マルチリンガルで日本語の得意分野は漢文。現在、同大学院において日本唯一の博士・修士課程「広人文学コース」を共同担当。外国人の視点を大切にしながら古代史の謎を紐解く、日本人以上に古代日本を知る若手ホープである。
マルチリンガルで日本語の得意分野は漢文。現在、同大学院において日本唯一の博士・修士課程「広人文学コース」を共同担当。外国人の視点を大切にしながら古代史の謎を紐解く、日本人以上に古代日本を知る若手ホープである。
ベルギー、ロケレン市生まれ。70年代にカンボジアで国際赤十字に医師として勤めていた父が、家に持ち帰った本や仏像に囲まれて少女時代を過ごす。アジアの文化に惹かれ、各国を旅すると共にボランティアでローマ時代の発掘調査に参加。考古学にも興味を持つ。ベルギー国内最高峰であるゲント大学で日本学科を専攻、日本語・歴史・文学・宗教学を学び1998年修士課程修了後、研究と講義を同時並行し2005年博士号取得。その後来日し、立命館大学での研究を2年間経て、2008年法政大学助教、2011年九州大学人文科学研究院哲学部門准教授に。
日本の文化が大きく花開いた古代史が専門です。中でも私の関心は、博士課程の論文対象になった奈良・平安時代の「長岡京」にあります。桓武天皇の勅命により、平城京と平安京の間にたった10年間遷都された幻の都で、現在発掘調査が進み、2つの都と並ぶ大きさで重要な宮殿や都市全体の遺跡が残っていたことがわかっています。発掘された木簡の文字を読み解くことで、当時都で何が起こっていたのかを解明し、論文は後に書籍化しました。
研究で力を入れているのが、「四神相応(しじんそうおう)」です。四神とは大地の四方の方角を司る神(青龍・白虎・朱雀・玄武)のこと。北の神・玄武、東の神・青龍…などと四神の存在に最もふさわしい地勢や地相を選び、昔の人々は宮殿や寺、神社等を建立しました。「四神相応」は東アジア・中華文明圏において発生した、いわば風水文化ですが、中国・韓国・日本ではその定義づけは異なっています。「なぜこの建物がこの場所にあったのか」=「敷地選定」の真意を探るのが私の研究であり、対象は古代・中世日本に留まらず、前近代の東アジア全体に及んでいます。
私が同僚と共に担当する博士・修士課程「広人文学コース」は、前近代の日本に焦点を当てる修士課程/プログラムです。対象学生は日本人と海外からの留学生で会話はすべて英語、奈良・平安時代を中心に歴史、美術史、宗教学、思想史、文学と日本について幅広く学ぶことができます。卒業後も世界各地の有名大学で研究を続けている学生が多いですね。2015年度から日本人も受講が可能になり、国内では九州大学一校での試みで、徐々に注目を集めています。
日本では現在でも歴史のある地では風水の影響を見ることができますし、例えば太宰府天満宮の宮司が祝詞をあげる時には「四神」の名前が出てきます。でも、ちょっと待てよ…四神は中国から来た文化なのに、なぜ日本固有の神社で祀られているの…?日本人にとって文化として身体に入り込んでいることは、外国人の私から見たらWHY?の嵐。日本人でも外国人でも研究対象は同じものですが、外から見ることで発見も多いように思えます。ヨーロッパ文化と比較しつつ、アジアの歴史をかんがみて、幅広い視点でWHY?を追求していけるのが、何よりもの研究の面白みですね。
世界各国の各研究者や関係者たちと連絡を取り合う為、メールは1日に数十件以上。どこにいてもマメにチェックするエレン先生。「私の頭脳でもあり、手足みたいなもの」。
フィールドワークも多く、ノートが雨に濡れたり風で飛んで行ったりしたことも。「軽いし、パソコンにつなげるし、すごい便利!どんな現場でも大丈夫。もう手放せません」と溺愛。
「うちの学部も早く伊都キャンパスに移動してほしい」と切望するエレン先生の自宅は周船寺。往復90分の通勤時間、次男のマクス君をあやす為の絵本やおもちゃは大必須!
Chase your dreams!!
頑張れば何でもできます。日本で、日本の古代史を研究し、人に教える外国人の私が言っているのだから信じてください。何でも自分次第です。一生懸命勉強したこと、頑張った分は必ず自分に返ってきますよ!
取材日(2015.12)