Research Results 研究成果

食虫植物の未知なる現象を発見 〜植物における労動寄生と、接触刺激により素早く閉じる花を発見〜

2018.03.16
研究成果Physics & Chemistry

 食虫植物は、特殊な捕虫葉を使って昆虫を捕らえ栄養分を得る植物で、同所的に生息するほかの植物や動物と、ほかの植物には見られない興味深い生態を示すことが知られています。九州大学大学院システム生命科学府 大学院生 田川一希、九州大学大学院理学研究院 矢原徹一 教授、愛知教育大学教育学部 渡邊幹男 教授の研究グループは、日本に生息するモウセンゴケ属の食虫植物において、2つの未知の現象を発見しました。これらの研究成果は、米国の科学誌『National Geographic』に2018年3月5日付で紹介されました。
(1)植物間相互作用における労動寄生の発見
 ナガバノイシモチソウとシロバナナガバノイシモチソウが捕まえる昆虫の個体数は、同所的に自生する非食虫植物の花が存在することで、増加することを明らかにしました。この現象は、非食虫植物が蜜や花粉などの資源をもとに誘引した送粉者を、食虫植物が奪い取ってしまうことを示しており、世界で初めて、植物間相互作用における「労動寄生*¹)」の可能性を示唆するものです。本研究成果は、日本生態学会の学術誌『Ecological Research』にオンライン掲載されました(2018年2月12日付)。
(2)さわると素早く閉じる花の発見
 食虫植物トウカイコモウセンゴケにおいて、花のまわりの部位(がく、花茎)にピンセットで接触刺激を加えると、花弁が2〜10分ほどで閉鎖することを発見しました。これまで、オジギソウやハエトリソウなど、接触刺激により葉が素早く動く種は知られていましたが、花弁が素早く閉じる種の発見は世界で初めてです。さらに、研究グループは、モウセンゴケ属の中で、接触刺激に応じて閉じる種と閉じない種が存在することも明らかにしました。この属内の種差を利用することで、植物における素早い動きの進化を、遺伝学的・生理学的・生態学的観点から調べることができるようになると期待されます。本研究成果は、種生物学会の学術誌『Plant Species Biology』にオンライン掲載されました(2018年2月22日付)。

*¹) 宿主が餌として確保したものを餌として得るなど、宿主の労働力を搾取、利用して自身の生活や繁殖を行う行動。

図1.ナガバノイシモチソウは、まわりの植物の花に集まった訪花昆虫を効率よく捕獲する。

 

研究に関するお問い合わせ先

理学研究院 矢原 徹一 教授
システム生命科学府 生態科学研究室 田川 一希
備考:*動画はYoutubeでご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=ls45d7DWFfA