About 九州大学について

総長就任挨拶(2008年10月2日)

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これからの九州大学 -就任挨拶-(2008年10月2日)

 九州大学は、教育憲章や学術憲章に示すとおり、教育においては、世界の人々から支持される高等教育を推進し、広く世界において指導的な役割を果たし活躍する人材を輩出し、世界の発展に貢献することを目指しています。また、研究においては、人類が長きにわたって遂行してきた真理探求とそこに結実した人間的叡知を尊び、これを将来に伝えてゆくとともに、諸々の学問における伝統を基盤として新しい展望を開き、世界に誇り得る先進的な知的成果を産み出してゆくことを自らの使命として定めています。そのためには、自由闊達な発想と洞察でもって、常に高みを目指し、新しい地平を切り開いてゆく絶えざる挑戦が求められます。

 九州大学は、こうした世界第一級の教育・研究と診療活動を展開し、アジアに開かれた知の世界的拠点大学として、多くの留学生を引き寄せ、また、西日本を代表する基幹総合大学として、都市と共に栄え、市民の誇りと頼りになる大学として発展し続けることが期待され、宿命づけられています。

 九州大学は、平成7年に独自に「九州大学の改革の大綱案」を策定し、学府・研究院制度を始めとする構造的な改革に取り組んできました。平成16年度の法人化以降は、明確な目標・計画を掲げ、総長のリーダーシップの下で、様々な大事業や大改革を進めてきました。これからは、こうした改革の方向を継承し、さらに部局等の現場からの考えや力が十分に反映され、発揮できるような仕組みをつくり、ボトムアップとトップダウンの繰り返しによって大学を遍く活性化することが重要だと考えます。

 九州大学は、すべての学生・教職員が自信と誇りをもって勉学に勤しみ、職務に精励できるような環境を整備する必要があります。そのもとで、学生・教職員がより高みを目指して努力し、立派に育ち巣立った学生達がより優秀な学生を引き寄せ、高度な研究や診療を展開して、優れた業績をあげた教職員がより優秀な教職員を引き寄せる、といった正のスパイラルに乗せることによって、大学は活性化し、持続的に発展するものと考えます。

 九州大学は、平成23年(2011年)に総合大学として創立百周年を迎えます。その百年の伝統を基盤とし、知の新世紀を拓くために、九州大学はさらに飛躍することが期待されています。現在推進中の百周年記念事業を成功させ、これから百年後の九州大学像を明確に描き、そこへ向かってゆく道筋を定め、必要な事業を着実に推進しなければなりません。そのためにも伊都新キャンパスへの統合移転は急がれます。この移転事業が、関係の方々のご理解とご支援を得て早期に完了できるよう、全学をあげて最大限の努力をいたします。

 以上のことを推進するために、以下の5つの具体的な活動指針を定め、それに基づいて活動します。

  1. 自由闊達な研究活動を支援します。
  2. 気付かせる教育を目指します。
  3. 頼りにされる社会連携を実行します。
  4. 記憶に残る国際連携を実現させます。
  5. 元気の出る大学の運営を心がけます。

活動指針1 自由闊達な研究活動の支援

 研究者の知的好奇心・探究心と自由な発想を源泉とした真理の探究と各方面へ「伝わる研究」を目指し、かつ、世界のトップレベルを達成し維持するため、公正で明確な評価・基準に基づき、自ら頭角を現してきた研究者への制度的・財政的支援を行います。また、「留学生30万人計画」とも呼応して、若い研究者の長期の海外研究を推奨し、協定締結大学との間で学生や教職員の相互派遣・交換を推進します。

 附置研究所や情報基盤研究開発センター等を共同利用・共同研究施設として位置付け、高度な研究の世界的拠点として一層の活性化を推進します。また、生命科学と基礎医学の拠点形成へ向けて強力に支援します。さらに、総合理工学研究院や比較社会文化研究院、言語文化研究院等、学部との関係の薄い部局における教育研究体制の全学的な観点からの支援・強化や、人文社会科学系の研究プロジェクトの支援・強化を図ります。加えて、九州芸術工科大学との統合の効果を最大限に引き出し、デザイン・アート分野の充実を図ります。

活動指針2 気付かせる教育

 学生に学習の動機を明確に伝え、新しいやりがいのある課題を設定して取り組ませ、問題解決の経験と喜びを通じて、自らの潜在能力の高さを「気付かせる教育」を実現させます。このような教育を全学教育、学部専攻教育、大学院教育のすべてにおいて実現するため、学生が自主的に意欲的に取り組むことのできるような学習・教育環境を整備します。例えば、図書館の入館者数を6年後には、現在の6倍にする等の具体的な目標を設定します。また、授業の教材の開発について、「教材開発支援センター(仮称)」を創設します。さらに、農場や演習林、牧場、臨海実験所等の農学・理学の施設を全学の教育の観点からも整備・活用し、こうしたフィールドを持つ総合大学の利点を活かします。

 教育の国際化を推進し、「グローバル30(国際拠点大学30)」、「留学生30万人計画」に対応して、外国人教員の採用、留学生の受け入れを拡大します。

活動指針3 頼りにされる社会連携

 「貢献」でなく「連携」という言葉を使います。地域や国際社会において対等な立場で協力関係を構築し、維持することが重要だと考えるからです。

 まず、社会が直面している課題に、大学の知を結集して真正面から取り組み、これに直接応えます。また、市民に対するアウトリーチ活動や小中高校生を対象にした各種の模擬授業等の活動を活発化します。伊都新キャンパス周辺に研究開発機能をもつ企業等の機関を数多く誘致し、留学生の地元企業への就職を支援します。さらに、既に国内トップクラスにある産官学連携をさらに進め、世界をターゲットとした技術移転・共同研究・受託研究を実施します。

活動指針4 記憶に残る国際連携

 アジア学長会議等の国際交流や大学間・部局間の国際交流協定締結等を積極的に継承し推進します。また、諸外国の一級の研究者との間で「記憶に残る国際連携」を目指し、国際的な九州大学ブランドの確立へ繋げて行きます。また、知的財産の国際展開を進めます。さらに、留学生や外国人研究者、国内の研究者の長期滞在のための良質な宿泊施設を整備するほか、彼らの受入れに係るすべての手続き等を一元的に支援・代行する「外国人研究者等支援センター(仮称)」を開設します。こうして、「留学生30万人計画」には、国際的な研究展開と大学院教育とも連動させた形で、必要な人的処置も含めて積極的に対応します。

活動指針5 元気の出る大学の運営

 大学のすべての構成員が自信と誇りを持ち、元気の出る大学の運営を目指します。

 総合大学として、人文社会科学や数理学、理学、生命科学等の基礎科学の振興と発展を基軸におき、学生や教員が学習・教育・研究に没頭できるよう環境・財政面で特別な配慮を行います。また、国内で最も充実している電子ジャーナルの維持に努め、人文社会科学の研究のための大型図書資料の充実やライブラリ・サイエンティストの顕在化など、図書館側からも強力にサポートします。

 大学運営面では、「役員部局長会議(仮称)」を創設して、部局と双方向性のある実質的な議論の場を確保します。また、部局構成員との直接対話を行う「部局ミーティング(仮称)」を開きます。さらに、事務職員が企画や調整、国際対応等、新たな業務に意欲的に取り組めるように工夫します。100周年記念事業は、最重要課題のひとつとして、積極的に取り組みます。

 伊都新キャンパスの整備については、様々な課題に対し積極的に取り組みます。また、移転まで相当の期間がある箱崎・貝塚地区の施設の保全整備については、学生・教職員のことを第一に考えて対応します。病院地区や大橋地区、筑紫地区については、「都市と大学」という視点に立ってフレームワークを策定し整備を推進します。さらに、ロースクールやビジネススクールの移転については、学生の便宜と教育効果を最優先して最善の方策を考え実施します。

平成20年10月2日
九州大学総長
有川 節夫