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2022年度 秋季入学式 総長告辞

総長式辞・挨拶等

2022年度(令和4年度)秋季入学式 総長告辞

本日、九州大学に入学された皆さん、ご入学おめでとうございます。また、今日まで皆さんを支え励まし、一緒に努力してくださったご家族の皆様や関係者の方々にも、九州大学教職員一同、心よりお祝い申し上げます。

本日ここに、学部生30人、大学院生344人、外国人短期留学プログラム生(JTW、JLCC)56人、合計430人の新入生を迎えることができ、改めて皆さんの入学を心より歓迎いたします。

本日は、COVID-19パンデミックの渦中ですが、感染防止対策を徹底することなどで、以前のような形での入学式を開催することが出来ました。新入生をはじめこのように多数の関係者が一堂に会し、皆さんの入学をお祝い出来ることを、大学教職員一同大変嬉しく思い、また心よりお祝い申し上げます。

新入生の皆さん、なぜ九州大学で学ぶことをえらばれたのですか。

ここで改めて、九州大学の教育と研究の理念をご紹介します。本学は今年創立111周年を迎え、その歴史と伝統の中で育まれ培われた叡智により、現在の高い水準の教育と最先端の研究を営んでいます。九州大学の教育の基本方針を定めた「九州大学教育憲章」では、秀でた人間性、教養豊かな社会性、優れた国際性、創造性の高い専門性を有する人材の育成と、その達成を使命としています。一方、研究に関する基本方針を定めた「九州大学学術憲章」では、長い歴史の中で探究され紡ぎ出された知を尊び、次の世代に伝えていくこと、そして、科学が自然環境と人類の存在とに重大な影響を与えることをつねに顧慮し、自らの良心と良識とに従って、先達が積み上げてきたものを基盤に新しい展開、先進的な知的成果を産み出してゆくことを使命としています。この継承されてきた叡智から学び、次の時代の新たな知を創造することが、ここに集う私たちの使命です。今日から皆さんはこの使命を共有する本学の一員となったのです。なぜ九州大学で学ぶことを選んだのかを、折に触れて思い出してください。そこに皆さんの学びの原点があります。

昨年、本学は、「指定国立大学法人」の指定を受け、今後10年間の目標を示した「九州大学ビジョン2030」を策定し、「総合知で社会変革を牽引する大学」を目指して新しい取り組みを始めています。九州大学が考える「総合知」とは、自然科学系や人文社会科学系、さらにはデザイン系までの多様で多彩な研究分野を活かし、これらの研究分野を複合、あるいは融合することによって生み出される新たな知識や考え方であり、人類が直面している複雑な社会的課題の解決には「総合知」が必要であると考えています。これから皆さんは、それぞれの将来の目標に向かって学びを深めていくことになりますが、自分の専攻分野だけでなく、他の幅広い学問分野を学ぶことや積極的に多様な人と交流することにもチャレンジしてください。そのチャレンジを通じて得られる多様な視点や考え方が「総合知」を生み出し、新たな発見や価値を見出すことに繋がります。皆さんには、この「総合知」を活用できる先駆者になってもらいたいと思っています。  

皆さんの活動の受け皿となるキャンパスは、ここ伊都キャンパスをはじめ主に4つあります。伊都キャンパスは東西に約3キロ、南北に約2.5キロ、272haの広さを有し、日々2万人が集う日本最大規模のキャンパスです。「総合科学の中枢・実証実験拠点」として、最新の研究施設・設備が整えられ、およそ350万冊の蔵書を誇る中央図書館はその機能も秀逸です。この中央図書館4Fには「中村哲アーカイブス」があります。長年アフガニスタンの医療と人々の暮らしに寄り添ってこられた本学卒業生の中村哲先生は、2019年現地で凶弾にたおれられました。先生の確固たる生き方と揺るぎない信念を学ぶことは、私たちに与えられた大切な使命だと考えています。「中村哲アーカイブス」を一度たずねてみてください。伊都キャンパスのほかに、最先端の医療技術、設備を備えた病院キャンパスは、アジアにおける「生命医療科学拠点」として、芸術工学部のある大橋キャンパスは、アジアにおける「先端デザイン拠点」として、筑紫キャンパスは、物質・環境・エネルギー分野の「先端科学融合拠点」として機能しており、それぞれの特色を生かし、互いに連携しながら、共同研究の拡大や研究成果の実用化・事業化など、様々な取り組みを進めています。

連日報道されるウクライナ問題やエネルギー資源に端を発する経済安全保障問題、地球温暖化に起因する多発する自然災害、そして収束が見えないCOVID-19パンデミックなど、世界は益々混迷を深め、将来予測が難しい不安定な状況にあり、その影響は私たちの身近なところまで及んでいます。祖国や親元を離れ新しい学生生活をはじめる皆さんの中には、これからの自身の生活に不安を感じている方もおられるかと思います。九州大学では、独自の感染症対策、教育環境や学生支援、留学生への経済支援、心理的ケアを含め健康やキャンパスライフに関する相談窓口や支援を行う体制を整えています。皆さんの安全を確保しながら、質の高い教育研究活動が行えるよう教職員は全力で支援していきます。

結びにあたり、あらためて皆さんを歓迎いたします。私たちは、学びの世界を探求する同志となりました。皆さんのたゆまぬ努力による「知の旅」は、皆さんを明るい未来に導き、私たちはいかなる時もその案内役と支えになります。皆さんの健闘を祈ります。

2022年10月3日
九州大学 総長
石橋 達朗