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研究成果

公開日:2018.12.11

世界初、ペルオキシソーム形成異常症の発症メカニズムを解明
− 治療法開発にも期待 −

研究成果 医歯薬学

 九州大学生体防御医学研究所の藤木幸夫特任教授、同中山敬一教授、大阪大学大学院医学系研究科の山下俊英教授らの研究グループは、致死性の常染色体劣性遺伝病であるオルガネラ病・ペルキシソーム形成異常症(指定難病234)における小脳形態形成障害に、神経栄養因子・BDNFおよびその不活性型受容体・TrkB-T1の発現上昇が関わることを示し、ペルオキシソーム形成異常症の発症メカニズムを世界で初めて明らかにしました。
 ヒトをはじめ高等生物の細胞内では、膜構造で仕切られた細胞小器官(オルガネラ)が非常に発達しています。ペルオキシソームは多くの重要な代謝酵素群を含む生命維持に必須の細胞小器官です。藤木らの研究グループは、これまでに哺乳動物のペルオキシソーム形成に必須なペルオキシン(PEX)遺伝子を数多くクローニングし、ペルオキシソーム形成異常症の病因遺伝子であることも明らかにしてきました。今回、本研究グループは、ペルオキシソーム形成の主要因子であるPex14遺伝子に異常を有するPex14変異マウスを作製・確立しました。Pex14変異マウスはペルオキシソーム形成異常症患者と同様に脳の形態異常を示し、特に小脳ではプルキンエ細胞の樹状突起形成障害(図1)や神経軸索の膨らみ(膨潤化)などが観察されました。小脳の形態形成に関わる因子に関して詳細に解析したところ、小脳形態形成に関わることが知られる神経栄養因子・BDNFおよびその不活性型受容体・TrkB-T1がPex14変異マウスにおいて増加していました。さらに、小脳形態形成に必須な活性型受容体・TrkB-TK+の自己リン酸化や細胞応答の低下も観察されました。以上のことから、BDNF-TrkBを介した細胞応答の障害がペルオキシソーム形成異常症の小脳形態異常を導くことを発見し(図2)、世界で初めて本症病態発症機構を解明しました。
 今後、研究グループは、BDNFおよびTrkB-T1の発現上昇の分子メカニズムを解明し、治療法開発へと繋げたいとしています。
 本研究成果は、2018年12月3日に「Life Science Alliance」電子版に公開されました。

図1. 小脳プルキンエ細胞の樹状突起形態異常(生後7日).
(A) 野生型マウス小脳ではプルキンエ細胞の樹状突起が高度に発達している.(B) Pex14変異マウスではプルキンエ細胞の樹状突起形成異常が観察される.

図2. Pex14変異マウスにおける小脳プルキンエ細胞の形態異常.
野生型マウスにおいてはBDNFがTrkB-TK+に結合し自己リン酸化(Ⓟ)を誘導し、下流のERKおよびAKTのリン酸化を含めたシグナル伝達系を活性化させることでプルキンエ細胞の樹状突起形成を導く(左).Pex14変異マウスではBDNFおよびTrkB-T1が増加しており、下流のシグナル伝達系を不活性化させ形態異常を起たす(右).

研究者からひとこと

オルガネラ病を代表するペルオキシソーム形成異常症における小脳形態異常の分子メカニズムを明らかにしました。

研究に関するお問い合わせ先

生体防御医学研究所 特任教授 藤木 幸夫
生体防御医学研究所 特任准教授 本庄 雅則

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