Research Results 研究成果

細胞の損傷を免疫系に知らせる脂質を発見 ~ゴーシェ病やパーキンソン病の治療に期待~

2017.04.04
研究成果Life & Health

 九州大学生体防御医学研究所、大阪大学微生物病研究所の山崎晶教授らの研究グループは、グルコシルセラミドと呼ばれる生体内の脂質が、ミンクルという免疫受容体に結合し、免疫系を活性化する役割があることを発見しました。
 細胞が損傷を受けると、それを体から取り除くために、免疫系が活性化されることが知られていましたが、そのメカニズムは分かっていませんでした。本研究グループは、細胞が損傷を受けた際に細胞内から放出される脂質に注目して解析を進めた結果、グルコシルセラミドという脂質(糖セラミド)がミンクルに結合することを発見しました。グルコシルセラミドは通常、分解酵素によって常に一定量に維持されるよう制御されています。ところが、この酵素が正常に働かないと、グルコシルセラミドが蓄積し、ゴーシェ病やパーキンソン病に繋がることが分かっています。これらの疾患は慢性炎症を伴うことも知られていましたが、なぜグルコシルセラミドの蓄積が炎症を引き起こすのかは不明でした。今回の発見によりそのメカニズムが明らかになり、ミンクルを阻害することで、これらの疾患の治療に繋がる可能性が示されました。今後は、ゴーシェ病やパーキンソン病の動物モデルでミンクルを阻害した場合に、どのような治療効果が得られるかを詳細に調べていくことで、治療薬開発に繋げていきます。
 本研究成果は、2017年4月3日(月)午後3時(米国東部時間)に「Proc. Natl. Acad. Sci. USA誌(電子版)」に掲載されました。また、本研究は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構AMED−CRESTおよび文部科学省科学研究費補助金などの支援を受けて行われました。

(参考図)
正常細胞では細胞内にあるグルコシルセラミドは(左)、細胞が損傷を受けると放出され、ミンクルに結合して免疫応答を活性化します(右)。この経路が異常に活性化されると、過剰な炎症が起こり、疾患を引き起こすと考えられます。

研究者からひとこと

 ゴーシェ病、パーキンソン病に繋がるメカニズムが明らかになったのは大きな驚きでした。治療に繋がる研究を進めていきたいと思っています。

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