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旧工学部本館

箱崎の近代建築物

旧工学部本館

解説

 中央にそびえる展望塔、その両脇を固める半円筒状の塔屋、それよりやや低く水平に左右対称を守る研究室や事務諸室、両端でT字形に突出する講義室・研究室・事務所室・展望塔の背後に控える大講義室と会議室。工学部本館の量塊性に満ちた複雑な造詣は茶色のスクラッチタイルで覆われ、強烈な存在感を箱崎キャンパスにもたらしている。この時期の鉄骨鉄筋コンクリート造としては、「旧応力研生産研本館」に次いで古く、全国的にも貴重な遺構といえる。諸室の見どころは中央4階の第2会議室と1~2階に巨大な空間を占める大講義室である。第2会議室は議長席の背後が柱間いっぱいの油絵に彩られ、天井と梁下面は浮彫りを飾り、床には絨毯を敷き詰め、見事な椅子や机を調え、豪華なシャンデリアが室内を照らす。大講義室は、緩やかな二次曲線を描いて聴講席が広がり、アンティークな照明に包まれて、谷底に位置する堂々たる教壇と黒板にすべての視線が集中する。いずれも伝統ある旧帝国大学の威容を保っている。細部に目を転じると、正面玄関の車寄せから玄関にかけて質の高い意匠が集中する。庇を支える最前列の白い4本の円柱は柱頭に丁寧な紋様を配し、両脇の漆喰天井はレリーフで文節され、青銅の灯火と円形のステンドグラスが埋め込まれている。玄関扉の幕板には彫刻が施され、欄間には植物をかたどったステンドグラスを飾る。左右両端階段室の親柱にはメタルワークが嵌められ、隅々までデザインされている。

コメント

  • 本部棟と並ぶ九州大学の代表的建築物。受験雑誌の表紙等に紹介されるなど、工学部設立のシンボルであり、かつ工学部卒業生の記憶のシンボルでもある。一部大講義室に鉄骨が使用された初期鉄骨鉄筋コンクリート造大規模建築物。また多くの学者を育てた歴史的意義の大きい威風堂々とした名建築である。
  • シンボリックな意匠でタイルの割付け、タイルの形にも配慮し、技術の高さを示している。スクラッチタイルやライオンの雨樋フード、玄関ポーチの持ち送りに施されたコンドルやステンドグラスなど、詳細部の各所に見どころが多い。本部と軸線を通し、キャンパス内において見事な配置がなされており、学内の景観を作り上げるのに重要な役割を果している。
1.建設年 1930年、昭和5年
2.設計者または組織

倉田 謙、小原節三(設計技師)

3.施工者(設備・基礎工事等請負会社が異なる場合は記載) 清水組(現清水建設)
4.規模  
階数 地上5階、地下1階
面積 10,324㎡
正面×側面 107m×60m
5.方位(正面玄関の向き) 南東
6.構造(木造、煉瓦、RC、鉄骨)(組合せもあり) 鉄筋コンクリート、一部鉄骨鉄筋コンクリート
7.増築時期(記録に基づく) 昭和63年
8.大規模改修の時期(記録に基づく) 昭和63年
9.利用状況 学内の各学部の教育・研究施設として使用中
10.資料(図面等) 図面64枚以上有。
11.経年(平成28年4月1日時点) 86年
12.耐震性能(Is,調査年度) 0.51, H19調査
13.耐震経年指標(T,調査年度) 0.8 , H19調査
14.コンクリート中性化深さの平均(㎜) 35.4
15.コンクリート圧縮強度(N/m㎡) 21.3
16.受賞歴、または、文献(出版社等)への記載等
  • 福岡市都市景観賞受賞
  • 近代化産業遺産群 続33の選定(経済産業省)
  • 総覧 日本の建築第9巻/九州沖縄(新建築社会)、福岡の近代化遺産(弦書房)、福岡県の近代化遺産(財・西日本文化協会)
  • 平成17年度九州大学箱崎キャンパス内歴史的資源の現況調査成果報告書