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九州大学の教育における生成AI利活用の注意点~教員向け~(令和5年9月25日)

2023.09.26
お知らせ

九州大学の教育における生成AI利活用の注意点~教員向け~(365 KB)

令和5年9月25日

 九州大学の教育における生成AI利活用の注意点~教員向け~

 九州大学 未来人材育成機構
九州大学の教育における対話型・生成系AIの
利用に関する全学検討ワーキンググループ

 (はじめに)

 本学は、令和5年8月に公表した「九州大学の教育における生成AIの利活用に関する基本姿勢」(以下「生成AIの基本姿勢」という。)において、学生が生成AIのような新たな技術についても、意欲的に学び、その仕組みや成り立ち、特徴や限界を正しく理解するとともに、適切に利活用する資質・能力を備えることができるよう、必要な教育を実施するとしている。
 こうした方向性のもと、本学の教育では生成AIの利活用を基本的に推奨しているが、その一方、生成AIは、その使用方法によっては法令に違反する可能性があるなど、注意を要する点が存在するのも事実である。
 このため、生成AIの基本姿勢も踏まえつつ、本学の教育における、教員を対象とした生成AI利活用の注意点を、以下のとおり示す。学生向けには、別途、注意点をまとめた資料を周知するので、そちらも適宜参照されたい。
 なお、本文書において、「生成AI」とは、「質問・作業指示(プロンプト入力)等に応えて文章・画像等を生成するAI」を指す。令和5年9月現在、ChatGPT、Bing AI、Bard、Stable Diffusion、Midjourneyなどのサービスが提供されている。
 おって、この注意点は令和5年9月現在のものであり、今後、生成AIを取り巻く社会状況の変化や学内での運用状況を踏まえ、改訂する可能性がある。

 (教育面における生成AI利活用のルール・注意点)

1.主に授業の設計・シラバス作成段階で注意すべきこと

 ①生成AI利活用の可否等の検討

 生成AIの利用の可否を決めるにあたっては、生成AIの基本姿勢、学位プログラム等の教育目的、各授業の目的・到達目標と照らし合わせ、生成AIの利活用、もしくは生成AIを使わせないことが、学生の学びや自己成長にどのように寄与するのかを明確にした上で判断を下す。
 その際、授業全体について一律に可否を判断するのではなく、場面に応じて利用の可否を検討する。例えば、ブレインストーミング、論点の洗い出し、自身が作成したプログラミングコードの検証等の場面では、有効な活用が期待できる。

 ②授業内の具体的な使用ルール・ペナルティの明示

 ①で決めた生成AIの利活用の可否は、シラバスに明記するなどして、学生に周知するようにする。利活用を認める場合も、単にその旨をシラバス等に記載するのではなく、具体的にどのような目的・範囲・方法での使用を認めるのかをシラバス等で明示する。
 シラバスで明示する場合は、別紙の類型も適宜参照のこと。
 また、使用ルールに違反した場合の罰則を設ける場合は、学内規定等を参照し、その罰則もシラバス等で明示する。

別紙「シラバスに記載するAI使用ルール」

 ③生成AIサービスのアクセシビリティへの配慮

 授業で生成AIツールを利活用する場合、サービスによっては有償版のみが提供されていることがあるため、学生が無償でアクセスできるツールを選定するよう努める。有償の生成AIツールを利用する場合は、学生の費用負担の軽減に配慮するよう努める。
 また、使用したツールの出力の質や違いが成績に直結しないような成績評価基準を定め、公平性の確保に努める。

2.主に授業の実施段階で注意すべきこと

 ④生成AI利活用にあたっての心構えの醸成

 生成AIの出力したものであっても、それを提出物に用いるか否かを判断するのは自分自身であり、生成AIの出力結果を提出物に用いる判断をするということは、それが自らの手で作成したものでなくとも、その提出物の内容全体に対し、自分自身が一切の責任を負うことになることを十分指導する。
 また、大学における学修は自ら主体的に学ぶことにこそ、その本質・意義があり、生成AIの出力をそのまま用いるなど、自らの手によらずにレポート等の成果物を作成することは、自分自身の学びを深めることにならないことを常に注意喚起する。

 ⑤個人情報・機密情報の保護

 生成AIを授業で利活用する際、個人情報や機密性の高い情報が含まれないよう注意する。学生が入力するデータにも同様に十分に注意を払い、適切な指導を与える。

 ⑥オリジナリティ・著作権の尊重

 学生のレポート作成等において、生成AIの利活用を認める場合、学生に対し、その出力結果をそのまま使用するのではなく、学生自身のオリジナルの考えやアイディアと組み合わせることを奨励するよう、出題方法に工夫を凝らす。
 また、生成AIの出力結果は、その内容・使用方法によっては著作権を侵害する可能性があることを、適時学生に注意喚起する。

 ⑦生成AI利活用の明示

 生成AIの利活用を認める場合、学生がレポート等で生成 AI を利用した場合に、生成AI の出力を引用した箇所や生成 AIサービスの名称、バージョンを明記するよう指導する。授業の内容によっては、生成AIへの指示文(プロンプト)及びそれに対する出力結果(複数のやり取りをしている場合はその一連の過程)の提出を求めることも考えられる。

 ⑧情報の正確性の担保

生成AIの出力に依存せず、出力された情報の正確性や信頼性を確認する責任は利用者にあると認識し、学生にも十分理解させる。
 また、生成AIの出力は必ずしも最新の情報を反映していない場合があることや、社会的・文化的な偏見や差別を含む可能性があることにも留意した上で指導を行う。

3.主に授業課題・試験問題の作成・成績評価の段階で注意すべきこと

 ⑨課題・試験問題の作成、成績評価における工夫

 授業での課題や試験問題は、生成AIが容易に解けるような形式をなるべく避け、批判的思考や受験者個々の解釈を必要とする形にすることを検討する。
 成績評価の際は、レポート等の成果物だけでなく、学生が個々にどれだけ理解しているかを正確に評価できるような手法(例えば、口頭試問)の活用を検討する。

 ⑩AIライティング検出ソフトの誤検出の可能性

 令和5年9月現在、文章を生成AIが作成したのかを確実に検出する術はないとされる。このため、検出ソフトを使用する場合、その結果は参考程度に留める。AIライティング(AIを用いて文章を作成したこと)が疑われる場合は、学生に説明の機会を与え、状況を詳しく調査してから判断を下す。

 (その他)

 生成AI技術の進化や生成AIを取り巻く社会状況、教育における生成AIの効果的な利活用方法について、教員は定期的に研修を受け、最新の知識を取り入れることが望ましい。また、この後の「参考資料」も、適宜参照されたい。

 (参考資料)

九州大学の教育における生成AIの利活用に関する基本姿勢(2023年8月23日)
 https://www.kyushu-u.ac.jp/ja/notices/view/2519

文部科学省事務連絡「大学・高専における生成AIの教学面の取扱いについて(周知)」(2023年7月13日)<
 https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2023/mext_01260.html

文部科学省事務連絡「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」(2023年7月4日)
 https://www.mext.go.jp/a_menu/other/mext_02412.html

個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等について」(2023年6月2日)
 https://www.ppc.go.jp/news/press/2023/230602kouhou/

文化庁・令和5年度著作権セミナー(2023年6月)
 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/seminar/2023/

一般社団法人ディープラーニング協会・生成AIの利用ガイドライン(2023年5月1日)
 https://www.jdla.org/document/

東京都「文章生成AI利活用ガイドライン」の策定について(2023年8月23日)
 https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2023/08/23/14.html

埼玉大学教職員における生成AI利活用ガイドラインの制定について(2023年7月27日)
 https://www.saitama-u.ac.jp/student_archives/2023-0728-1052-9.html

山梨県立大学・生成AIの教学面における取り扱いに関する指針について(通知)(2023年7月24日)
 https://www.yamanashi-ken.ac.jp/news/202307241628/

大阪大学・生成AI教育ガイド
 https://www.tlsc.osaka-u.ac.jp/project/generative_ai/

(注)他大学・他機関の事例については多くのものが公表されているが、ここでは一部のもののみを示している。