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研究成果

公開日:2018.07.27

危険な毒蛇ハブの全ゲノム解読
〜毒を作り出す遺伝子進化の全貌を世界で初めて解明〜

研究成果 医歯薬学

 ハブ(Protobothrops flavoviridis)は国内の毒蛇としてよく知られており、その毒液は多様な生理活性を持つタンパク質の「カクテル」です。その全容解明のために、全ゲノム解読が待たれていました。九州大学生体防御医学研究所の柴田弘紀准教授は、沖縄科学技術大学院大学の佐藤矩行教授、東北大学の小川智久准教授らとの共同研究で、ハブの全ゲノム配列を決定し、ハブゲノムにコードされる約25,000個の遺伝子を発見しました。さらに毒液の成分として働くタンパク質の遺伝子60個と、それらと兄弟のタンパク質でありながら毒として働かない遺伝子(非毒型パラログ)を224個見出しました。毒液関連遺伝子のうち、特に4つのタンパク質ファミリー(金属プロテアーゼ、ホスホリパーゼA2、セリンプロテアーゼ、C型レクチン)では、遺伝子のコピー数が大幅に増加し、かつコピー間のアミノ酸の置換速度が上昇していること(加速進化)がわかりました。また、毒液関連遺伝子群が、鳥類や爬虫類に特徴的な組み替え率が高い小型の染色体、「微小染色体」に多く存在していることも見出しました。これらのことから、ハブ毒液遺伝子群が、高度に多重化かつ急速に多様化しながら進化してきたことが示唆されました。本成果により、蛇毒の作用機序の全容解明と、効果の高い抗毒素開発の大幅な効率化、さらにハブゲノム由来の新規の薬理分子からの有用な医薬品開発への道が開かれました。
 本研究成果は2018年7月26日(木)午前10時(英国夏時間)に国際学術誌”Scientific Reports”に掲載されました。
 なお本研究は、日本学術振興会科学研究費(JP25440214,JP18H02498,JP23107505,JP24651130)の支援を受けて行われました。

図1:ハブ(a)とその毒牙と毒液(b)

図2:ハブ毒の主要な4つのタンパク質の遺伝子族について、アミノ酸の配列を変える塩基置換の割合(KA)と変えていない塩基置換の割合(Ks)をプロットしました。通常の遺伝子は機能的制約があるため、KsはKAより常に大きく、KAとKSの比(KA/KS)は1より小さくなります(図中の対角線がKA/KS = 1を表しています)。図中で青丸で表した非毒型のパラログ(nv)ではいずれも1より小さくなっています。ところが毒液タンパク質の遺伝子群(sv、図中の赤丸)ではKA/ KSは1ないし1より大きくなっており、アミノ酸を変える塩基置換が通常よりはるかに早い速度で蓄積していっていること(=加速進化)がわかります。

図3:ハブの染色体

研究者からひとこと

 ゲノム未解読の生物種のゲノム配列を新規に決定する研究は、実は国内ではほとんど行われていません。ハブは日本固有種であり、本研究成果は、ハブ毒由来の日本発医薬品の開発にもつながっていくと期待しています。

論文情報

The habu genome reveals accelerated evolution of venom protein genes ,Scientific Reports,
10.1038/s41598-018-28749-4

研究に関するお問い合わせ先

柴田 弘紀  生体防御医学研究所 准教授

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