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常に最前線を走り続け、今、そして未来の科学に貢献したい。常に最前線を走り続け、今、そして未来の科学に貢献したい。 理学研究院 教授
 森田 浩介

理学研究院 教授

森田 浩介

新元素113番を発見、日本発の新元素認定と命名というアジア初の偉業を達成。周期表に「ニホニウム(nihonium)」の名を刻み込み、世界から注目を集める元素研究のフロントランナー。同僚に“親方”と慕われ、学生たちからの人生相談が後を絶たない人情家でもある。

新元素113番を発見、日本発の新元素認定と命名というアジア初の偉業を達成。周期表に「ニホニウム(nihonium)」の名を刻み込み、世界から注目を集める元素研究のフロントランナー。同僚に"親方"と慕われ、学生たちからの人生相談が後を絶たない人情家でもある。

プロフィール

福岡県北九州市出身。小学校の頃、雑誌の付録の実験キットに夢中になり、中学校では化学部に所属。高校時代に物理の基本法則の面白さに目覚め、九州大学理学部物理学科入学。大学時代は研究と同じく、柔道に打ち込みねばり強さを培った。1984年、同校理学研究科博士後期課程を満期退学後、理化学研究所流動研究員、サイクロトロン研究室研究員補に。1991年、研究員、1993年、先任研究員、2006年、森田超重元素研究室准主任研究員を経て、2013年から九州大学大学院理学研究院教授、理化学研究所超重元素研究グループ・グループディレクター(兼務・非常勤)。2004年、2005年、2012年と3回、新元素113番元素の合成に成功し、国際純正・応用科学連合(IUPAC)にて正式認定、2015年命名権を獲得。2016年日本学士院賞受賞など受賞歴も多く、新元素発見においては、13年間113の数字にかけたゲン担ぎを徹底して行うなど、科学者としては意外な一面も持つ。

何を研究してるの?

1984年に物理の世界へ。最前線の研究に携わっているという誇りを持ち、日々邁進してきた。

元素の周期表。(2012年9月時点)113番めにニホニウム(Nh)が追加された。

加速器と分離器を使って新元素を探す。これらの装置を森田先生は自作するというから驚きだ。

1984年に物理の世界へ。最前線の研究に携わっているという誇りを持ち、日々邁進してきた。

新たな超重元素の探索を研究テーマとしています。物質の根源を示す概念が元素であり、その実体が原子です。原子は物事を構成する最小単位ですが、さまざまな原子が化学結合することによって、世の中に存在するすべての物質が成り立っているのです。

元素の周期表。(2012年9月時点)113番めにニホニウム(Nh)が追加された。

原子は中心にある原子核とその周囲を取り囲む電子によって構成されています。原子核はプラスに帯電する陽子と中性子から成り立ち、陽子は周りを囲むマイナスに帯電する電子と引き合っていますが、陽子は電子の1840倍の重さを持っています。それぞれの元素が持つ原子番号は陽子の数であり、この数が多いほど元素の質量は重くなります。自然界に安定して存在する元素は、原子番号92番のウランまで。それ以降の原子番号の元素は、元素同士を合成させて作っていくことになります。その合成に成功することが新元素の発見と呼ばれます。

加速器と分離器を使って新元素を探す。これらの装置を森田先生は自作するというから驚きだ。

原子番号104番以降の元素が超重元素になりますが、元素は重くなればなるほど合成が難しくなります。原子核の中に陽子がぎゅうぎゅうに詰まっていると、プラスに帯電する陽子同士の電気的反発が大きく、原子核が不安定になり壊れやすくなり、寿命も短くなります。寿命がある程度安定した2つの原子核を衝突させ、核融合を起こすことで新元素を合成させるのですが、原子核の大きさが1兆分の1㎝と非常に小さいこと、たとえ衝突しても融合する確率が100兆分の1と大変低いことが、超重元素の合成、つまり発見の一番の難しさといえますね。

113番元素は、原子番号30番の亜鉛を加速器でビーム加速させ、標的の原子番号83のビスマスに衝突させることで合成しました。9年間で約4兆回衝突させた結果、3回の合成に成功し、新元素と認定されたのです。現在は原子番号118番まで発見されており、現在、私たちのチームは119番、120番の発見に向けて実験を続けています。世界各国が新しい超重元素の発見を競っているので、毎日24時間365日気が抜けません。理論上、172番まで存在が指摘されていますが、現実のところ130番ぐらいまでが限界と言われています。同時に新しい加速器や分離器の開発も必要になるので、常にあらゆる側面で進化していかなければならないのです。172番以降になると「安定の島」といって、人類未到のゾーンが現れるということもわかっています。これは特別の数の陽子を持つと、元素の寿命が急激に伸びて300年から500年と言われています。113番元素の寿命は1000分の2秒ですよ。到達までの道のりは長いですが、もちろんその可能性も追求していきます。

研究科目の「魅力」はココ!研究科目の「魅力」はココ!

世界で初めて発見した時のワクワク感がたまらない世界で初めて発見した時のワクワク感がたまらない

基礎研究における発見は、日常生活に直接影響を与えることはほとんどありません。基礎研究を深めて行くことは、今すぐ、また近い将来役に立つというものではなく、遠く未来に繋がるもの。自分が研究して見つけた新元素が何十年、何百年先に人類に恩恵をもたらすかもしれません。例えば、今は当たり前のように病院で使われているMRIやCTスキャンなどのマシンも昔、先人たちが新元素を発見しなければ存在し得ぬものです。基礎研究の過程そのものが、科学技術の開発と社会の発展に繋がっていくのです。

新元素の発見には、最先端の加速器と分離器が必要です。私は自分の手で作り上げた装置で、世の中の誰も見たことのない新元素を発見したい!と機械工学の分野をイチから勉強し大型装置を設計しました。装置内に世界で初めての現象を発見した時のドキドキ、ワクワク感は猛烈なもの。そして苦労の末見つけた新元素が、世界共通で昔から引き継いできたレジェンドともいえる周期表に載り、未来永劫受け継がれていく。科学の基礎は地球で唯一の知的生命である人間が築いてきたもので、周期表は人類の財産そのものです。その表の一席を日本人の手で埋める喜び、誇りは計り知れません。

DAILY SCHEDULEDAILY SCHEDULE


OFFの1コマ

料理好きの先生。「レシピを見て作るだけですよ」と謙遜気味だが、毎日の晩酌のつまみにはワイン煮込みをつくるなどハイレベル!休日には自宅に学生たちを招き、お手製のちらし寿司でおもてなしすることも。学生たちから「次はいつ?」と催促の言葉も多いとか。週末も研究室に通う白根先生。平日とは仕事のやり方を変えて頭を整理し、気分のリフレッシュ&リラックスを心がけているとのこと。愛車のレクサスでドライブ&ショッピングも気分転換の一つ。高校までピアノを習っていたこともあり、家や車内ではモーツァルトのピアノ協奏曲シリーズ、バッハのブランデンブルグ協奏曲などを聴きながら過ごしているそう。

先生の必須アイテムはコレ!

理科年表

毎年更新される理科年表は、常に手元になくてはならないアイテム。物理定数など、計算に必要な時に使う。

辞書

辞書についてはアナログ派。論文執筆に必要な英語辞書は『(株)研究社』から出ている「英英辞典」(英語の単語を英語で定義・説明)がお気に入りでオススメとのこと。

語学力・コミュニケーション力

「研究者は一人では研究できないから、チームワークが大切」と語る森田先生。また世界を股にかける研究者として、語学力は必須。加えて「好奇心はもちろん、自然や人に対し、謙虚であることも必須アイテムです」。

学生へのメッセージ

ドキドキ、ワクワクをつきつめる、そして自分を信じて。

何か一つのことに興味を持てることは才能だと思います。自分が好きなこと、面白いと思うことはとことん追求してほしいですね。そしてわからないことはどこまでも考えること。
私が研究を始めた頃はもっと早く新元素が発見できるかと思っていましたが、かなりの時間を要しました。しかしくじけることはありませんでした。研究とは先が見えないものですが、段階ごとで目標を設定し、それを確実にクリアしていくことが大事です。
私には世界一の装置で新元素を発見するという最終目標を持っていたので、その為に着実に一歩一歩ステップを踏んでいきました。そして成功体験を積んでいくと、ドキドキとワクワク感が次第に大きくなっていきます。小さな目標達成を積み重ねている時でも、世界で一番前を走っている感覚になるんですよ。その感覚がモチベーションの維持に繋がりました。学生の皆さんには、ぜひこの感覚を味わってほしいですね。自分がやっていることが正しい、自分がやっていることを信じることも大切です。そうすれば、待つこともできますから。待っていれば、必ず来ますから。

取材日(2017.2)

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