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ハエの架橋酵素が脂質修飾とエクソソームを介して分泌されることが判明 -哺乳類におけるタンパク質の分泌機構の研究分野躍進に期待-

2017.05.17
研究成果Life & HealthPhysics & Chemistry

 エクソソーム(exosome)は血液やリンパ液などに含まれる、直径が20nmから100nm程度のナノ小胞です。主に細胞同士のコミュニケーションやがん細胞の浸潤・転移などに関わっており、重要な研究課題です。九州大学高等研究院の柴田俊生助教、理学研究院の川畑俊一郎主幹教授らの研究グループは、これまでにキイロショウジョウバエ(ハエ)のタンパク質架橋(糊付け)酵素であるトランスグルタミナーゼ(TG)の機能研究を進めてきました。
今回、同グループはハエTGの一つであるTG-Aのアミノ末端側に見出された新たな分泌シグナルが脂質修飾を受けて、エクソソームとして分泌されることを明らかにしました。脂質修飾によるタンパク質のエクソソームを介した分泌はこれまでに知られていませんでした。同グループが行ったショウジョウバエを用いた実験においては、エクソソームは細菌や他の細胞に取り込まれ、殺菌や生体の恒常性維持に関わっていることが分かりました。これにより今後はハエの分野に限らず、哺乳類を用いた研究分野全般においてもタンパク質の分泌機構の研究が推進されるきっかけとなることが期待できます。
本研究成果は、米国の国際学術誌『The Journal of Biological Chemistry』のオンライン速報版で2017年5月5日(金)(米国時間)に掲載されました。近日中に確定版が掲載される予定です。

参考図:ハエの血球細胞におけるTG-Aの分泌機構
TG-Aは、生合成された後にN-ミリストイル化とS-パルミトイル化と呼ばれる2種類の脂質修飾を受けます。その後、TG-Aは、細胞内の特殊な構造体(多胞体)に集積され、細菌感染などの刺激に応じて、エクソソームとして分泌されます。一方、TG-Bは細胞内で機能します。

研究者からひとこと

私(川畑)が大学院生の頃は、細胞外のTGは分泌されたのではなく、細胞が壊れた結果であるとされていました。TGに、既知の分泌シグナル(ある特徴をもつアミノ酸配列)がなかったからです。今回、ハエTG-Aの分泌は、脂質修飾とエクソソームを介して厳密に制御されていることが判明しました。実験で得られた真実は想定外であり、小説よりも奇だったのです。

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