Research Results 研究成果

新たなC-スルホン化反応とプロスタサイクリン拮抗分子の発見

~免疫と酸化ストレス制御に関わる新たな代謝機構発見と新たな医薬品開発に期待~ 2024.03.08
研究成果Life & HealthPhysics & ChemistryTechnologyEnvironment & Sustainability

ポイント

  • 特定の官能基を有する炭素原子にスルホン基を修飾する酵素反応を世界初で発見した(C-スルホン化反応)
  • 免疫応答などの様々な生理作用をもつ生理活性脂質プロスタグランジンがC-スルホン化を受けることを証明した
  • スルホン化プロスタグランジンが痛みや炎症、浮腫を誘発するプロスタサイクリン受容体の拮抗分子として機能することを発見した

概要

 宮崎大学農学部応用生物科学科 黒木勝久准教授、榊原陽一教授、九州大学大学院農学研究院 寺本岳大助教、角田佳充教授らは、炭素原子にスルホン基を修飾する酵素反応 (C-スルホン化)を世界で初めて発見し、その酵素反応メカニズムを解明しました。さらに、その標的基質の一つとして、プロスタグランジンを同定し、代謝産物がプロスタサイクリン受容体に対する拮抗作用を示すことを明らかにしました。本研究結果は2024年3月4日に「PNAS Nexus」に掲載されました。
 本研究では、a,b-不飽和カルボニル基の炭素原子にスルホン基(-SO₃H)を修飾するC-スルホン化反応を発見し、その標的基質としてシクロペンテノン型プロスタグランジンを同定しました。酵素反応物の構造や酵素の立体構造を解析し、a,b-不飽和カルボニル基のC-スルホン化反応機構を解明しました。プロスタグランジンのスルホン化反応物はプロスタグランジン受容体EP2およびプロスタサイクリン受容体IPに対して拮抗作用をもつことが明らかになりました。本酵素は腸管特異的に機能することから、腸内細菌と腸管との間で制御される腸管免疫を制御し、腸の機能維持に関与していることが想定されました。さらに、プロスタサイクリン受容体IPに対し、強い拮抗作用をもつことから、新たな医薬品開発に繋がることが期待されました。C-スルホン化反応は、いくつかの硫酸転移酵素により触媒され、酵素によって標的基質が異なることが想定されるため、これまでに明らかにされていないスルホン化反応(硫酸化反応)が、生体内には多く起きていることが想定されました。

図1. α,β-不飽和カルボニル基特異的なC-スルホン化反応

発表者

宮崎大学 農学部:黒木勝久 准教授、榊原陽一 教授、水光正仁 名誉教授
     医学部:福島剛 准教授、片岡寛章 副学長・理事 (研究当時:教授)
     工学部:松本仁 准教授
     地域資源創成学部:橋口拓勇 特別助教

九州大学 大学院農学研究院:寺本岳大 助教、角田佳充 教授、兼清美帆 氏 (研究当時:学生)
     生体防御医学研究所:馬場健史 教授

大阪大学 工学研究科:福崎英一郎 教授

論文情報

掲載誌:PNAS Nexus
論文タイトル:A new type of sulfation reaction: C-sulfonation for a,b-unsaturated carbonyl groups by a novel sulfotransferase
著者名:Katsuhisa Kurogi*, Yoichi Sakakibara, Takuyu Hashiguchi, Yoshimitsu Kakuta, Miho Kanekiyo, Takamasa Teramoto, Tsuyoshi Fukushima, Takeshi Bamba, Jin Matsumoto, Eiichiro Fukusaki, Hiroaki Kataoka, and Masahito Suiko
DOI: 10.1093/pnasnexus/pgae097
公開日:2024年3月4日