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平成28年度 学部入学式告辞(2016年4月7日)

平成28年度 九州大学学部入学式告辞(2016年4月7日)

平成28年4月7日 椎木講堂

新入生の皆さん、入学おめでとうございます。長い受験生活を経て見事に九州大学に入学された皆さんに、九州大学教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。また、今日まで長きにわたって皆さんの勉学と生活を支え、励ましてこられたご家族をはじめ関係者の皆様にも心からお慶び申し上げます。

今年度の学部入学生の数は2,653名、男子1,856名、女子797名で女子が30.0%です。外国人留学生は36名です。

皆さんは受験勉強から開放されて入学後のさまざまな可能性に心を躍らせて今日を迎えていることと思います。大学の授業、クラブ活動、ボランティア活動、友達との交流、趣味などいろいろあると思います。一方、家族と離れて一人での新しい生活に不安を覚えている人も居るかもしれません。

ところで、皆さんがいるこの椎木講堂ですが、一昨年3月に完成し、ここで入学式が行われるようになりました。この素晴らしい椎木講堂は九州大学の創立百周年記念事業にご賛同を頂き、世界で活躍し、社会に役立つ人材育成を願って、椎木正和様のご好意により、できたものであります。このホールは約3,000名を収容でき、この講堂で入学式を挙行できますことを大変喜ばしく思います。

さて、皆さんがこれから過ごす九州大学の歴史と現状についてご紹介したいと思います。1903年(明治36年)今から113年前に京都帝国大学福岡医科大学が設置されました。その8年後の1911年(明治44年)に工科大学が設置され、医科大学と工科大学が一緒になり、九州帝国大学の歩みがスタートしました。4番目にできた国立大学です。

以来、学部等の増設、2003年(平成15年)九州芸術工科大学との統合、2004年(平成16年)大学法人化などを経て現在に至っています。

九州大学は現在、11の学部と21世紀プログラム、16の大学院研究院、18の大学院学府、4つの専門職大学院、高等研究院、基幹教育院、5つの研究所及び最先端の医療を提供する国内最大級の大学病院、420万冊余りの蔵書を誇る図書館などを擁する我が国屈指の基幹総合大学として発展を続けています。

現在の学生数は、学部学生11,765名、大学院生6,910名合計18,675名、教職員8,025名、総合計26,700名の大きな組織です。土地面積は、6つのキャンパス(箱崎キャンパス、病院キャンパス、筑紫キャンパス、大橋キャンパスそして伊都キャンパス)、附属農場、4つの演習林などを合わせて合計76km2であり、日本で3番目に広い敷地を持つ大学です。

次にこの伊都キャンパスを紹介します。皆さん全員が最初の1年間をこの伊都キャンパスで過ごすわけですが、伊都キャンパスは豊かな自然環境に恵まれた丘陵地であります。東西3km,南北2.5kmの広大な敷地で、伊都の国としての歴史ある場所です。伊都キャンパスの建設にあたっては自然環境に配慮し、生物多様性の保全に努め、古墳などの貴重な文化財の保存に可能な限りの工夫と努力がされてきています。

この伊都キャンパスは、平成17年秋に工学系の第一陣が箱崎から移転して開校以来、11年が経過しました。伊都キャンパスの整備は着実に進んでおります。第1ステージから、第2ステージを経て現在最終の第3ステージであります。

最近出来た建物として椎木講堂、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所、基幹教育院棟、昨年10月には理学系総合研究棟などができました。

九大ゲートブリッジ、寄宿舎のドミトリーⅢ、留学生と日本人の混住する伊都協奏館なども出来ています。学生の寄宿舎としては合計1,000名くらい入れるようになりました。

今後の整備予定としては、農学系総合研究棟があります。昨年12月1日に安全祈願祭を行い、平成30年1月の完成に向けて建設が進んでおります。

また、椎木講堂隣の現在建設中の附属図書館は本年10月に一部開館します。人文社会科学系の総合教育研究棟は今年の1月29日に安全祈願祭を行い、2年後の平成30年2月には完成します。そうなると素晴らしい充実したキャンパスになります。

航空から見た伊都キャンパスの写真です。工学系、基幹教育院、理学系建物は完成しています。3年後には農学系、人文社会科学系が移転し、多くの皆さんはこの伊都キャンパスで生活することになります。大学として福岡市や糸島市と協力し、交通や生活環境を整備していくことにしています。

九州大学のその他のキャンパスとして病院地区、大橋地区、筑紫地区のキャンパスがあります。これらのキャンパスもさらに整備し、充実していきたいと思います。箱崎キャンパスは現在跡地利用計画や売却に向けて福岡市や地域住民との協議を行っています。専門課程では、これらのキャンパスに行かれる人もいると思います。

次に九州大学の基本理念について述べたいと思います。2011年の創立百周年を記念して、新たな百年に向けて、「躍進百大」、すなわち、すべての分野において世界のトップ百大学に躍進する、というスローガンを掲げ、基本理念は「自律的に改革を続け、教育の質を国際的に保証するとともに、常に未来の課題に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」としています。

そして昨年10月には今後の6年間の大学の活動指針となる「アクションプラン2015」を策定しました。6つの項目があります。

 Ⅰ.世界最高水準の研究とイノベーション創出

 Ⅱ.グローバル人材の育成

 Ⅲ.先端医療による地域と国際社会への貢献

 Ⅳ.学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパスづくり

 Ⅴ.組織改革

 Ⅵ.社会と共に発展する大学

であります。

この実現に向けて教職員や学生の皆さんと一緒に努力していきたいと思います。

ところで、皆さんは、これからどのような学生生活を送ることになるのでしょうか?すべての入学生の皆さんは最初、教養教育としての基幹教育をここ伊都キャンパスで受けることになります。

基幹教育とは、「生涯にわたって自律的に学び続けるアクティブ・ラーナーとしての「学び方を学び」、「考え方や学ぶ」ための姿勢と態度を育成する教育を言います。高校までの教育では、先生から生徒への知識の伝達に比重があったのではないでしょうか。しかし、大学での学びは論理的思考力を養い、知識そのものを新たな視点から創造的・批判的に“なぜか”と問うことで、答えのない問題に答えを創造していくことです。やり方として、課題発見型や英語による授業などを行います。

1年間の基幹教育が終わると、それぞれのキャンパスで学部専攻教育を受け、専門性を身につけることになります。

次に皆さん方にお願いしたいことは3つあります。一つは“広い学問の世界を知ること”、二つ目は“国際的視野を持つこと”、三つ目は“政治に関心を持つこと”です。

一つ目の“広い学問の世界を知ること”については、九州大学では人文社会学分野から理系分野のさまざまな分野の一流の専門の先生方がいます。是非積極的にいろいろな学問分野に興味を持って勉強していただきたいと思います。

二つ目の“国際的視野を持つこと”についてですが、現在はインターネットの普及、経済や人の交流のボーダーレス化、企業の国際化、などがあり、皆さんは今後、グローバル化社会を生きていかなければなりません。国際性とは単に外国語が出来るということではなく、自国の文化や歴史を知り、自分の考え方を国際社会で主張出来る論理的思考力、積極的姿勢や発信出来る語学力を兼ね備えることです。そのための近道は海外留学体験と外国人留学生との交流です。

海外留学制度は九州大学基金を利用する制度、短期留学体験制度、九州大学カリフォルニアオフィスを活用した「ロバートファン・アントレプレナーシップ・プログラム」、「トビタテ!留学JAPAN」などがあります。こうしたプログラムを積極的に活用し、世界に飛び出していただきたいと思います。若いうちに留学体験することにより、学生の皆さんは考え方や視野が大きく広がります。まさに「百聞は一見にしかず」です。

また、九州大学は国際化を進めていますが、現在87の国と地域から2,200名余りの留学生がいます。留学生と日常的に切磋琢磨し交流することで、国際的な視野を身につけ、世界の舞台で指導的役割を担うグローバル人材に育つと思います。

三つ目の“政治に関心を持つこと”ですが、昨年、選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられる改正公職選挙法が成立しました。今年の夏の参議院選から適用され、皆さん方も投票することになります。ぜひ、政治に関心を持ってください。政治のあり方は、日本の未来に大きく関係します。選挙に参加し、政党や政治家を選んでください。

以上、“広い学問の世界を知ること”、“国際的視野を持つこと”、“政治に関心を持つこと”の三つです。

九州大学は皆さんが持っているさまざまな可能性を大きく成長させてくれる 素晴らしい人材と環境に恵まれています。これらを十分に活用してください。

終わりにあたり、皆さんのこれからの大学生活が、新たな発見、体験や出会いなどで実り多いものになることを心から願いまして祝辞といたします。

 

平成28年4月7日
九州大学総長
久 保 千 春