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平成26年度 大学院学位記授与式(2015年3月25日)

総長式辞・挨拶等

平成26年度 九州大学大学院学位記授与式告辞(2015年3月25日)

本日学位記を授与された博士373名、修士1,783名、そして専門職大学院 131名、合計2,287名(男性1408名、女性579名、留学生300名)の皆さん、本当におめでとうございます。九州大学教職員を代表して皆さんの修了を心よりお祝いいたします。今日まで長きにわたって皆さんの勉学や研究を指導し、また様々な面で支えてくださった先生がた、研究室などご関係の皆様、そして、ご家族の皆様に対しまして御礼とお慶びを申し上げます。

ところで、学位記授与式は、昨年よりこの椎木講堂で行われるようになり、今回で2回目となります。この椎木講堂は九州大学の創立百周年記念事業の趣旨にご賛同を頂き、世界に冠たる最高水準の教育研究拠点を目指す九州大学の理念に共感し、人類社会の持続的発展に貢献する優れた人材が多く育っていくことを願って、椎木正和様のご好意によりできたものであります。日本の大学で最高に立派な講堂を寄贈して下さいました椎木正和様に、この場を借りて改めて深甚なる謝意を表したいと思います。

この伊都キャンパスは、平成17年秋に工学系の第一陣が移転して開校して以来、10年が経過しました。伊都キャンパスの整備が着実に進んでおります。 伊都キャンパスは第1ステージから、第2ステージを経て現在第3ステージであります。本年秋には理学系の建物が完成し、理学部等が移転してきます。人文社会系と農学系の移転は4年後の平成30年度までには完了する予定です。そうすると伊都キャンパスはさらに大きく発展します。 その他の病院地区、大橋地区、筑紫地区キャンパスの整備もなされています。一方、箱崎地区は売却に向けて順次建物の解体が行われています。

ところで皆さんが入学してから、国内外において、実に様々なことがありました。すこし、振り返ってみたいと思います。

国際的には6年前の2009年にはオバマ氏がアメリカ大統領に就任、新型インフルエンザが流行、2010年にはアラブ諸国で反政府デモ、ギリシャ財政危機、2011年にはニュージーランド地震、2012年にはシリアの内戦泥沼化、2013年フィリピン台風被害、昨年の2014年にはエボラ出血熱の大流行、そしてISIL(イスラム国)の台頭などがありました。これらの出来事は現在まで引き続いております。

国内では、何といっても、一番大きな出来事は、4年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。この地震とそれに伴って起こった津波によって1万6,000人近い貴い命が失われ、いまなお、2,586人の行方が分からず、約21万人が避難や転居を余儀なくされています。

また、福島第一原子力発電所事故の終息にはまだまだ長い年月がかかります。福島県では今も約12万人が県内外に避難しています。これらの方々に改めて衷心より哀悼の意とお見舞いを申し上げます。

明るい話題としては2020年の東京オリンピック開催が決定したこと、昨年は日本人3名がノーベル物理学賞を受賞したことなどがあります。 学内では昨年の主な出来事として本学出身の若田光一さんが日本人初の国際宇宙ステーション船長を務め、本学を訪問したこと、11月には國武豊喜名誉教授が文化勲章を受章したことなどがあげられます。

そして本日、九州大学公用車として燃料電池自動車「MIRAI」(ミライ)が納車され、この学位記授与式の後、そのゴールデンキーの受け渡しのセレモニーが行われます。「MIRAI」は椎木講堂の前に展示されています。今日はまさに水素社会の出発日であり、その記念すべき日に学位記授与式を迎えられたことは大変喜ばしく思います。この伊都キャンパスで未来のエネルギー社会の具現化に向けて、燃料電池自動車と水素ステーションや大型燃料電池を活用した社会実証実験を行い、自然エネルギーを利活用した将来社会の検討など、未来のエネルギー社会の姿を世界に発信していくことが可能となります。九州大学はエネルギー分野において世界の研究をリードしています。

ところで、皆さんは大学院での研究を通してどのようなことを学ばれたでしょうか。研究において大事なことは情報化の中で氾濫している情報に惑わされないことが大事です。まずは自分のやりたいことを見つけることです。深く掘り下げる基礎研究が得意な人、疫学研究が好きな人、新しい物作りが好きな人、などさまざまです。全体の中で自分の研究や仕事の位置づけを把握することは重要です。 新しい発見したりして感動を覚える経験をされた人もおられると思います。皆さんは大学院生活を通じて専門的知識の獲得だけでなく、論理的思考力、分析力、統合力など培われていると思います。どの道に進まれようともこの間の研究生活は皆さんの今後にとってきっと役立つことになると確信しています。そして一流の研究を目指して頑張っていただくことを願っています。

私は研究生活で“主観を磨き、客観的に判断する座標軸を持つ”という言葉を教えてもらい、その後の研究や仕事に役立っています。

ところで、現在、急速にグローバル化はすすんでいます。それへの対応として国は、産業界や一般社会からの要請もあり、様々な予算措置を伴うプログラムやプロジェクトを競争的な環境のもとで用意しています。プログラムの多くは、国際化を推進し、グローバル社会の中で活躍するリーダー養成を目的とするものです。九州大学は、現在これらのプログラムやプロジェクトを獲得して展開しています。それらについてご紹介します。

「グローバル人材育成推進事業」は、最近の日本における若い世代の「内向き志向」を克服し、国際的な産業競争力の向上や国と国との絆の強化の基盤として、グローバルな舞台に積極的に挑戦し活躍できる人材の育成を図るため、大学教育のグローバル化を推進しようとするものです。

「大学の世界展開力強化事業」は、世界に雄飛する人材の育成、教育の国際的な質保証、日本人学生の海外留学と外国人学生の戦略的受入、アジア・米国等の大学との協働教育等を行う事業です。本学では、エネルギー環境や地球資源、法学に関する事業が採択され、アジア諸国との協働教育を展開しています。その効果もあり、最近は外国留学をする人が増えてきています。

「博士課程教育リーディングプログラム」は、優秀な学生を俯瞰力と独創力を備え、広く社会にわたりグローバルに活躍するリーダーへと導くため、 産学官の参画を得ながら、専門分野の枠を越えて博士課程前期・後期一貫した質の保証された学位プログラムです。本学では、全学府が参加できる「持続可能な社会を拓く決断科学大学院プログラム」、「分子システムデバイス」、「グリーンアジア国際戦略」の文部科学省の3事業に加えて、本学独自のリーディングプログラムとして、「フューチャーアジア創生」、「キーテクノロジーを牽引する数学博士養成」「新世代コホート」に関する3つの博士課程教育が行なわれています。 これらのプログラムを修了された方もおられると思います。

九州大学の外国人留学生は、この5年間に倍増し、現在二千百人余りです。本学の場合、留学生の多くは大学院で学んでいます。秋季入学の留学生も増えているので、数年前から秋季学位記授与式に加えて、秋季入学式を挙行しています。留学生の皆さんは、修了後も出身の研究室の先生がたや仲間との共同研究や共同教育プログラム、あるいは同窓会活動等を通じて、母国と九州大学との関係を強固なものとして維持し、架け橋となって頂くことを願っております。

皆さんは今後、更なる高みを目指して、次のステージに進むことになります。研究者として大学に残る人、会社や自治体への就職、留学などさまざまであると思います。

最後に、皆さんに3つのCを贈りたいと思います。Challenge, Change, Courageです。新しい分野に勇気を持って挑戦し、革新的技術や行動で世の中を変えていくことです。

皆さんが九州大学を修了したことに誇りを持って、学んだことを生かし、夢を持って今後の未来を切り開いて、大きく飛躍し、グローバル社会を力強く牽引するリーダーとして大成されることを期待して告辞といたします。

平成27年3月25日
九州大学総長 久保千春