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久保総長 年頭の挨拶(2017年1月1日)

総長式辞・挨拶等

年頭の挨拶(2017年1月1日)

九州大学総長   久 保 千 春

新年明けましておめでとうございます。
学生、教職員ならびに日頃から九州大学をご支援いただいている皆様におかれましては、健やかな新年をお迎えのこととお慶び申し上げます。

さて、昨年を振り返ってみますと、国内外でさまざまな出来事がありました。最初に、海外における主な出来事を振り返ってみます。
世界各地で大規模な地震の発生や残酷なテロ事件の頻発により、多くの尊い命が犠牲となりました。また、イギリスでは欧州連合離脱の是非を問う国民投票が行われ、EU離脱支持票が過半数を超える結果となり、世界経済の先行き不安が広がりました。さらに、アメリカ大統領選挙で共和党ドナルド・トランプ氏が当選したり、韓国パク・クネ大統領が弾劾訴追案可決により職務停止になったりと、国際情勢は予断を許さない状況です。明るい話題としては、南米大陸で初となるリオデジャネイロオリンピックが開催され、史上最多の206カ国・地域が参加しました。日本のメダル獲得は金12、銀8、銅21の合計41個であり、これまでの最高でした。

次に、国内における主な出来事を振り返ってみます。
一番の出来事としては、4月に発生した熊本地震です。気象庁の震度階級で最も大きい震度7を2度も観測する大きな地震で、九州地方では初めてのものでした。本学学生や教職員の皆さんも、この地震で恐ろしい思いをしたことと思いますが、改めまして、犠牲になられた方々に心からお悔やみ申し上げますとともに、被災をされた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。その後も、台風10号の影響で東北・北海道に甚大な被害が発生したり、阿蘇山で爆発的な噴火が起きたりと、依然として自然の力の凄まじさを認識させられています。
また、「マイナンバー制度」や「電力完全自由化」、「18歳選挙権施行」、「山の日施行」など、私たちの生活に直接関係する新たな制度が開始されました。その他、北海道新幹線の開業、大隅良典先生の「ノーベル医学・生理学賞」受賞や現職アメリカ大統領として初めて、オバマ氏が広島市を訪問したことなどがあげられます。年末には安倍首相がオバマ大統領とハワイの真珠湾を訪問し、献花しました。

このような国内外の状況にあって、九州大学においては、さまざまな取り組みを行ってきました。昨年1年間の成果を振り返り、今年を展望したいと思います。
1月には総合研究棟(人文社会科学系)の新営工事が着工しました。2月には株式会社Kyuluxが本格始動しました。4月には甚大な被害が発生した熊本地震を支援するため、九州・山口地区の国立大学長による「熊本大学支援連絡会」を設置しました。6月にはヨット部がブラジルのリオデジャネイロで開催された西半球スナイプ世界選手権に日本代表として出場し、37艇中13位、日本では8艇中1位の好成績を収めました。7月にはNTTドコモ、ディーエヌエー、福岡市と共に、「スマートモビリティ推進コンソーシアム」を設立し、12月には伊都キャンパス内での自動運転バスの実証実験を開始しております。10月にはアカデミックフェスティバルを開催し、燃料電池自動車クラリティを公用車として導入しました。また、香港の新華集団会長であるジョナサン・チョイ氏からの寄付により「日本ジョナサン・チョイ文化館」を建設することになりました。11月には中野三敏名誉教授が文化勲章を受章し、理学研究院の森田浩介教授の研究グループが発見した113番元素名が「ニホニウム」に、元素記号が「Nh」に正式決定しました。

さて、九州大学の今年の方向についてお話したいと思います。
皆さんご存知のとおり、九州大学では、創立百年を機に「躍進百大」というスローガンを掲げ、世界のトップ大学に躍進することを目標としています。昨年は2015年に策定した「九州大学アクションプラン2015-2020」に基づき、重点事項である「エネルギー研究教育機構」や「新学部」設置(共創学部(設置構想中))などの取り組みを開始しました。

<アクションプラン>

  1. 世界最高水準の研究とイノベーション創出
  2. グローバル人材の育成
  3. 先端医療による地域と国際社会への貢献
  4. 学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパスづくり
  5. 組織改革
  6. 社会と共に発展する大学

研究、教育、キャンパス移転、産学官民連携の4つの観点から今年の抱負を述べたいと思います。

  1. 研究
    アクションプランの重点取り組みである研究教育機構においては、世界的に本学の強み・特色として評価を受けている研究分野ごとに設置することとしています。本学の多様な研究教育活動が組織化され、また、先端・融合研究や独創的かつ学際的な学問領域の研究が推進され、それらの卓越した研究成果が教育活動へ還元されていくことを期待しています。このような趣旨を踏まえたエネルギー分野の研究教育機構として、「エネルギー研究教育機構」を昨年10月に創設しました。人文社会科学系も含めた幅広い分野から全学一丸となった、各部局の積極的な参加・協働が必要です。世界最高水準の拠点形成を行い、オール九大で支援していきたいと考えています。
    1月31日から「エネルギーウィーク」の開催が予定されていますが、本学の取り組みを行政や産業界にも広く知っていただく機会にしたいと思います。

  2. 教育
    今年の本学の教育上の大きな柱は、「新学部の設置」と「教育国際化の進展」です。少子化や財政状況が好転しないことから、世界的にも国内的にも、大学を取り巻く環境は大変厳しいです。一方、大学における人材育成に対する社会からの期待は大きいと感じています。本学も組織の見直しや教育改革を進めることで、それらに応えていかねばなりません。また、優秀な外国人留学生や社会人の学び直し等、多様な人材を積極的に受け入れることや学生一人一人の付加価値を高めていくことも重要な課題です。
    九州大学は平成30年4月に、12番目の学部として国際社会で活躍するグローバル人材を育成する「共創学部(School of Interdisciplinary Science and Innovation)」を設置する予定です。共に構想し、連携して新たな物事を創造する「共創」により新たなイノベーションの創出に取り組むグローバル人材を社会へ輩出していきます。さらに、学部レベルでも国際コースの設置を拡大し、入試においてはインターネット出願の導入や4類型の多様な入試方法など入試改革に取組んでいきます。

  3. キャンパス移転
    移転は最終段階の第Ⅲステージになっており、平成30年度には伊都への移転事業完了の予定です。平成27年12月に着工した農学系総合研究棟、平成28年2月に着工した人文社会科学系総合研究棟、昨年10月に部分開館している新中央図書館が建設中です。南ゲートは開門されました。
    箱崎キャンパスの跡地利用はたいへん重要な課題です。福岡市と九州大学で設置した「箱崎キャンパス跡地利用協議会」や昨年11月にスタートさせたUR都市機構との跡地南エリアにおける共同事業により、引き続き福岡市をはじめ関係機関との連携を図りながら、跡地処分を着実に行ってまいります。

  4. 産学官民連携
    総長になって産業界や行政の方々などにお会いする機会が格段に増えました。昨年は「株式会社Kyulux本格始動」に始まり、「スマートモビリティ推進コンソーシアム」、「一億総活躍・地方創生全国大会」、「福岡-釜山フォーラム」、「日本ジョナサン・チョイ文化館鍬入式」など、産学官民連携の取り組みをさらに加速させました。
    今年はこれまで進めてきた産学官民連携分野における成果をもとに、大学発ベンチャーの育成やキャンパスを活用した実証実験の拡大を目指します。2月には、私と九州経済連合会の麻生泰会長が共同代表となり「大学発ベンチャー振興会議」を設立し、九州地域の産学官民を巻き込んだ取り組みを開始する予定です。

その他、財政基盤の強化も力を入れなければなりません。自己収入や外部資金等による増収、業務改善等による経費節減をしっかりと行います。
また、大学ランキングへの対応も重要な課題です。研究力の向上に取り組み、研究の国際競争力とレピュテーションを向上させることを基本方針とした対応戦略に基づいて、ランキング向上に向けた取り組みを行います。

今年は「九州大学アクションプラン2015-2020」のこれらの取り組みをしっかりと進め、九州大学をさらに大きく飛躍させる1年にしたいと思います。この実現のためには、教職員、学生一人ひとりが生き生きと活躍することが不可欠です。3つの”C” すなわち、挑戦Challenge、 変化Change、 創造Creationをキーワードにやっていきたいと思います。

今年は酉年です。鳥が大空を飛ぶように、学生や教職員、そして九州大学にとって大きな飛躍の年となることを祈念して、新年の挨拶といたします。