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総長就任挨拶

総長式辞・挨拶等

総長就任挨拶

10月1日より九州大学総長に就任しました。

 九州大学は、1911年の創立以来、我が国の基幹総合大学としてその長い歴史と伝統に培われた教育と研究で、優れた人材の輩出と専門性の高い研究成果を通じて、広く社会に貢献してまいりました。

 2020年は新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、私たちの日常は大きく変わり、社会経済は甚大な被害を受けています。この劇的な社会情勢の変化の中、新型コロナウイルスと共存しながら人間社会の営みも維持していくwith & beyond コロナ時代の持続可能な社会の実現に向け、大学が培ってきた叡智を結集し、新しい時代の困難な課題を解き、形にして活用していくことが、大学に課せられた重要な役割だと考えています。

 くしくも9月29日、新型コロナウイルス感染症の蔓延の影響で中止になった入学式の代わりとして、2020年度の新入生歓迎式が感染防止対策を徹底して行われました。例年では考えられない事態の中、6か月余り大学生活を実感できなかった学生たちの嬉々とした表情をみて、彼らが、自分自身が学ぶと決めた学問を主体的、体系的にやり遂げて、自分の考えを確立できる人材になってほしいと心から思い、大学はそれを全力で支えなければと考えました。

 その一つとして、九州大学が2018年から始めた高大接続から学部教育・大学院教育、研究者育成を一貫性のある取り組みとした持続的人材育成プラン「九州大学ルネッサンスプロジェクト」を着実に実施していくことで、優秀な学生と卓越した研究力をもつ研究者を育てていこうと考えています。また新しい世界を担う人材は専門性のみならず専門外の広い知識、良識を兼ね備えていなければなりません。文理融合を先に進めたSTEAM教育の充実を図り、人格を兼ね備えた社会人の育成に取り組んでいます。

 研究者の育成には自由闊達に新しい知を発見あるいは創造できる安定した土壌が必須と考え、基礎・応用分野を問わず熱意を持った研究者が、充実した環境の中で集中して研究が行える仕組みの構築、また有望なシーズ研究の発掘や、産学官共創、大学発ベンチャーの取組の充実を図ります。このような大学を目指すためには強い財政基盤が必要と考えています。

 大学の使命には教育、研究、社会貢献があります。最先端の研究成果や特徴ある研究成果を社会に還元することによって、社会を牽引する役割が期待されています。九州大学では伊都(総合科学の中枢・実証実験拠点)、筑紫(先端科学融合拠点)、大橋(先端デザイン拠点)、病院(生命医療科学拠点)の各キャンパスが、各々の立地や形態と特徴を活かし、また実空間のみならずサイバー空間での様々なネットワークを活用・展開しながら、共同研究の拡大や実用化・事業化などの社会実装に向けた取り組みを一層進めます。特に自治体、企業、そして地域の方々と一体となって、福岡の地に国際学術研究都市圏を形成する取組みをしっかりと推進してまいります。近い将来、それぞれのキャンパス周辺地域に、研究機関、自治体や企業などの活動拠点が集まり、新たな産業創出が促進され、大学と周辺地域が活気ある街へと変わる原動力となるよう、力を尽くしたいと考えています。

 九州大学は来年110周年を迎えますが、次の100年も歴史と伝統に培われた叡智を継承し、次の世代に伝えていく使命があります。更に自律的な改革を継続することにより、創造的な新しい知を導き出す研究教育拠点としての役割を遂行するべく、学生、教職員と共に取り組む所存です。

 皆様のご理解とご支援をお願い申し上げ、総長就任のご挨拶とさせていただきます。

 

2020年10月1日 

第24代九州大学総長 石橋 達朗