九州大学発ベンチャーの充実を目指して

 「大学発ベンチャー一〇〇〇社構想」に代表されるように、国内では数多くの大学発ベンチャー企業が設立されるようになってきました。九州大学においても、これまでに様々な大学のリソースを活用したベンチャー企業が設立されています。九州大学知的財産本部では、このような九州大学発ベンチャーの立ち上げのみならず、設立後のサポートをも含めた支援を行っています。


九州大学発ベンチャー
 これまでに九州大学からは二十七社のベンチャー企業が設立されています(平成十六年七月一日現在)。たとえば、納豆樹脂をベースにした保湿性の高いスキンケア商品の開発等を行う有限会社ハラテックは農学研究院の原助教授の研究成果を活かしたものですし、株式会社インテリジェントセンサーテクノロジーはシステム情報工学研究院の都甲教授が技術顧問となって味覚センサーの開発・製造・販売等を行っています。もちろん、学生や卒業生による起業もあり、株式会社Fusicなどは学生時代の研究成果を基礎として若き経営者がビジネスを行っている代表例といえるでしょう。いずれも九州大学の教員や学生が起業に関わり、ユニークな製品開発やサービスを提供しています。

知的財産本部による支援
「九州大学起業家ひろば」の様子
 現在、大学発ベンチャーの問題点の一つとして「優れた研究成果があればいいベンチャーができる」といった、技術オリエンテッド的な考え方が挙げられます。確かに技術も大事なのですが、ビジネス戦略をより重視することが今後求められています。
 そこで知的財産本部では、起業支援部門を中心として、経営基幹人材確保や事業パートナー(販路、資金、生産等)とのマッチングなどを含め、大学発ベンチャーを志す方々の事業計画策定を支援しています。また、学内機関であるベンチャー・ビジネス・ラボラトリーをはじめとする学内外のインキュベーターへの入居サポートも行っています。このように、知的財産本部は、市場において強い企業を作るべく起業家の皆さんと二人三脚で取り組んでいます。


第一回「九州大学起業家ひろば」が開催されました
 大学において生み出される研究成果や知識、アイデアの活用や事業化について学内で多面的に検討しあえる場の創造を目的として、「九州大学起業家ひろば」が開催されています。学内教員等有志からなる世話人会が主催し、知的財産本部起業支援部門およびベンチャー・ビジネス・ラボラトリーが連携して全面的にバックアップする形をとっています。
 去る六月十八日(金)に開催された第一回では、自らも九州大学発ベンチャー設立に関与されたシステム情報科学研究院・都甲教授の記念講演とともに、熱気あふれる議論が学内外の参加者の間で行われました。
 今後も「九州大学起業家ひろば」の基本であるひととひとの相互の交流、触発を大切にし、学学連携、産学連携、官学連携など多様なパートナーシップが、学内外に向けひろく展開されることを期待しております。

(知的財産本部起業支援部門サブリーダー 坂本 剛)

産官学で「福岡水素エネルギー戦略会議」を創設

 六月一日(火)、福岡県庁で、福岡県の麻生渡知事、九州大学の有川節夫副学長、村上敬宜工学研究院教授の三人により、「福岡水素エネルギー戦略会議」創設についての記者会見が行われました。

麻生福岡県知事の発言要旨
 これからのエネルギーとして注目される水素エネルギーの普及を進めるために、福岡県は、産官学の協力により大きな役割を担いたいと考えている。そのために、この分野では日本で唯一文部科学省の二十一世紀COEプログラムに採択されている九州大学と、約百の多くの企業等に加わっていただいて、「福岡水素エネルギー戦略会議」を七月にも立ち上げ、正確な情報収集、技術開発、企業や研究の集積に取りかかりたい。

有川九州大学副学長の発言要旨
会見に臨む麻生知事(右)、有川副学長(中央)、村上教授(左)
 九州大学はこれまで水素利用機械システムに関する研究開発を戦略的に展開してきた。そして、平成十五年度二十一世紀COEプログラムへの採択、平成十六年四月の「水素利用技術研究センター」の発足により、新キャンパス移転を視野に入れた研究開発の基盤整備に着手している。来年秋に一部開校する新キャンパスでは、水素供給源と水素燃料電池をネットワークで結んで効率的な運用を図る、水素利用社会のミニモデル、パイロットプロジェクトの構築という「水素キャンパス構想」について学内の総意形成を進めている。
 水素エネルギー社会の構築という共通の目標に向けて産官学が一体となって取り組む「福岡水素エネルギー戦略会議」の中では、これまでの研究開発の実績を踏まえてプロジェクト推進に努めたい。

村上工学研究院教授の発言要旨
 水素利用については安全面や効率など様々な問題があり、そのための新技術開発で世界的に熾烈な競争が行われている。ところが日本では法規制の壁があり、外国企業にテストを委託するなどの状況がでてきている。このままでは、研究開発のスピードも遅れ、日本独自の技術が外国に漏れるなど、外国との競争に打ち勝つことは難しい。幸い麻生知事は規制緩和を含めて技術開発を推進しようとの意向であり、本会議参加企業による共通課題の抽出などと、九州大学のポテンシャルを合わせ、問題を解決することができる仕組みを作りたい。それはこの戦略会議のように、産官学が連携しないとできないことだ。
※「水素キャンパス構想」の詳細については、十八頁をご参照ください。

三井造船と組織対応型(包括的)連携

元山三井造船社長(左)と梶山九大総長(右)
 九州大学と三井造船(株)は、平成十六年六月十四日(月)付けで組織対応型(包括的)連携契約を締結しました。九州大学にとって七件目の連携契約であり、法人化後としては、初めての組織ベースでの連携研究となります。
 本契約締結は、中期計画で新規事業の創生や新技術取得を重点に挙げる三井造船が九州大学とNDA(秘密保持契約)を締結した後に「水素エネルギーの利用(CO2削減)技術の開発」のニーズを開示したことにより始まったものです。知的財産本部リエゾン部門は、このニーズを受け止め、学内の教員と三井造船側の研究者との間でテーマ検討会を開催し、両者の要望のコーディネートを図り連携に至りました。
 この連携では、連携協議会の事務局であるリエゾン部門(九州大学)と技術本部(三井造船)とが連絡を密に取り、さらに「船舶関連の要素技術の開発」、「バイオ利用技術の開発」について連携研究を推進する方針です。本音による技術交流を活発に行い、企業からの研究開発提案だけでなく、大学からも提案を図る双方向の連携を実現していきます。

(知的財産本部 山内 恒)
調印の模様


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