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平成28年度 大学院学位記授与式(2017年3月24日)

総長式辞・挨拶等

平成28年度 九州大学大学院学位記授与式告辞(2017年3月24日)

 本日学位記を授与された博士378名、修士1,767名、そして専門職大学院102名、合計2,247名(男性1,745名、女性502名、留学生328名)の皆さん、本当におめでとうございます。九州大学教職員を代表して皆さんの修了を心よりお祝いいたします。今日まで長きにわたって皆さんの勉学や研究を指導し、また様々な面で支えてくださった先生方、研究室などご関係の皆様、そして、ご家族の皆様に対しまして御礼とお慶びを申し上げます。

 大学キャンパスの変遷についてお話しいたします。
 平成21年4月から、すべての入学生の授業はここ伊都キャンパスで行われています。本日卒業する皆さんは、九州大学での学生生活を伊都キャンパスで始めたことと思います。その頃から比べると、キャンパスは大きく発展してきています。
 この伊都キャンパスは、平成17年秋に工学系の第一陣が移転して開校して以来、12年が経過しました。伊都キャンパスの整備が着実に進んでおります。移転事業は第1ステージから第2ステージを経て、現在第3ステージであります。残りは新中央図書館、人文社会学系及び農学系の建物であります。農学系総合研究棟は一昨年12月に安全祈願祭がとり行われ、平成30年1月の完成に向けて建設が進んでおります。また、人文社会科学系の総合教育研究棟は昨年の1月29日に安全祈願祭を行い、着実に建設が進められています。新中央図書館は昨年10月に一部開館しました。平成30年2月には人文社会科学系研究棟の建設が完了し、その後移転し、平成30年度末までに移転事業は完了する予定です。
 完成しますと、伊都キャンパスはさらに大きく発展し、自然環境・歴史との共生や未来エネルギー社会のモデルキャンパスとなります。九州大学は、この未来型キャンパスを核として、教育、研究、社会貢献など多様な活動を推進していきます。
 その他の病院地区、大橋地区、筑紫地区キャンパスの整備もなされています。一方、箱崎地区は売却に向けて土地の整備と、新しいまちづくりの視点から福岡市などの関係機関との協議が進んでいます。

 ところで皆さんが入学してから、国内外において実にさまざまなことがありました。最近6年間の主な出来事を振り返ってみたいと思います。
 国際的には6年前の2011年にはニュージーランド地震やタイの大洪水、2012年にはシリアの内戦が泥沼化になり、2013年にはフィリピン台風被害などがありました。2014年にはアフリカにおいてエボラ出血熱の大流行、ISIL(イスラム過激派組織)の台頭、2015年には欧州への難民殺到、米キューバの国交回復などがありました。昨年2016年の出来事について少し詳しく紹介します。台湾、インドネシア、エクアドル、イタリア、ニュージーランド等の世界各地で大規模な地震が発生しました。また、残酷なテロ事件が世界各地で頻発し、多くの尊い命が犠牲となりました。5月にはパナマ文書が公開され、大きな問題になりました。6月にはイギリスで欧州連合離脱の是非を問う国民投票が行われ、EU離脱支持票が過半数を超える結果となり、世界経済の先行き不安が広がりました。明るい話題としては、8月に南米大陸で初となるリオデジャネイロ・オリンピックが開催され、史上最多の206カ国・地域が参加しました。日本のメダル獲得総数はこれまでで最高の金12、銀8、銅21の合計41個でした。11月にはアメリカの大統領選挙で共和党ドナルド・トランプ氏が当選し、12月には韓国でパク・クネ大統領が弾劾訴追案可決により職務停止になり、大統領辞職に追い込まれました。このように、わが国を取り巻く国際情勢は大きく変化しています。

 国内の出来事を振り返ってみたいと思います。
 一番大きな出来事は、6年前の2011年3月11日に発生した東日本大震災でした。この地震とそれに伴って起こった津波によって1万6,000人近い貴い命が失われ、約17万人が避難や転居を余儀なくされました。2012年は安倍内閣が発足しています。2013年は2020年の東京オリンピック開催が決定しました。2014年は消費税8%がスタートしました。2014年から3年連続で日本人がノーベル賞を受賞されたことは大変喜ばしいことです。2014年には赤崎先生、天野先生、中村先生の3名がノーベル物理学賞を受賞されました。2015年は「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されました。また、大村先生がノーベル生理学・医学賞、梶田先生がノーベル物理学賞を受賞されています。2016年の国内における主な出来事について詳しく述べたいと思います。1月にはマイナンバー制度の開始、日銀マイナス金利政策がありました。3月には北海道新幹線開業、民進党結成、そして4月には一番の出来事として熊本地震の発生があります。気象庁の震度階級で最も大きい震度7を2度も観測する大きな地震で、九州地方では始めてのものでした。本学の皆さんも、この地震で恐ろしい思いをしたことと思いますが、改めまして、犠牲になられた方々に心からお悔やみ申し上げますとともに、被災をされた皆さまには心よりお見舞い申し上げます。5月伊勢志摩サミットの開催、そしてその後にオバマ大統領の広島訪問、6月には参議院選挙での18歳選挙権施行、7月には天皇陛下の生前退位のご意向発表、東京都知事選挙小池百合子氏当選、8月には台風10号の影響で東北・北海道に甚大な被害が発生しました。10月には大隅良典先生がノーベル生理学・医学賞を受賞したことも大きなニュースです。また、阿蘇山で爆発的な噴火が起きました。11月には福岡市道路陥没、12月には日露首脳会談、安倍首相ハワイ真珠湾を訪問、そして博多祇園山笠がユネスコ無形文化財に登録されました。

 九大の主な出来事では、中野三敏名誉教授が文化勲章を受章されました。大変喜ばしい事です。また、理学研究院の森田浩介教授の研究グループが発見した113番元素名が「ニホニウム」に、元素記号が「Nh」に正式決定しました。

 2015年10月に今後の大学の活動指針となる「アクションプラン2015-2020」を策定しました。

  1. 世界最高水準の研究とイノベーション創出
  2. グローバル人材の育成
  3. 先端医療による地域と国際社会への貢献
  4. 学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパスづくり
  5. 組織改革
  6. 社会と共に発展する大学

であります。

 現在、急速にグローバル化はすすんでいます。九州大学ではグローバル社会の中で活躍する人材の育成を進めています。文部科学省の事業の「スーパーグローバル大学創成支援事業」を獲得し、海外の卓越した大学との連携や大学改革により大学の徹底した国際化を進めています。「博士課程教育リーディングプログラム」として、本学では「持続可能な社会を拓く決断科学大学院プログラム」、「分子システムデバイス」、「グリーンアジア国際戦略」の3事業があり、幅広い教養を持ちながら、深い専門性を持つ人材の育成を推進しています。これらのプログラムを修了された方もおられると思います。
 平成28年5月の留学生数は2,089人ですが、日本の国立大学では3番目、全部の大学で6番目に留学生が多い大学です。2,089人のうち、実に86パーセントはアジアからの留学生となっています。本学の場合、留学生の多くは大学院で学んでいます。
 また、九州大学では、カリフォルニア、ソウル、北京、台北、ハノイ、ロンドン、等の海外オフィスやブランチ・オフィスを11カ所設置しています。

このオフィスでは、

  1. 各国の教育研究に係る情報等の収集
  2. 優秀な留学生獲得のためのイベント実施、情報提供
  3. 海外入試・面接等の支援
  4. 共同研究等の支援
  5. 同窓会の設立・運営

等を行っています。

 留学生の皆さんは、修了後も出身の研究室の先生がたや仲間との共同研究や共同教育プログラム等を通じて、母国と九州大学との関係を強固なものとして維持し、架け橋となって頂くことを願っております。

 現在、私たちは、環境汚染、地球温暖化、エネルギー、食料・水、宗教・民族による緊迫した国際情勢など、地球規模の課題に直面しています。また、我が国特有の課題として、世界に類を見ない少子高齢化、厳しい財政状況などさまざまな課題に直面しています。在学中に培ったそれぞれの総合力をいかんなく発揮して、社会の課題に果敢に挑戦し、未来を切り開く若者として世界に飛躍していただくことを願っております。

 最後に、皆さんに3つのCの言葉を贈りたいと思います。

  • Challenge
  • Change
  • Creation

であります。この言葉は、将来を担う若い皆様方にとって、大事な心構えと思います。皆さんが九州大学を修了したことに誇りを持って、学んだことを生かし、大きく飛躍し、グローバル社会を力強く牽引するリーダーとして大成されることを期待して告辞といたします。

 

平成29年3月24日
九州大学総長
久保 千春