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平成28年度 秋季学位記授与式(2016年9月26日)

総長式辞・挨拶等

平成28年度 九州大学秋季学位記授与式告辞(2016年9月26日)

 本日は、学士35名、修士139名、専門職学位課程2名、博士168名、合計344名の皆さんが卒業・修了します。この内、留学生は210名です。皆さんの、これまでのたゆまぬ研鑽努力に対し深い敬意を表し、学位を取得されましたことを心からお祝い申し上げます。また、皆さんのこれまでの学習・研究を支えて下さったご家族、ご指導を頂いた先生がた、学科・専攻・研究室等の関係者に対しても、心からのお祝いと御礼を申し上げます。

 さて、皆さんが在学していた2年から6年の間に、九州大学は大きく変わりました。これについてご紹介したいと思います。この伊都キャンパスは、2005年秋に工学系の第一陣が移転して開校して以来、11年が経過しました。伊都キャンパスの整備が着実に進んでいます。伊都キャンパス移転はは第1ステージから、第2ステージを経て現在第3ステージであります。この秋には、約1万2000人の学生教職員がおり、2018年には約2万人の人がいるキャンパスになります。航空から見た伊都キャンパスの写真です。工学系、基幹教育院、理学系建物は完成しています。2年半後の2018年度には農学系、人文社会科学系が移転し、移転事業が完了する予定です。
 伊都キャンパスには、近年、多くの建物が建設されています。椎木講堂、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所、伊都ゲストハウスなどです。その他に、昨年には共進化社会システムイノベーションセンターやカーボンニュートラル・エネルギー国際研究所第2研究棟、一昨年には留学生と日本人が混住するドミトリーや伊都協奏館も完成しています。昨年10月に理学系総合研究棟が完成し、この10月には新中央図書館のプレオープンセレモニーを迎えます。その後、人文社会学系建物や農学系総合研究棟が建設されます。その他の病院地区、大橋地区、筑紫地区キャンパスの整備もなされています。一方、箱崎地区は売却に向けて順次建物の解体が行われています。

 ところで皆さんが入学してから、国内外において、実に様々なことがありました。すこし、振り返ってみたいと思います。国際的には6年前の2010年にはアラブ諸国で反政府デモ、ギリシャ財政危機、2011年にはニュージーランド地震、タイで大洪水、2012年にはシリアの内戦泥沼化がありました。2013年にはフィリピン台風被害、四川省大地震があり、2014年にはエボラ出血熱の大流行、ISIL(イスラム国)の台頭、2015年には、ネパール大地震、米キューバの国交回復などがありました。2016年には、世界各地で大地震やテロ事件が発生し、多くの尊い命が犠牲となっています。
 また、イギリスで欧州連合離脱の是非を問う国民投票が行われ、EU離脱支持票が過半数を超える結果となり、世界経済の先行き不安が広がりました。明るい話題としては、南米大陸で初となるリオデジャネイロオリンピックが開催され、史上最多の206カ国・地域が参加しました。このように世界情勢は政情不安が続き、民族間や、宗教・宗派間の深刻な対立や暴動、各種のテロ行為等、深刻の度合いは大きくなっています。日本を取り巻くアジア諸国においても、政府間の対立や緊張が続いています。
 国内ニュースでは、何といっても、一番大きな出来事は、5年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。この地震とそれに伴って起こった津波によって1万6,000人近い貴い命が失われました。福島第一原子力発電所事故の終息にはまだまだ長い年月がかかります。2012年は安倍内閣が発足しています。2013年では2020年の東京オリンピック開催が決定したこと、2014年は日本人3名がノーベル物理学賞を受賞したこと、2015年は「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されたことなどがあります。
 今年一番の出来事としては、4月に発生した熊本地震です。気象庁の震度階級で最も大きい震度7を2度も観測する大きな地震で、九州地方では初めてのものでした。ここにいる皆さんも、この地震で恐ろしい思いをしたことと思いますが、改めまして、犠牲になられた方々に心からお悔やみ申し上げますとともに、被災をされた皆さまには心よりお見舞い申し上げたいと思います。
 今年はその他、北海道新幹線の開業や伊勢志摩サミットの開催、現職アメリカ大統領として初めて、オバマ氏が広島市を訪問したことなどがあげられます。このように度重なる大水害等の自然災害が頻発していますが、予報を含めた科学技術がこれほど進んできても、依然として自然の力の凄まじさを認識させられています。

 九州大学の昨年の最も大きなニュースとしては、理学研究院の森田浩介教授の研究グループが「113番元素」を発見したことが認められ、日本に命名権が与えられることになったことです。今年の6月にニホニウムを命名されました。この栄誉は九州大学として大変光栄であります。また、九州大学アクションプラン2015を10月に策定しました。伊都キャンパスでは、理学研究院の移転完了、福利厚生施設として亭亭舎、皎皎舎が開所しました。また、本学が主催して日中学長会議と日豪大学間シンポジウムを開催しました。九州大学では2011年の創立百周年を記念して、新たな百年に向けて、「九大百年、躍進百大」、すなわち、世界のトップ百大学に躍進する、というスローガンを掲げています。

 この度、九州大学アクションプラン2015-2020を作りました。6つの大きな項目を立てています。

  1. 世界最高水準の研究とイノベーション創出
  2. グローバル人材の育成
  3. 先端医療による地域と国際社会への貢献
  4. 学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパス作り
  5. 組織改革
  6. 社会と共に発展する大学

それぞれの項目ごとに具体案とロードマップを示し、この実現にむけて実行していきます。

 このような世界、日本、九大の状況のなかで皆さんは新しい道に踏み出すことになります。我々大学人は、民族や宗教、文化や認識等の違いや多様性をお互いに認め合い、尊重し合い、研究や教育を始めとする様々な交流を推進し、維持することが重要です。
 また、社会の未来に対する処方箋を示し、新しい価値観や文化の方向性を提案し、発信することが求められていると思います。この意味でも皆さんのこれからの活躍に期待されるところが大きいと思います。皆さんは今後様々な困難に直面することと思います。困難なことに直面した時、自分を励ます言葉や考え方を持っていることは重要です。皆さんに3つの”C”の言葉を贈りたいと思います。挑戦Challenge, 変化Change, 創造Creationです。

 九州大学は、皆さんが卒業されても皆さんと共にあり、皆さんの活動を応援し、各種の同窓会等を通じて繋がりを大事にします。皆さんが九州大学を卒業したことに誇りをもって、学んだことを生かし、夢を持って今後の未来を切り開いて、大きく飛躍し、グローバル社会を力強く牽引するリーダーとして大成されることを期待しまして告辞といたします。

平成28年9月26日
九州大学総長 久保千春