Research Results 研究成果

動作中の誘電体における原子位置を0.01 nmの精度で直接観察

2017.08.17
研究成果MaterialsTechnology

 九州大学大学院工学研究院材料工学部門の佐藤幸生准教授は、同金子賢治教授および株式会社メルビルの權堂貴志博士らと共同で、電子顕微鏡を用いて動作中の誘電体内部における原子の位置を0.01 nmの精度で直接観察することに成功しました。
 誘電体と呼ばれる材料は電気を蓄える性質があり、携帯電話やパーソナルコンピュータなど身の回りの様々な製品に多数用いられています。したがって、その研究開発が日夜世界中で進められていますが、その材料開発においては動作時すなわち材料に電圧を加えた状態における内部の構造を正確に把握する必要があります。その際、動作中の誘電体内部の構造を解析する方法として「電圧印加その場電子顕微鏡法」がありますが、従来は良くても0.1 nm程度の構造までしか解析されてきませんでした。
 今回の研究では、電子顕微鏡観察用の試料ホルダーを製作するなどして「電圧印加その場電子顕微鏡法」の高精度化を進め、動作中すなわち電圧を加えた状態での誘電体内における原子位置を0.01 nmの精度で直接観察することに成功しました。この手法を用いると、誘電体内で電気を蓄えられる様子が原子レベルで直接観察されるだけでなく、電池材料やエネルギー関連材料などにも適用可能でその動作メカニズムが解明されることが期待されます。本研究成果は2017年8月11日(金)12時(米国東部夏時間)に米国科学誌Applied Physics Lettersオンライン版に掲載されました。

(参考図1)1 cmあたり570 Vの電圧(左側が+、右側が-。)を加えた状態で観察された誘電体の電子顕微鏡像。

(参考図2)電子顕微鏡像における原子位置の誤差を評価した結果の一例。

研究者からひとこと

 今回の研究成果はまだ萌芽的なものではありますが、何回も実験を行って苦労してやっと測定できたデータです。これから様々な種類の材料に適用して、電子デバイスの性能向上や新製品の開発に繋げ、私たちの生活をより便利なものにしたいと考えています。私達の研究活動等についてはホームページでも紹介していますので、そちらもご覧くださいますと幸いです。(http://zaiko13.zaiko.kyushu-u.ac.jp/sato.html)

研究に関するお問い合わせ先