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九州大学が、三井不動産、日鉄興和不動産とともに「次世代GX産業集積研究部門」を新設

2024.04.17
お知らせ

国立大学法人九州大学(所在:福岡県福岡市、総長:石橋 達朗)(以下「九州大学」)は、三井不動産株式会社(所在:東京都中央区、代表取締役社長:植田俊)(以下「三井不動産」)ならびに日鉄興和不動産株式会社(所在:東京都港区、代表取締役社長:三輪正浩)(以下「日鉄興和不動産」)とともに、このたび「次世代GX産業集積研究部門」を新たに設置しましたのでお知らせいたします。

九州大学では、三井不動産および日鉄興和不動産とともに、経済安全保障を見据えた国内産業政策を背景に、持続可能性と経済合理性のバランスのとれた製造業を中心とした産業集積を想定し、「持続可能性に資する未来型の高度産業集積に関する共同研究(※1)」を2023年4月より実施してまいりました。

現在、脱炭素社会の実現に向けたグリーントランスフォーメーション(GX)の実現に向けた機運が高まっていますが、その一方で過去の統計データを基盤とした従来型の影響算定手法では、社会変革を伴う新たな産業構造を有する次世代GX産業の影響評価は困難でした。そこで今般、「次世代GX産業集積研究部門」を立ち上げることで、次世代のGX産業開発に適用可能な新たな影響予測手法に関する研究開発を実施し、三者で緊密な連携のもと研究を推進します。

また、本研究開発を通じ、EV産業やバッテリー産業といったすでに立ち上がりつつあるGX産業の影響評価を実施するのみならず、究極の脱炭素エネルギー源として世界各国で研究開発の進むフュージョンエネルギー(核融合エネルギー)とその関連産業の集積による影響についても分析を実施します。

今後期待される研究成果をもって、九州大学は、三井不動産ならびに日鉄興和不動産とともに、持続可能な社会の実現のため、海外企業や行政への働きかけを行ってまいります。

※1 「持続可能性に資する未来型の高度産業集積に関する共同研究」
九州大学、三井不動産、日鉄興和不動産がIWI(新国富指標: Inclusive Wealth Index)に着目し、2023年4月25日付で開始した研究
参考リリース: https://www.mitsuifudosan.co.jp/corporate/news/2023/0425/

「持続可能性に資する未来型の高度産業集積に関する共同研究」について

九州大学は、三井不動産ならびに日鉄興和不動産とともに、2010年より国連で採用されている新国富指標(Inclusive Wealth Index)(※2)に着目して、高度産業を中核とした開発事業に際する自然、人、インフラへの影響を定量化する研究開発を実施しております。また2023年4月からは、持続可能性と経済合理性のバランスのとれた製造業を中心とした産業集積を想定し、「持続可能性に資する未来型の高度産業集積に関する共同研究」を実施してまいりました。

その結果、高度産業集積における新国富上のインパクトを算出する新たな手法の開発に成功し、地域開発事業について、経済効果に加えて持続可能性に着眼する自然や人材といった分野ごとに都道府県別に全国への波及効果を可視化することが可能となりました。これにより、高度産業誘致と開発事業について、社会・環境・経済上のそれぞれの利益を考察しつつ、都道府県ごとの持続可能性と地域の発展を総合的に検証可能となります。

図 半導体産業の集積が起こった場合の都道府県別の新国富*の増減量

* 人的資本:そこに住む人の教育や健康への影響、自然資本:その都道府県の森林、農地、漁業、鉱物資源への影響、人工資本:その都道府県のモノやインフラへの影響 をそれぞれ金銭価値換算した影響を現したものです。

また、本手法の応用により、九州地域における2030年を想定した半導体産業の集積に関するシナリオ分析を実施しました。結果、半導体関連産業の集積が熊本県に実現されたシナリオでは、新国富で+93.2兆円、同条件で福岡県に実現されたシナリオでは+87.6兆円の全国での増加が見込まれることがわかり、特に熊本県で集積した場合の増加が顕著な結果になりました。

新国富のなかでも、特に人的資本において、熊本県ケースと福岡県ケースで大きな差が生じました。福岡県に半導体産業の集積が実現されたシナリオでは、愛知県において人的資本が6.8 兆円増加、東京都で6.2 兆円の増加がみられ、大都市圏から高度人材が流入することを示唆しました。一方で、熊本県に実現されたシナリオでは、愛知県・東京都のほか、福岡県でも3.6 兆円の人的資本の増加が見られるなど、大都市圏のみならず地方の教育や健康にも好影響を与えることが明らかになりました。

これは、福岡県においては人材の域内需給が一定程度可能であるのに対して、熊本県では域外需要が大きいことにより、日本各地から高度技術人材が流入することで、教育を含めた全国における人的資本の向上に繋がることに起因すると考えられます。

※2 新国富指標 (Inclusive Wealth Index)
GDP を補完する新たな価値として2012 年に国連が発表した指標で、「現在を生きるわれわれ、そして将来の世代が得るだろう福祉を生み出す、社会が保有する富の金銭的価値」を数値化したもので、UNEPより継続的にレポートが発行されています。馬奈木教授は、2014年より国連代表としてInclusive Wealth Report(国連・新国富報告書)を執筆、九州を中心とした複数の自治体で新国富指標を導入している第一人者です。新国富指標導入後、各自治体において新国富指標を活用した政策が具体化されています。

お問い合わせ

九州大学 都市研究センター長:馬奈木 俊介
電話:092-802-3401
Mail:managi★doc.kyushu-u.ac.jp
※メールアドレスの★を@に変更してください。