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不気味の谷を引き起こすのは”未知への不安”であることを解明 ―人とアンドロイドが無理なく共存する社会構築への期待―

2017.10.26
研究成果Humanities & Social Sciences

 九州大学基幹教育院(早稲田大学理工学術院・日本学術振興会特別研究員SPD)の佐々木恭志郎学術研究者、アドミッションセンターの井隼経子准教授、基幹教育院の山田祐樹准教授のグループは、ロボットや人形の見た目が生み出す不気味さの認知的メカニズムを明らかにしました。
 ロボットや人形の見た目について「不気味の谷」と呼ばれる現象があります。ロボットや人形の見た目は、人間に似ていくにつれてだんだんと好ましく思われます。しかし類似度があるレベルに達した途端、強い不気味さが喚起されるようになります。これまで、人間なのか人形なのかを分類できないこと自体が不気味さを生み出すと考えられてきましたが、分類できないことがなぜ不気味さを引き起こすのかについては手がかりが乏しい状況でした。
 本研究では、分類困難な対象の不気味さに、人が抱く「未知への不安」が寄与していることを実証しました。実験では、参加者に13種類の人間と人形の合成写真について、「どれくらい不気味に感じるか」を尋ねました。同時に、未知への不安を抱きやすい性格かどうかについても測定をしました。その結果、未知への不安を抱きやすい人ほど、分類困難な対象を不気味と感じやすいことが明らかになりました。
 この知見は、何が不気味なのかを調べようとする従来の研究と異なり、「誰が不気味を感じるのか」を検討したことで初めて明らかになりました。これにより、不気味の谷だけでなく食わず嫌いやゼノフォビア(外国人恐怖症)といった未知なる対象を回避しようとして生じる様々な現象の理解が一気に前進する可能性が高まりました。
 本研究はJSPS科研費JP14J06025、JP17J05236(いずれも特別研究員奨励費)、JP26750322(若手研究B)、JP26540067(挑戦的萌芽研究)、JP15H05709(基盤研究S)および九州大学教育研究プログラム・研究拠点形成プロジェクト(#26806、# 27822)の支援を受けました。成果についてはスイスの科学雑誌「Frontiers in Psychology」誌(オンラインジャーナル)に、2017年10月26日(木)正午(日本時間)に掲載されました。

図:未知への不安の強さと分類困難な対象の不気味さの関係

研究者からひとこと

人の心がたびたび科学技術の発展に追いつかず、人にとって心地よくないことが起こってしまいます。その仕組みを明らかにし、人の生活と科学技術の発展どちらにも、明るい未来を提供することが、認知科学者の仕事のひとつであると思っています。

論文情報

Avoidance of Novelty Contributes to the Uncanny Valley ,Frontiers in Psychology,
10.3389

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