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梶山総長 年頭の挨拶(2007年1月1日)

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梶山総長 年頭の挨拶(2007年1月1日)

 新年あけましておめでとうございます。

 平成16年4月に国立大学法人九州大学が誕生し、3年が過ぎようとしています。法人化の趣旨は「個性輝く大学創り」と「財務・経営の効率化」です。法人化は、私達、大学構成員が、「社会に対してどんな貢献ができるのか」を真剣に考える契機になったと確信しています。「持続的に変革し、飛躍する九州大学」を目標に、大学構成員がベクトルを同じ方向に向けて行動する体制が、徐々に整いつつあると信じています。

 平成19年度は、20年度に行なわれる中期目標・中期計画の暫定評価の取りまとめの年です。平成16、17年度の年度計画の業務実績に関する評価で受けたコメントで、「特筆すべき」と評価された事項は一層進展させ、「達成不十分」と評価された事項、特に教育分野は全て目標達成できるよう、各担当理事の使命感が不可欠となります。第1期の中期目標・中期計画の半分が過ぎた平成19年度には、もう一度法人化の趣旨と大学の役割の原点に戻って、九州大学の活動力とブランド力の和である大学力を明確な形で社会に示す必要があります。

 平成19年度の九州大学の構造改革目標は、「教育改革」と「部局の活性化」です。これらの課題を解決しない限り、九州大学の使命に対する社会からの期待と要求に応えられませんし、九州大学の存在感を国際的に示すことはできません。

 平成18年は、いじめとそれによる年少者の自殺、親の虐待による乳幼児の死亡、高等学校に於ける未履修問題など、教育に直接・間接的に関わる問題が凝縮して現われた年でした。家庭に於ける躾、学校に於ける集団行動の訓練、社会に於ける規則の遵守や倫理観など、人として基本的なことがらの欠如に因するこれらの問題は、戦後教育にその責任を押し付けるだけでは解決しません。国も、教育再生会議で教育問題の原点に戻って議論を始めています。今年生まれた人達が20才になる頃には日本が真に教育力のある国家となるよう、大学人である私達も真剣に考える必要があります。九州大学においても教育改革の進み方は非常に遅く、授業内容とその理解のさせ方等、教育現場での学生の不満が解決されていないことは明らかです。今年は、執行部と部局長会議のメンバーで、「何が九州大学に於ける教育の問題点か」をじっくり議論し、学生の要望に応えていきます。

 生命力、免疫力、精神力、体力、学力等「○○力」という言葉が従来から使われてきました。平成18年には、人間力、文化力、漢字力、教育力等新しい言葉が頻繁に使われるようになりました。人間としての生き方や教育の在り方について真剣に議論して日本社会を再生させるべき状況に、我々が追い詰められているからではないでしょうか。高等教育に責任を持つ九州大学としても、現在の社会現象を把握・理解し、日本社会を良い方向へ向ける教育とは何かを議論・検討し、対応していく責務があります。

 社会の変化と教育・研究の将来動向を見据えて、大学の組織・運営も変化する必要があります。九州大学の組織・構造改革には、各部局の持続的な変革と飛躍は前提条件です。教育・研究に対する社会的要求に応え、イノベーション社会の構築に貢献し、さらに部局の将来構想を実現するためにも、各部局の教育・研究組織の再編は社会的要請事項なのです。平成19年度には、各部局長の財務・人事に関する部局運営・経営の自由度を増し、組織編成・教員配置・財務運営が三位一体となって、将来構想を実現できる制度改革を進めたいと考えています。部局長の財務・人事の裁量と部局運営・経営の自由度の増加には、各部局の将来構想の着実な実行と部局長のリーダーシップが不可欠です。執行部としても、あるべき部局の姿が実現できるよう、本部事務局と部局事務部との連携強化など、各部局の改革を支援できる体制を作ります。

 平成19年も、昨年までと同様、部局構成員及び学生との総長懇談会を行ない、教育・研究現場の実情把握と環境の改善に努めます。教職員の皆さんには、九州大学が社会から信頼され、国際的に評価される大学作りに直接参加されるようお願いをして、新春の挨拶といたします。

平成19年1月1日
九州大学総長 梶山 千里