Research Results 研究成果

持続可能な開発目標(SDGs)の新たな経済成長の指標を開発 -インフラ、環境、健康、教育の政策立案に貢献-

2018.08.06
研究成果Environment & Sustainability

 今回、九州大学大学院工学研究院及び都市研究センターの馬奈木俊介主幹教授の研究グループは、出版代表者として委託を受けた国連報告書「Inclusive Wealth Report 2018(IWR: 包括的な豊かさに関する報告書)」を発表し、健康面をはじめて取り入れた新たな経済成長の指標結果を発表しました。
 豊かさや経済の持続可能性を評価するため、「包括的な富(Inclusive Wealth: 新国富指標)」の研究が2012年から進められています。これは、従来の国民総生産(GDP)などでは測れないインフラ、健康、教育、自然といった国の資産全体を計測し、総合的に評価するものです。経済的な側面だけでなく環境や健康、教育といった面を成長させていくこと(包括的な成長)は国や地域の発展にとって重要であり、また、2030年までの国連目標である持続可能な開発目標(SDGs)の達成のための重要な要素です。しかし、これまでは「包括的な成長」と言っても、なにをどう計測して進めるか不明でした。
 そこで同グループは、これまで相互比較が困難であった健康面などの側面まで経済価値を各国ごとに経年で占める割合を計測する手法を開発することに成功しました。主な結果として、健康、教育、自然の各資本が世界全体の富のそれぞれ、26%,、33%,、20%を占め、インフラ開発の21%同等またはそれ以上の価値があることが示唆されています。
 同グループの馬奈木主幹教授が代表をつとめる同報告書にて健康面がはじめて取り入れられ、包括的な成長に寄与できる指標となりました。今後は、各開発政策の立案を進めるうえで重要な企画立案、事後評価に役立つ情報として活用されることが期待されます。
 本研究は、日本学術振興会 科学研究費助成事業(JP26000001)の支援を受けました。本研究成果は、7月28日(土)付のRoutledge出版(無料版は下記より:https://www.taylorfrancis.com/books/e/9781351002073)に掲載されました。
なお、同研究成果については、2018年9月26日(水)開催予定のWorld Social Science Forum2018特別セッションにて報告(英語)予定です。

図1.世界の富の割合

図2. 本研究の分析フレームワーク

研究者からひとこと

インフラの価値を理解することに比べて環境、教育、健康の価値をインフラと同じ経済価値で理解することは難しいです。往々にして「べき論」で、過剰又は過小な投資になりがちです。
本成果は、各国の将来設計だけでなく都市政策において。なにをどの程度進めるかを理解する指針になれば良いと思います。

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