特集/新1年生座談会

発見、体験、九州大学!

中野 恭兵(なかの・きょうへい) 法学部1年 【田島寮生】 香川県丸亀高等学校出身
益田 沙絵(ますだ・さえ) 歯学部1年 福岡県西南学院高等学校出身
二宮 和基(にのみや・かずき) 工学部1年 大分県大分上野丘高等学校出身
近藤 由佳(こんどう・ゆか) 21世紀プログラム1年 長崎県活水高等学校出身

司会進行:渡辺 哲司 高等教育開発推進センター講師

(左から)二宮さん、益田さん、近藤さん、中野さん


この春、晴れて九州大学に入学した一年生のみなさん。入学から数カ月が経ち、新たな希望や目標が芽生え、あるいは戸惑いなども感じている時期だと思います。そこで今回は、四人の一年生のみなさんに、九州大学を目指したきっかけや学ぶことに対する思い、将来の夢などを語ってもらいました。

渡辺:まず、九州大学を志望した理由やきっかけを聞かせてもらえますか。

二宮:僕は、コンピュータのプログラムやゲームに興味があったので、工学部の電気情報工学科を志望して受験したのですが、それ以前に、九州大学は九州で一番レベルの高い大学なので、チャレンジしてみようという気持ちが、まず最初にありました。

益田:将来の夢が、医療関係の仕事に就くことだったのですが、私にとっては、専門的な内容はもちろん、九州大学は全学教育(*1)で幅広い教養をしっかり学べるということも大きな魅力でした。私は理系なのですが、特に今、文系の講義が楽しくて毎日が充実しています。専門以外にも、いろいろ学べる機会に恵まれているということは、総合大学に進学するメリットだと思います。

近藤:私は、高校三年生のときに、九州大学の二十一世紀プログラム(*2)を見つけたことがきっかけです。二十一世紀プログラムは、学部を決めずに入学し、様々な学部の授業を自分で選択して学べるという、九州大学独自の教育プログラムです。それが、自分の性格に合っているなと思い、志望しました。

中野:僕の場合は、大学進学に際して、まず地元を離れ、あえて知り合いも少ない九州からスタートを切ろうということが前提にありました。そこで、九州大学を受験しようということは決まったのですが、志望学部は、法学部か経済学部かで迷いました。最終的には、受験期間中に読んだ、問題を抱える青少年と真摯に向き合う家庭裁判所の裁判官を主人公にした漫画がきっかけで、自分も裁判官を目指そうと思い、法学部を志望しました。

中野さん 二宮さん

渡辺:みなさんは、入学して二ヶ月余りが経ちますが、実際に大学の講義を受けてみての感想はどうでしょう。

近藤:二十一世紀プログラムでは、土曜日に課題提示科目(*3)という集中講義があって、学外から招聘された様々な分野の有名な先生方からの講義を受けています。私もよく知っている先生方なので、とにかく驚きと嬉しい気持ちでいっぱいです。講義の後、レポートを作成して提出するのですが、あの先生に読んでもらえるのかと思うと、とても緊張しますし、やりがいを感じています。

中野:僕は、政治学入門など、これまでほとんど接することがなかった内容の講義を受けて、興味深いし、新しく発見することがたくさんあります。それから箱崎キャンパスで毎週行なわれるコアセミナー(*4)では、十数人で与えられたテーマについて討議するのですが、一般の講義と違って、自分の意見を述べたり、発言する機会が多いので面白いですね。毎週レポート作成に追われて大変ですが、大学で学んでいるという実感があります。

二宮:僕も、コアセミナーが印象的です。三人一組で、工学部の研究室を一つずつ回り、プログラミングや電気回路などの研究の最前線を知ることができて、とても充実しています。基本的には、先生から話を聞くのが中心なのですが、ときにはパソコンを使って電力を計算で求めたり、プログラミングを体験できて楽しく学べます。

益田:私は、毎週歯学部の病院の各科を一つずつ回って臨床の現場に触れるアーリーエクスポージャー(*5)が、大学で専門的に学んでいるという実感があって楽しいですね。そのときは、私たちも白衣を着て回るので、馴れなくて恥ずかしいと感じるところもあるのですが、患者さんとの触れ合いもあり、緊張感があって、ドキドキしながら取り組んでいます。

渡辺:ドキドキというのは、いいですね。ぜひ、その気持ちを忘れずにいてください。ところで、学んでいる中で戸惑ったことや、分からないことはないですか。

二宮:僕の場合は、専門の講義についていけない部分が出てきて、苦労しています。分からないことがあれば友達や先輩に教わっているのですが、難度が高校の頃よりずいぶん高くて、戸惑っているというのが本音です。

渡辺:特に、理系の科目を中心に、高校で学んでいない内容もあると思います。大学には、ティーチング・アシスタント(TA)(*6)など、みなさんをサポートする体制もあるのですが、TAに質問したことはないですか。

益田:TAの人に、質問しても良いのですか?

渡辺:もちろんです。TAは、大学院生で、みなさんの学習をサポートすることが重要な役割の一つです。みなさんにとっては、先生より話しやすく、気持ちも通じやすいでしょうから、もっと活用してみてください。

中野:僕は、百人を超える大教室での講義が、学生の数が多過ぎて講義の内容が希薄になるのでは、という印象があります。高校の頃のクラス授業との差があり過ぎるので、戸惑いを感じているのかもしれませんが、今はまだやりにくいですね。

渡辺:講義には教える側と教わる側の相互作用みたいなものがあります。人数が多くても、みなさんの学ぶ姿勢が先生に伝われば、講義の内容が希薄になるようなことはないと思いますよ。さて、みなさんの将来の夢、それを実現するために九州大学で何をやろうと思っているかなどを、聞かせてください。

近藤:私は、高校のとき放送部に入部していて、マスコミとかジャーナリズムに興味がありました。そこで将来は、ニュースキャスターやジャーナリストを目指そうと思っているのですが、そのためには幅広い視野と教養を身につけなければなりません。二十一世紀プログラムは、ひとつの方向に偏らず、文系から理系までいろいろな内容の講義を選択できるので、私の将来の夢を叶えるという意味でも、最適の環境です。これからも、もっと幅広く、そしてもっと積極的に学んでいきたいと思います。

渡辺:卒業生の中にも、マスコミや報道関係に進んだ人がたくさんいます。いずれ、先輩達の話も聞けるといいですね。

二宮:僕は、将来の目標を具体的にイメージできないまま入学したので、まだ手探りの状態です。ただ、以前から興味があった、ゲームのクリエイターやコンピュータ・プログラマーは、今も念頭に置いています。学科では、専門的なことを学び始めたばかりなので、こちらも手探りの状態ですが、興味深い内容が多いので、積極的に学んでいきたいと思っています。

益田:最初にお話したように、私は、大学進学時から医療関係の仕事を目指しています。その中で歯学部を選んだきっかけは、大学受験の前に通っていた歯科医院で、親知らずを抜いてもらったことでした。親知らずが、突然痛んで受験の妨げにならないようにという、先生の配慮だったのです。患者さんの日常的な生活まで考えて治療を実践するという姿勢に、感銘を受けました。私も、治療を進めていく上で、患者さんとのコミュニケーションを大切にできる、思いやりのある歯科医師になりたいと思っています。

益田さん 近藤さん

渡辺:大学では、研究者養成も大きな柱の一つになっています。研究者の道は、考えませんでしたか。

益田:実は、入学前は、基礎の研究もやりたいと思っていました。でも、アーリーエクスポージャーで、医療の現場をいろいろ回っているうちに、人と接するのもいいなと思ったのです。ただ、入学時に、歯学部入学者全員が集まった席で先生が話された、「みなさんは普通の歯科医師になるのではない。歯科医師のリーダーになるのです」という言葉に力づけられ、そんな歯科医師になれるよう頑張ろうという気持ちになりました。

中野:僕も、受験時に裁判官という将来像がまずあって法学部に進んだので、これから頑張っていかなければならないと思っています。LPセミナー(*7)という特殊講義で、現役裁判官の方から話を聞く機会があり、裁判官の仕事は、ただ機械的に法を事例に当てはめて判決を決めるのではないということ、そして、失敗から学ぶこともあるという話が印象に残りました。裁判にはそれぞれ様々な事情が含まれていて、人は誰でも失敗することもあります。僕は、自分が失敗した経験から、失敗した人の気持ちや痛みをわかってあげられる、そんな裁判官になれればいいなと思っています。

渡辺:最後に、これから九州大学を目指す高校生に、メッセージをお願いします。

近藤:私は、高校生の頃、いろいろなことに興味を持って、様々な活動をしました。先生からは、そんな時間があるのなら勉強に当てなさいと言われたりもしましたが、活動を通してさらに興味が広がり、それが今の二十一世紀プログラムへの進学にも繋がっています。基本的な勉強も大切ですが、好きなことや興味のあることに取り組んだり、たくさんの人と出会ったりすることも大切です。それから、将来、自分がどのようになりたいのかということを考え、自分と向き合う時間も持ってほしいと思います。

二宮:僕は、一言、最後まであきらめずに頑張れ!ということを伝えたいですね。僕自身、九州大学に合格すれば、楽しい学生生活が待っている、自由な時間が持てると思って頑張りました。

益田:私も、最後まであきらめないことが、大切だと思います。私は、後期入試で合格したので追い込まれていました。だから、合格発表の掲示板を見たときは、すごく嬉しかったし、最後まであきらめずに頑張ってよかったと思いました。今はその経験から、くじけそうになったときも、前向きに自分をコントロールできるようになりました。

中野:益田さんの話にも通じるかもしれませんが、僕は、自律心.も養っておいた方がいいと思います。大変な受験勉強に取り組む上でも、また、かなり自由度が増す大学で学ぶ上でも、自分をきちんと律するということは大切だと思えるからです。

渡辺:高校までは、ある意味で先生が手取り足取り教えてくれます。言い換えれば、言われた通りに勉強していればよいのですが、大学では、自分がやりたい勉強を自分なりの方法を見つけて、自ら学び取っていかなければなりません。今日参加してくれた一年生のみなさんも、このことを理解した上で、これからも頑張ってください。本日はどうもありがとうございました。

※このインタビューは、平成十八年六月七日、六本松キャンパス本館二階第三会議室で行われました。

―インタビューを終えて―
学生どうしの質問が二十一世紀プログラムに集中しました。「学部を決めない?何それ」といったところでしょうが、時間があったら逆に「十八歳でホントに決められる?きめていいの?」と尋ねてみたかったです。(司会者談)



二十一世紀プログラムとは
学生は特定の学部に所属せず、原則として九州大学で開講されている全ての学部・学科の授業を受けることが出来ます。学部・学科の枠組みを超えた幅広い視野を持ち、問題・課題の発見とその解決能力に優れた、総合的なリーダーシップを発揮する人材の養成を目指して、二〇〇一年に開設された新しい教育プログラムです。

*1: 教養教育科目(共通コア科目、コアセミナー、文系コア科目、理系コア科目、言語文化科目、健康・スポーツ科学科目等)、文系基礎科目、理系基礎科目及び情報処理科目からなる。
*2: 入学から卒業まで、学部を決めずに幅広く学ぶ、九州大学独自の全く新しい学部横断型の教育プログラム。二〇〇一年度からスタートしており、「専門性の高いゼネラリスト」の養成を目的としている。
*3: 前期・後期で2コース、それぞれ一つのテーマを設定し、多くのゲスト講師が交代で、最先端の知識や取り組みなどを講義する。
*4: 平成十八年度、全学教育リニューアルの目玉。すべての新入生が履修する少人数科目。大学生らしい学びへの移行促進がねらい。
*5: 一年次の早い段階から歯学生としての自覚を確立するために、臨床の現場を見学実習する、歯科医学総論での独自のカリキュラム。
*6: 学部の講義・演習・実験等において、教員による学部生の指導・教育のサポートを行なう。TAは、各学部を卒業し、大学院へ進んだ大学院生が務める。
*7: 「ロウ・アンド・プラクティス・セミナー」の略。現役の法律実務家を講師として招くほか、締め括りとして「模擬裁判」も行なう。法学の入門の意義も兼ねた、他大学にはない九州大学独自の試み。

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