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研究成果

公開日:2017.09.22

世界初、ダイレクトリプログラミングによるマウス及びヒト腸前駆細胞の作製
〜腸疾患の病態解析や再生医療への応用が期待される画期的な成果〜

研究成果 医歯薬学

 九州大学生体防御医学研究所の鈴木淳史教授と大学院医学系学府博士課程4年の三浦静の研究グループは、世界で初めて、マウスの皮膚やヒトの血管の細胞に4つの転写因子(Hnf4α、Foxa3、Gata6、Cdx2)を導入することで、直接、胎児性の腸前駆細胞へ変化させること(ダイレクトリプログラミング)に成功しました(図1)。
 食物の消化や吸収を担う小腸や大腸は、胎児期の腸管を形成する腸前駆細胞が成体型の腸幹細胞へと成長することで形成されます。本研究で誘導に成功した胎児性の腸前駆細胞は、培養下で三次元組織構造体(オルガノイド)を形成して増殖し、成体型の腸幹細胞が作るオルガノイドへと成長します(図2)。得られた成体型の腸幹細胞は、腸上皮組織を構成するすべての細胞へ分化する能力(多分化能)と長期間自己と同じ細胞を作り続ける能力(自己複製能)を有します。また、誘導した胎児性の腸前駆細胞や成体型の腸幹細胞が作るオルガノイドを大腸炎モデルマウスに移植すると、長期間、腸上皮組織を再構築することが可能です。
 腸上皮オルガノイドは、生体外で腸上皮組織を維持・培養できることから、基礎研究だけでなく、移植医療や創薬研究への応用も期待されています。しかしながら、材料となる腸の組織を生体から生きたまま取り出すことは患者さんへの負担が大きく、また、多能性幹細胞から分化誘導する場合も複雑な方法が必要です。ダイレクトリプログラミングの手法によって作製される腸前駆細胞を用いることで、これら既存の方法に対し、より簡便かつ効率的に腸上皮オルガノイドを取得できるようになると考えられます。今後、作製した腸上皮オルガノイドを用いた腸疾患の病態解析や再生医療、創薬研究への展開が期待されます。
 本研究成果は、2017 年9月22日(金)午前1時(日本時間)に米国科学雑誌『Cell Stem Cell』オンライン版で発表されました。

図1:本研究成果の概略図

図2:皮膚由来(A)と腸由来(B)の腸上皮オルガノイド
(A)ダイレクトリプログラミングによって作製された腸上皮オルガノイド(成体型)
(B)成体マウス腸組織由来オルガノイド

研究者からひとこと

 私たちはダイレクトリプログラミングの手法を用いて過去に肝細胞を作製することに成功し(Sekiya and Suzuki, Nature, 2011)、今回、腸前駆細胞を作製することにも成功しました。ダイレクトリプログラミングによって作製された細胞が医療や創薬に応用される日を夢見て、これからも研究を頑張ろうと思います。

論文情報

Generation of Mouse and Human Organoid-Forming Intestinal Progenitor Cells by Direct Lineage Reprogramming ,Cell Stem Cell,
http://dx.doi.org/10.1016/j.stem.2017.08.020

研究に関するお問い合わせ先

生体防御医学研究所  教授 鈴木 淳史
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