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旧文学部心理学教室

箱崎の近代建築物

旧文学部心理学教室

解説

 小規模な建築ながら、玄関回りの壁は吹寄せ筋彫のある曲面で構成され、礎石に浮彫りを施し、海老茶色のタイルで出入口を縁取るなど配慮がなされている。玄関庇上の塔屋の窓も2層分同系色のタイルで囲まれ、各層窓間の壁面には浮彫りが認められる。窓台には傾けた煉瓦タイルを用い、内部の階段はメタルワークを埋め込んだ親柱とともに黒い御影石で造られる。天井は6段の細かい繰形縁を回して折上げられ、窓はスチール製の二重サッシ、梁下端の唐戸面が品よく、細部まで丁寧に仕上げられた佳品である。

コメント

  • 九州大学の講座の中でも特異な歴史を持ち、心理学を確立させ、更に発展に寄与した。構内に残る他の建物と比較するとデザインの系譜がやや異なるが、心理学の教授である佐久間鼎の希望によりドイツの建物のデザインを踏襲したためと言われる。日本の心理学研究で九大心理学教室が果たした役割は大きく、これは九州大学の研究レベルを建物というかたちで表したものといえる。そもそも心理学教室のみ棟を分けていることからも九州帝国大学におけるこの施設の重要性が想像できよう。建築としては倉田謙の作品のデザイン的特徴からはずれた異色作と言える。佐久間は日本における心理学の権威であり、建物の設計にも大きく影響したと言われる。鉄筋コンクリート造の特色を生かした造りで、当時の造形感覚にとらわれない形態を生み出した。
1.建設年 1927年、昭和2年
2.設計者または組織 倉田 謙
3.施工者(設備・基礎工事等請負会社が異なる場合は記載) 不詳
4.規模  
階数 地上2階
面積 628㎡
正面×側面 24m×17m
5.方位(正面玄関の向き) 南東
6.構造(木造、煉瓦、RC、鉄骨)(組合せもあり) 鉄筋コンクリート
7.増築時期(記録に基づく) -
8.大規模改修の時期(記録に基づく) 平成2年
9.利用状況 埋蔵文化財研究室等として使用中(平成27年10月より閉鎖予定)
10.資料(図面等) 図面9枚有
11.経年(平成27年4月1日時点) 88年
12.耐震性能(Is,調査年度) 0.89 一次,H18調査
13.耐震経年指標(T,調査年度) 0.8,H18調査
14.コンクリート中性化深さの平均(㎜) 56.3
15.コンクリート圧縮強度(N/m㎡) 24.4
16.受賞歴、または、文献(出版社等)への記載等
  • 総覧 日本の建築第9巻/九州沖縄(新建築社)
    福岡の近代化遺産(弦書房)
    福岡県の近代化遺産(財・西日本文化協会)
  • 平成17年度九州大学箱崎キャンパス内歴史的資源の現況調査成果報告書

参考文献

  • 平成17年度 九州大学箱崎キャンパス内歴史的資源の現況調査 成果報告書(平成19年2月 九州大学)
  • 九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の評価報告書(平成24年12月 九州大学箱崎キャンパスにおける近代建築物の調査ワーキンググループ)