九州大学について
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九州大学における社会連携の現状と課題
九州大学の社会連携のあり方について論じる前に、その現状と課題について簡単にふれておこう。
まず、産学共同研究の中核をなしている、民間等との共同研究、受託研究及び奨学寄附金の受入れについては、九州大学ではおおむね順調に増加している。また、寄附講座は3講座を設置し、受託研究員は年間60人程度を受け入れている。
ただ、研究協力のパートナーとなる企業のほとんどが東京や大阪に本社を置くいわゆる「中央大企業」であり、地元企業は電力会社以外みるべきものがない。大学の研究協力のパートナーとなる大企業の研究所の多くが首都圏や関西圏に集中していることを考えれば、こうした傾向は当然のこととみられ、今後もこうした提携は強まるものと思われる。しかし、西日本の基幹大学として地元に本社を置く企業、他地域に本社を置く企業の西日本の研究所や工場との協力を一層強化していくことも重要な課題である。このことは、地元企業への研究・技術協力を通じて、地元企業の研究・技術の発展と蓄積、ひいては地域経済や社会の成長に大学として積極的に寄与することになるからである。
また、民間等との研究協力は理系がほとんどで、人文・社会系はきわめて少ないことも、もう一つの課題である。平成5年度で受託研究が2件、寄附講座が1件(保険学講座、昭和62年度設置、平成4年度更新)があげられるだけである。もっとも、人文・社会系では、個々の研究者のレベルで民間研究団体への参加や各種審議会委員の応嘱等が広く行われており、件数のうえでは理系以上に活発な連携が行われているともいえる。
しかしながら、近年、世界秩序の大きな変動、社会の複雑化、価値観の変化等が進む中で、地球環境、生命倫理、地域研究、政策研究等、人文・社会科学と自然科学との連携を必要とするとともに、行政及び産業界等とも協力して総合的に取り組むべき諸課題が顕在化しており、人文・社会科学に対して新たな研究協力が期待されている。これらの新たな課題に対応するためには、個人的な協力関係のみならず、大学としての総合力を発揮し、中立的・客観的立場からの科学的見識を提起することが不可欠となっている。また、企業や行政、市民との共同研究を通じて、社会に生じている研究課題を発見・認識するとともに、その科学的分析を通して積極的に課題解決にかかわっていくという、大学と社会との相互連携は、社会科学の発展にとっても欠かすことができない作業である。次に、社会との連携のもう一つの大きなテーマである社会人の再教育については、九州大学では、修士課程の社会人特別選抜制度が教育学、法学、経済学、理学、農学、比較社会文化の各研究科で実施され、博士課程では、理学、薬学、工学、農学、総合理工学の各研究科で実施されている。
こうした制度は次第に拡大され、かなりの研究科で実施されてきているが、募集人員や入学者数の実績では、まだ十分に社会の要請に応えているとはおい難い。
企業や市民との研究協力と交流の強化
九州大学の社会との連携についての現況をみるかぎり、基幹大学に寄せられている課題に応え、社会に開かれたセンター・オブ・エクセレンスを構築するためには、以下の方策を推進することにより、企業や市民との研究協力と交流の強化をはかることが適切と考えられる。
■1. 産官学の共同研究等の強化と改善点
1. 産官学の共同研究制度の弾力化と拡大
2. 大学院教育における大学外研究機関との連携
学外との協力は研究に限られるものでなく、大学院教育においても、大学外の適切な研究機関との連携をはかる。とくに、現在設置計画が進められている九州国立博物館との連携を積極的に検討する。
3. 大学全体として組織的に取り組む体制の確立
4. 多様なレベルでの人材交流の拡大
5. 情報の効率的な交換
6. 外部資金の導入拡大等
大学の教育研究の豊富化・活性化をはかるため、産業界を始めとする社会的要請や期待に迅速に対応し、協力・連携を一層適切かつ円滑に進めて、奨学寄附金等外部資金の導入拡大をはかる必要がある。また、地方公共団体との一層の協力・連携を深める必要がある。
■2. 社会人の再教育・生涯学習と改善点
1. 管理・専門・技術に従事する社会人の再教育と改善点
2. 生涯学習への対応と改善点
■3. 顕彰制度の導入
社会的評価の高い人及び九州大学に特段の貢献をした人に、名誉学位・名誉教授(Honorary Professor)の称号を積極的に授与する等の顕彰制度を設ける。
■4. 大学の管理運営への社会の関与
■5. 地域社会、地域研究機関等と連携したオープン・キャンパス
社会に開かれたCOEの大学にふさわしい教育研究設備・環境を地方公共団体、民間団体等の協力も得て、次のような点に配慮して計画する。