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2021年度 秋季入学式 総長告辞

総長式辞・挨拶等

2021年度 秋季入学式 総長告示

本日、九州大学に入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。また、今日まで皆さんを支え励まし、一緒に努力してくださったご家族の皆様や関係者の方々にも、九州大学教職員一同、心よりお祝い申し上げます。
本日ここに、学部生30人、大学院生333人、外国人短期留学プログラム生(JTW、JLCC)28人、合計391人の新入生を迎えることができ、改めて皆さんの入学を心より歓迎いたします。
COVID-19パンデミックのため、保護者の方をはじめ関係者の皆さんをこの場にご招待できず残念に思いますが、ライブ配信をご覧になっている方々とともに、本日の門出をお祝いしたいと思います。 

新入生の皆さん、なぜ九州大学で学ぶことをえらばれたのですか。まず、九州大学の教育と学術の理念をご紹介します。今年創立110周年を迎えました。1911年に設立された九州大学は100年を越える歴史と伝統の中で育まれ培われた叡智により、現在の高い水準の教育と最先端の研究を営んでいます。

本学は「自律的に改革を続け、教育の質を国際的に保証するとともに常に未来の課題に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」という基本理念のもと、アジアをはじめ広く全世界で活躍する人材を輩出し、日本及び世界の発展に貢献することを目的とすることを『教育憲章』において規定しています。その教育は、秀でた人間性、教養豊かな社会性、優れた国際性、創造性の高い専門性を有する人材の育成と、その達成を使命としています。また『学術憲章』では、長い歴史の中で探究され紡ぎ出された知を尊び、次の世代に伝えていくこと、そして、これらをもとに新しい展開、先進的な知的成果を産み出してゆくことを使命とすることを規定しています。創造的かつ独創的な学術研究を重視し、学問の自由及び研究者の自立性を尊重すること、人間的叡智と科学的知識との調和に努めつつ、諸々の知の実践的価値を追求していくこと、科学が自然環境と人類の生存とに重大な影響を与えることを常に顧慮し、自らの良心と良識に従って社会の信頼に応える研究活動の遂行に努めることを求めています。

大学はこのように人類の長い歴史と伝統のなかで育まれ培われた叡智の塊です。この継承されてきた叡智から学び、次の知を創造することが、ここに集う私たちの使命です。今日から皆さんはその一員なのです。

九州大学がこれから目指す姿を少し紹介します。本年、私たちは総合知の概念を作り出す深い議論をしました。この言葉は聞きなれないかと思いますが、その概念は自然科学の知識と人文社会科学の知識を融合させるということです。皆さんの専攻分野は一つの学問分野と思いますが、私たちは教室や研究室において皆さんがその専門領域の視点を学ぶのみならず、他の学問分野の視点を学ぶ経験をしてもらうようにしたいと考えています。私は総合知が私たちの世界が直面している問題を解決することを確信し、皆さんがこの総合知を活用できる先駆者になってもらえると大変嬉しいです。

私たちが教育、研究活動を行うキャンパスは4つあります。伊都キャンパスは東西に約3キロ、南北に約2.5キロ、272haの広さを有し、日々2万人が集う日本最大規模のキャンパスです。「総合科学の中枢・実証実験拠点」として、最新の研究施設・設備が整えられ、およそ350万冊の蔵書を誇る中央図書館はその機能も秀逸です。最先端の医療技術、設備を備えた病院キャンパスは、アジアにおける「生命医療科学拠点」として、芸術工学部のある大橋キャンパスは、アジアにおける「先端デザイン拠点」として、筑紫キャンパスは、物質・環境・エネルギー分野の「先端科学融合拠点」として、それぞれの特色を生かし、互いに連携しながら、共同研究の拡大や研究成果の実用化・事業化など、様々な取り組みを進めています。

COVID-19パンデミックの収束が見えない中、これからの生活に不安を感じている方もおられるかと思います。九州大学では、独自の対策を策定し、教育環境や学生支援を充実させています。緊急授業料免除や支援金をはじめ、留学生への経済支援も整備しています。心理的ケアを含め健康やキャンパスライフに関する相談窓口や支援を行う体制も整えています。引き続き皆さんの安心・安全を確保しながら、質の高い教育研究活動が行えるよう教職員は全力で支援していきます。

本学の卒業生で主幹教授でもあった中村哲先生はその生涯をアフガニスタンのために捧げられました。この8月、アフガニスタンは再び争乱に巻き込まれてしまっていますが、先生が蒔かれた揺るぎない姿勢の種が現地で屈することなく育っていくことを祈らずにはいられません。先生の著書である「天、共にあり」の終章に「人も自然の一部である。それは人間内部にもあって生命の営みを律する厳然たる摂理であり、恵みである。科学や経済、医学や農業、あらゆる人の営みが、自然と人、人と人の和解を探る以外、我々が生き延びる道はないであろう。それがまっとうな文明と信じている。」という言葉があります。困難な環境に遭遇している今の私たちに大切なことを教えてくれます。

現在、九州大学は高い水準の教育と研究を自負していますが、それらが、皆さんの学びに対する好奇心や未来への探究心、発想力を掻き立てることと思います。在学期間、心ゆくまで学問、研究を楽しんでください。

終わりにあたり、あらためて皆さんを歓迎いたします。私たちは、学びの世界を探究する同志となりました。皆さんのたゆまぬ努力による学問の旅は皆さんを明るい未来に導き、私たちはいかなる時もその案内役と支えになります。皆さんの健闘を祈ります。

  

2021年10月1日
九州大学総長
石橋 達朗