About 九州大学について

2022年度 秋季学位記授与式 総長告辞

総長式辞・挨拶等

2022年度(令和4年度)秋季学位記授与式 総長告示

九州大学の学位を授与された皆さん、おめでとうございます。

学士課程54名、修士課程121名、専門職学位課程4名、博士課程165名の合計344名の皆さんに学位記が授与されました。またこの中には224名の留学生が含まれています。本日はCOVID-19パンデミックの渦中ですが、感染防止対策を徹底し、パンデミック以前の形に戻して学位授与式が開催出来ることとなりました。このように学位授与者をはじめ多数の関係者が一堂に会し、皆さんの門出をお祝い出来、大学教職員一同大変嬉しく、また心からお祝い申し上げます。

本日、オー・セジョン学長をはじめ、ソウル大学の皆様をお招きし、オー・セジョン学長にはご祝辞をいただきます。オー・セジョン学長とゲストの皆様、九州大学にようこそお越しくださいました。ありがとうございます。本学は、ソウル大学との関係を、長年育んできましたが、皆さんの来校はこの上ない喜びです。この2大学間の緊密かつ親密なパートナーシップは、大学間の協力と信頼のみならず、二国間の豊かな関係を促進することを確信しています。

COVID-19パンデミックが始まり、およそ3年が経とうとしていますが、今だ、収まる気配はありません。私たちが余儀なくされた行動変容によって制限された事柄は枚挙にいとまがありません。この秋に学位を授与された方々の中には留学生も多く、このキャンパスに来ていただくことからご苦労があったのではないかと思います。そして、本業の学業のみならず、学生生活にも大きく影響があったことは残念なことです。しかし、その制限された環境の中でもたくましく、また頼もしく九州大学での学びを修められた皆さんを私たち教職員も心から敬意を表するとともに、誇りに思います。皆さん一人一人の新しい未来に、本学でこのパンデミック下で培った学びが必ず役立つことを信じ、これからの活躍を楽しみにしています。

今日、世界は気候変動により様々な影響を受け、自然災害の被害が多発しています。また、今般のCOVID―19パンデミック、ロシアのウクライナ侵攻、地域の紛争等、私たちを取り巻く世界は大きく変化しつつあります。科学技術の進歩とグローパルな経済の発展により物質的な豊かさと効率性を享受してきた今、それらの進歩、発展によって被った様々な影響を正し、SDGsやパリ協定で求められている事柄に真剣に向き合い、持続可能な世界と本当の意味での多様な人々の幸せが実現できる世界を築いていかなければなりません。

九州大学は、10年先の本学の姿を見据えた計画が評価され、昨年、文部科学大臣から「指定国立大学法人」の指定を受け、「総合知で社会変革を牽引する大学」を目指し、その方針を示した「九州大学ビジョン2030」を策定しました。大学にあるあらゆる分野の「知識」を総合し、異なった角度からの新しい知見を見出し、新しい考え方を構築し、現在社会に山積している様々な課題を解決していくことが出来ればと考えています。皆さんも自分自身の10年、あるいは20年後の姿を描き、明確な目標を定めて、夢を持って、新たな「自分自身の世界」のスタートを切って下さい。

九州大学は卒業生の皆さんとのつながりを大事にしています。改めて学びたいと思った時、新たな目標に挑戦したいと考えた時には、ぜひ九州大学に戻ってきて下さい。その時は、また一緒に「知の旅」に出発しましょう。また海外にも多くの同窓会が設立されています。これらのネットワークも大いに活用して、大学とのつながりや社会における活動を充実したものにして下さい。

皆さんは、長年アフガニスタンで医療活動を続け、現地の安定のため灌漑用水路建設に尽力された本学OBの中村哲先生を知っていますか。中村哲先生は、残念なことに2019年現地で凶弾に倒れられましたが、先生の確固たる意志と揺るぎない思いを、九州大学でつながる私たちはこれからも大切にしたいと考えています。

多くの難題を抱えた不確定な時代ですが、若い皆さんは、社会、世界の有り様を見極めながら、地球規模での自分の立ち位置と役割を見定めて、自身の未来を切り開いてほしいと考え、中村哲先生の著書「天ともにあり」の終わりにある文章を贈ります。

「人も自然の一部である。それは、人間内部にあって、生命の営みを律する厳然たる摂理であり、恵みである。科学や経済、医学や農業、あらゆる人の営みが、自然と人、人と人との和解を探る以外、我々が生き延びる道はないであろう。それがまっとうな文明と信じている。」

本日はおめでとうございます。

2022年9月22日
九州大学 総長
石橋 達朗