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研究成果

公開日:2018.10.19

中性子過剰なスズ同位体の巨大共鳴観測に成功
―パイ中間子凝縮から中性子星の構造解明に一歩近づく―

研究成果 理学

 理化学研究所(理研)仁科加速器科学研究センタースピン・アイソスピン研究室笹野匡紀専任研究員、上坂友洋室長、九州大学理学府の安田淳平大学院生(研究当時)、理学研究院の若狭智嗣教授らの国際共同研究グループ※は、理研の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」を用いて、二重魔法数核「スズ-132(¹³²Sn)」に対する「巨大共鳴状態」の観測に世界で初めて成功しました。
 本研究成果により、「パイ中間子」が引き起こす「パイ中間子凝縮」と呼ばれる相転移現象が起こる条件が明らかになり、中性子星の構造や急速冷却現象の解明が進むと期待できます。
 1973年に予言されたパイ中間子凝縮は、通常の原子核ではまだ観測されていませんが、中性子星では起きている可能性があると考えられています。今回、国際共同研究グループは、RIBFにおいて生成された¹³²Snビームを液体水素標的に照射し、引き起こされた「荷電交換(p, n)反応」を「WINDS中性子検出器」と「SAMURAI磁気スペクトロメーター」を用いて測定することで、パイ中間子凝縮の性質を反映する巨大共鳴状態(ガモフ・テラー巨大共鳴)の観測に成功しました。得られたスペクトルと理論計算の比較から、パイ中間子凝縮が通常の原子核密度の2倍以上の環境、すなわち太陽質量の1.4倍より重い中性子星で起こっている可能性が高いという結論を得ました。
 本研究は、米国の科学雑誌『Physical Review Letters』のオンライン版(9月26日付け)に掲載されました。

図1 荷電交換(p, n)反応を用いた巨大共鳴の励起のイメージ
陽子が原子核に衝突し、中性子が放出されると、パイ中間子が関与する原子核の振動状態(巨大共鳴)が励起される。

図2 ガモフ・テラー巨大共鳴の観測実験装置
赤矢印の方向で光速の半分程度の速度を持つスズ-132(¹³²Sn)ビームが液体水素標的に照射され、荷電交換(p, n)反応が起こる。荷電交換(p, n)反応によって生成された中性子は、ビームの入射方向に対して横向きに出射され(青矢印)、反応点を囲むように配置された「WINDS中性子検出器」で検出される。一方、荷電交換(p, n)反応後、¹³²Snビーム粒子は種類(アンチモン-132同位体など)を変えるが、「SAMURAIスペクトロメーター」で粒子同定され(緑矢印)、荷電交換(p, n)反応チャンネルの選択に用いられる。

図3 観測されたスズ-132(¹³²Sn)のガモフ・テラー巨大共鳴のスペクトル
横軸の励起エネルギーは、原子核振動の周波数に比例する。黒い点は観測データを、黒線は各観測データをつなげた一山構造のスペクトルを示し、それぞれの曲線は異なるランダウ・ミグダルパラメーター(g’)を用いた理論計算の結果を表す。スペクトルと理論計算の比較により、g’=0.68と決定された。なお、測定された共鳴周波数は2.4x10²² Hzだった。上部に、パイ中間子の短距離斥力の強さおよびパイ中間子凝縮の起こりやすさの関係を矢印で示している。すなわち、巨大共鳴現象の励起エネルギーが大きいほど、パイ中間子由来の短距離斥力が強く、パイ中間子凝縮は起こりにくいといえる。

論文情報

Extraction of the Landau-Migdal Parameter from the Gamow-Teller Giant Resonance in ¹³²Sn ,Physical Review Letters,
10.1103/PhysRevLett.121.132501

研究に関するお問い合わせ先

若狭 智嗣 理学研究院 教授
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