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研究成果

公開日:2017.01.24

自動車用鋼板の破壊メカニズムを解明!より優れた鋼板の作成に期待

研究成果 工学

 九州大学大学院工学研究院の戸田裕之主幹教授と新日鐵住金株式会社技術開発本部鉄鋼研究所の東昌史主幹研究員らの共同研究グループは、大型シンクロトロン放射光施設SPring-8での4D観察を活用し、自動車の鋼板などとして広く使われているハイテンの一種であるDP鋼の破壊メカニズムを解明しました。DP鋼は、既に自動車用として使われているものの、その内部組織の複雑さにより、破壊のプロセスはよく分かっていませんでした。研究グループがDP鋼の破壊過程を4D観察した結果、3次元的に複雑に絡み合う複雑な組織のうち、特定のサイトで遅れて生じた空隙がその後、急速に伸長して連結することで、鋼板自体の破壊が生じることがわかりました。この破壊メカニズムを考慮してDP鋼を設計することで、より強く、より成形性に優れた鋼板の作成が可能となることが期待されます。また、DP鋼よりさらに複雑な組織、そしてさらに微細な組織を有する先進鉄鋼材料の評価や開発にも、一連の評価解析技術が有効になるものと期待されます。
 本研究成果は、2017年1月6日付けで、金属材料工学分野で最も権威のある英文誌『Acta Materialia』のオンライン版で公開されました。また、2017年3月1日(水)発行の第126巻に掲載される予定です。

DP鋼の破壊プロセスをSPring-8でCTを利用して4D観察した結果。23.9%ほど引っ張った時に高密度な空隙(赤色)が発生し、このうち、幾つかのものが急激に成長し、材料全体が破壊に至るプロセスが示されています。斜めに伸びた空隙が破壊を支配しています。この図では、鉄鋼を透明にし、内部の損傷のみを表示しています。

図3の中で見られる大きな空隙(赤色)と、その空隙をもたらしたマルテンサイト(黄色および灰色)を示したもの。もともと一つだったマルテンサイトが、くびれた部分で破壊し、空隙が生じています。右の図は、同じ部分を横から見た図です。くびれて非常に薄くなった部分が優先的に折れていることが分かります。

別の部分のマルテンサイト(左図)。非常に細くくびれて折れやすくなっているところがあります。左図のカラーは、表面の凹凸の様子を数値にしたものです。ここから、右図のようにくびれて折れた部分のマルテンサイトには、DP鋼に与えた負荷の5倍にも達する大きな負荷がかかり、破壊に至ることが分かります。

研究者からひとこと

 近年、輸送用機械の効率化・軽量化のニーズが大きくなり、鉄鋼やアルミニウム等の構造材料の研究が再び脚光を浴びています。この研究は、そのための先端分析計測技術の開拓や工業利用に関するものです。世界最高の実験施設SPring-8を有効に活用することで、他国ではまねできない研究ができ、我が国の産業に貢献できると期待しています。

研究に関するお問い合わせ先

工学研究院 教授 戸田 裕之

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