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久保総長 年頭の挨拶(2016年1月1日)

総長式辞・挨拶等

年頭の挨拶「躍動の第三期中期目標・計画に向けて」 (2016年1月1日)

九州大学総長   久 保 千 春

新年明けましておめでとうございます。
学生、教職員ならびに日頃から九州大学をご支援いただいている皆様におかれましては、健やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。

さて、2014年10月に総長に就任し1年3ヶ月が経過しました。この間、多くの行政、政財界、地域の皆様と接する機会がございました。社会から大学に寄せられる期待の大きさを強く感じているところです。

 九州大学では、創立百年を機に「躍進百大」というスローガンを掲げ、すべての分野において世界のトップ百大学に躍進することを目標としています。昨年はその実現に向けた第一歩として、「九州大学アクションプラン2015」を策定しました。
 2016年はこのアクションプランに基づく取組を着実に進め、九州大学をダイナミックに前進させる1年にしたいと思います。

<アクションプラン(骨子)>

  1. 世界最高水準の研究とイノベーション創出
  2. グローバル人材の育成
  3. 先端医療による地域と国際社会への貢献
  4. 学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパスづくり
  5. 組織改革
  6. 社会と共に発展する大学

 昨年は、本年4月から始まる第三期中期目標・中期計画期間を前に、行政や政財界の多方面から高等教育に対してさまざまな提言がなされました。なかでも、昨年6月の文部科学大臣からの通知、「国立大学法人等の組織及び業務全般の見直しについて」は各方面で大きな波紋を呼び、大学における人文社会科学系のあり方について改めて考える機会となりました。
 現在、私たちは、地球温暖化や環境汚染、食料・水問題、緊迫した国際情勢など、地球規模の課題に直面しています。また、我が国特有のものとして、世界に類を見ない少子高齢化、厳しい財政状況などの課題に直面しています。これらの課題に立ち向かうには、文理の枠組みを超えた総合的な知の力が必要とされます。九州大学は基幹総合大学としての強みを活かし、先端・融合研究や独創的・学際的な研究を推進することにより、こうした課題に挑戦するための知見を提供していく必要があります。また、人文社会科学は人類の価値観の在り方について洞察するための深い思索を可能にし、豊かな文化の土壌を育みます。
 このような観点から、九州大学はアクションプランの重点取組として「人文社会科学分野等の再編成・機能強化」を推進します。
 また、現代は知識基盤社会であり、グローバル競争の中で繁栄を維持していくためには大学がイノベーション創出の拠点にならなければなりません。九州大学は知の世界的拠点としてイノベーション創出に取り組み、アジアにおけるイノベーションの源泉“Innovation Powerhouse in Asia"となるよう、本学の強みである研究分野を強化し、社会に貢献していきます。その具体策として、エネルギー関連分野のネットワーク化を手始めに、研究教育機構(仮称)を設置してまいります。一方で、学術研究はすぐには役に立たないような分野であっても長い地道な研究活動を通じて予想外の成果をもたらすことも少なくありません。また、基礎科学の成果が人類の精神生活を豊かにしてきた側面も忘れてはなりません。九州大学は基幹総合大学としての強みを発揮し、イノベーションの創出、その社会実装とともに着実な基礎科学の推進にも努めてまいります。

 教育面については、グローバル人材育成に努めてまいります。その重要な役割を担う新学部の設置に向けて、より具体的な検討を進めます。併せて、準備状況を国の内外を問わず高校関係者など外に向けて発信していきます。本年4月から始まる第五期科学技術基本計画においては、次世代を担う人材育成と多様な人材の活躍促進が柱になっています。人材の多様性は学術研究の多様性を担保し、イノベーション創出の原動力となります。国籍、性別の壁にとらわれることなく、すべての能力を最大限発揮し活躍できる環境づくりを促進していきます。外国人研究者、女性研究者の割合を拡大するため一層努力してまいります。

 また、人材の多様性の観点では、入学する学生について様々な能力を評価するため、新しい時代における高大接続システムの改革を進めてまいります。

 キャンパスの移転については最終段階の第3ステージを迎えています。昨年は伊都キャンパスに理学系の総合研究棟が竣工しました。さらに2018年度の移転完了に向け、12月には農学系研究棟の建設が起工したほか、総合図書館の建設も着々と進んでいます。この2月からは人文社会科学系研究棟の建設に着工します。また、最新の情報通信研究設備を備えた「情報基盤研究開発センター」の新棟は、本年中に竣工する予定です。病院、筑紫、大橋の各キャンパスの整備も引き続き進めてまいります。
 一方で、今後の移転スケジュールを着実に進めていくためにも、箱崎キャンパスの跡地計画に急ピッチで取り組み、速やかに用地を売却していく必要があります。

 昨年、さまざまな方とお話しする中で、九州大学としての発信力を強化する必要があるというご意見を度々いただきました。九州大学には世界をリードする卓越した研究成果があります。優れた教育システムがあり優秀な学生が育っています。それらを学外へ発信していくことと同時に学内構成員にも周知していくことが重要です。執行部として戦略的な情報発信体制づくりに取り組みます。構成員一人ひとりも九州大学を代表する気概を持って、発信力を高めていただきたいと思っています。

 “九大情報"を発信するため、九大ホームページはより魅力あるものに生まれ変わります。情報発信機能を強化し、国内外の同窓生を含め九州大学サポーターの方々に一層大学の活動に参加してもらうための仕組みづくりをします。学術研究の国際的な展開、海外におけるプレゼンスの向上、優秀な留学生獲得のためにも英語による情報発信機能を早急に充実させていきます。

 研究・教育を推進していくためには財政基盤の強化が重要です。大学自らも財源の確保に努力しなければなりません。競争的資金の獲得、共同研究、特許や知的財産の出願数の増加および寄附文化の醸成などによって多様な財政確保に努めることが必要です。

 このような取組を通じ九州大学が発展していくとともに、その成果を地域に還元していくことが重要です。国を挙げての「地方創生」の旗の下、地元自治体との連携は大学の活性化にとって益々重要になります。九州大学のある福岡市は、全国の政令市中、人口増加率、人口増加数、若者(15~29歳)の人口比率において日本一であり、元気ある都市です。また、今後成長率において世界をリードしていくアジアの玄関口でもあります。福岡市の「創業特区」も活用し、大学のシーズをベンチャー創業につなげるベンチャー支援体制づくりを進めます。伊都キャンパスに隣接する糸島市との連携をさらに進め、大学の資源と地域の資源を相互に利活用しながらより強固な関係を築いていきます。

 昨年は課外活動における学生の活躍を目にする機会が多くありました。学生の活躍は大学に活力を与えます。大学としても、学生が持てる力を十分に発揮し活躍するための環境整備をさらに進めます。学生諸君のより一層の活躍を期待します。

 本年は、第三期中期目標・中期計画がスタートする年であり、今後の大学のあり方を左右する非常に重要な一年になります。「躍進百大」実現のためには、教職員、学生一人ひとりが生き生きと活躍することが不可欠です。

 九州大学の学生、教職員一人ひとりにとって大きな飛躍の年となることを祈念して新年の挨拶といたします。