Research Results 研究成果

わずか3日間の脳波の訓練で長期記憶の向上に成功!

2021.08.27
研究成果Life & Health

 九州大学基幹教育院の岡本剛准教授、大学院システム生命科学府一貫制博士課程のYuHsuan Tseng大学院生らの研究グループは、わずか3日間の脳波訓練により長期記憶能力が向上できることを示しました。
 コンピュータの手助けと自分の意思で自分の脳活動を確認しながら調節していく訓練法(ニューロフィードバック訓練法)は、1960年代から色々な方法が開発・応用されてきましたが、長期記憶にも効果があるのかどうかは不明でした。そこで本研究では「ニューロフィードバック訓練法が長期記憶に与える効果」を明らかにすることを目的とし、次の実験を行いました。
 研究の意図を知らない学生32人を、脳波を用いたニューロフィードバック訓練法を行うグループ(訓練群)と行わないグループ(非訓練群)の2つに分け、1週間の記憶力の変化を調べました。そして、訓練群の方が1週間後の記憶忘却率を低く保てていたという結果を得ました。これは、訓練群で1週間の記憶保持力が向上したことを示しています。
 これまでのニューロフィードバック訓練法は、1週間から数ヶ月におよぶ訓練期間を設けることが多かったのですが、本研究ではわずか3日間でその後の長期記憶力を高められることを示しました。この成果は、日常生活はもちろん、勉強や仕事、認知症予防など、あらゆる年代の多くの場面で広く応用されることが期待されます。

 本研究成果は、2021年8月26日10時(英国時間)にScientific Reports誌にオンライン掲載されました。

(参考図)記憶6日後の忘却率の変化

2週目に脳波の訓練を実施した訓練群では、訓練前の1週目に実施した記憶課題の忘却率に対し、訓練後の3週目に実施した忘却率の方が低下していた。非訓練群では忘却率はあまり変わらなかった。

研究者からひとこと
本研究では、薬や電気刺激などを使わず、脳波計とコンピュータと自分の意思で、「脳が物事を記憶しやすい状態」に脳活動を自己調節することができる可能性を示しました。まだ改良の余地はありますが、応用範囲は非常に広いです。脳とその研究には色々な可能性がありますね!

論文情報

タイトル:
著者名:
Yu‑Hsuan Tseng, Kaori Tamura & Tsuyoshi Okamoto 
掲載誌:
Scientific Reports
DOI:
10.1038/s41598-021-96726-5

研究に関するお問い合わせ先

基幹教育院 岡本 剛 准教授