイザー担当

第10回6月25日(水)講 演藤井 龍子内閣府情報公開審査会委員

第11回7月2日(水)講 演梶山 千里九州大学総長

第12回7月9日(水)講 演亀井 俊郎明治乳業(株)軽井沢工場長

第13回7月16日(水)講 演下村恵美子全国宅老所よりあい 代表

ようこそ九州大学へ
Welcome to Kyushu University

ガジャマダ大学長
 6月6日(金)、ガジャマダ大学(インドネシア)のソフィアン・ エフェンディ学長が梶山総長を表敬訪問しました。
 ソフィアン学長は、モニタリングミッションで本学を訪れたもので、 本学との学術交流について、情報交換・意見交換が行われました。

●サークル紹介
美術部

 皆さんこんにちは、九大美術部は九州大学のなかでも伝統のある部活のひとつです。現 在、部員約40名で活動しています。美術部の活動内容は主に展示会を中心として作品を作 っていくことです。展示会に来て頂ければ分かりますが油彩や水彩、パステルなどの絵画 をはじめ、コラージュ、オブジェなど、いろんなジャンルの作品を作っています。過去に は裁縫で作品を作った人までいたぐらいです。作品の内容もほのぼのするものや幻想的なも の、シュールなものなど部員たちの個性が色濃く出ているものばかりです。自分なりの表 現を追求する人や好きなものをひたすら描く人、みんな様々です。特別な指導は行われて いませんが、部員どうしで作品の批評をしたり、クロッキー会やデッサン会を行ったりし て芸術に関する知識や技術を磨いています。九大の学祭では4.5m×7.5mという非常に大き な共同制作作品を作ったり、展示会ごとに立て看板を作ったりとみんなで力を合わせた活 動もしています。また、部内にとどまらず、他大学との合同展示会も行っています。

 これらの活動以外にも仮装パーティをしたり、美術館や動物園に行ったり、旅行を企画 したりと絵を描くだけにとどまらず楽しんでいます。とにかく、みんなユニークな奴らです。

 最後に、九大美術部の作品が見たい!と興味をもたれた方は、ぜひ次の展示会の「葉月 展」にいらしてください。「葉月展」は8月4日から1週間、場所は天神3丁目の「アートフレ ンズ」というところであります。入場無料ですのでお気軽に立ち寄って下さい、部員一同 心よりお待ちしています。またホームページでは、いくつかの作品や美術部の活動予定が ご覧になれます。

部長 和田晃史(わだあきふみ)
工学部建築学科3年

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