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平成29年度 学部入学式告辞(2017年4月5日)

平成29年度 九州大学学部入学式告辞(2017年4月5日)

 新入生の皆さん、入学おめでとうございます。長い受験生活を経て見事に九州大学に入学された皆さんに、九州大学教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。また、今日まで長きにわたって皆さんの勉学と生活を支え、励ましてこられたご家族をはじめ関係者の皆様にも心からお慶び申し上げます。九州大学で新入生の皆さんの能力を更に大きく伸ばすことができるよう、私たち、教職員も全力で応援いたします。

 今年度の学部入学生の数は2,635名、男子1,877名、女子758名で女子が28.8%です。外国人留学生は30名です。出身別では、47都道府県のうち、44の都道府県から入学しており、九州・沖縄地区からは、1,736名、65.9%です。
 皆さんは受験勉強から開放されて入学後のさまざまな可能性に心を躍らせて今日を迎えていることと思います。大学の授業、クラブ活動、ボランティア活動、友達との交流、趣味などいろいろあると思います。一方、家族と離れて一人での新しい生活に不安を覚えている人も居るかもしれません。しかし、これは自立し、成長していくための第一歩でもあります。
 ところで、皆さんがいるこの椎木講堂ですが、3年前に完成し、ここで入学式が行われるようになりました。この素晴らしい椎木講堂は九州大学の創立百周年記念事業にご賛同をいただいた椎木正和様のご厚意によりできたものであり、世界で活躍し、社会に役立つ人材育成を願って、ます。このホールは約3,000名を収容でき、この講堂で入学式を挙行できますことを大変喜ばしく思います。
 また、本日は来賓として、国文学研究資料館館長のロバート・キャンベル様からもご祝辞をいただくことになっております。キャンベル先生は、九州大学で以前、教員をされたこともあります。キャンベル先生には、厚く御礼申し上げます。

 さて、皆さんがこれから過ごす九州大学の歴史と現状についてご紹介したいと思います。1903年(明治36年)今から114年前に京都帝国大学福岡医科大学が設置されました。その8年後の1911年(明治44年)に工科大学が設置され、医科大学と工科大学が一緒になり、九州帝国大学の歩みがスタートしました。日本で4番目にできた国立大学です。初代総長は、山川健次郎氏でありました。“修養が広くなければ完全な士と云う可からず”という言葉を残しておられます。
 以来、学部等の増設、2003年(平成15年)九州芸術工科大学との統合、2004年(平成16年)大学法人化などを経て現在に至っています。
 九州大学は現在、11の学部と21世紀プログラム、16の大学院研究院、18の大学院学府、4つの専門職大学院、そして高等研究院、基幹教育院、5つの研究所及び最先端の医療を提供する国内最大級の大学病院、420万冊余りの蔵書を誇る図書館などを擁する我が国屈指の基幹総合大学として発展を続けています。
 現在の学生数は、学部学生11,758名、大学院生6,901名、合計18,659名、教職員8,024名、総合計26,683名の大きな組織です。土地面積は、箱崎キャンパス、病院キャンパス、筑紫キャンパス、大橋キャンパスそして伊都キャンパス、附属農場、4つの演習林などを合わせて合計76km2であり、日本で3番目に広い敷地を持つ大学です。

 次にこの伊都キャンパスを紹介します。皆さん全員が最初の1年間を過ごすこの伊都キャンパスは、古来より大陸文化を取り入れた伊都の国としての歴史ある場所であります。豊かな自然環境に恵まれた丘陵地で、東西3km、南北2.5kmの広大な敷地です。伊都キャンパスの建設にあたっては自然環境に配慮し、生物多様性の保全に努め、古墳などの貴重な文化財の保存に可能な限りの工夫と努力がされてきています。近くには糸島のきれいな海岸線や田園が広がっております。福岡市の中心部からは離れてはいますが、勉学にいそしむ素晴らしい環境です。
 この伊都キャンパスは、平成17年秋に工学系の第一陣が箱崎から移転して開校以来、12年が経過しました。伊都キャンパスの整備は着実に進んでおります。第1ステージから、第2ステージを経て現在最終の第3ステージであります。残りは新中央図書館、人文社会学系及び農学系の建物です。最近出来た建物として椎木講堂、カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所、センター3号館、一昨年10月には理学系総合教育研究棟などがあります。基幹教育院の建物、九大ゲートブリッジ、寄宿舎のドミトリーⅢ、留学生と日本人の混住する伊都協奏館なども出来ています。学生の寄宿舎としては合計約1,000名入れるようになりました。
 椎木講堂隣の現在建設中の新中央図書館は昨年10月に一部開館し、来年10月に全面開館します。また、伊都図書館は、平成28年4月に地下1階~地上3階までの全館オープンの図書館となっています。
 今後の整備予定としては、農学系総合教育研究棟があります。一昨年12月に安全祈願祭を行い、来年1月の完成に向けて建設が進んでおります。人文社会科学系の総合教育研究棟は、来年2月には完成します。一年半後には移転がほぼ完了し、素晴らしい充実したキャンパスになります。また、大学として福岡市や糸島市と協力し、皆さんが生活しやすいように、交通や生活環境を整備していくことにしています。
 九州大学のその他のキャンパスとして病院地区、大橋地区、筑紫地区のキャンパスがあります。これらのキャンパスもさらに整備し、充実していく予定です。箱崎キャンパスは現在跡地利用計画や売却に向けて福岡市や地域住民との協議を行っています。医歯薬系や芸術工学部の皆さんは、専門課程でこれらのキャンパスに行くことになります。

 次に九州大学の基本理念について述べたいと思います。2011年の創立百周年を記念して、新たな百年に向けて、「躍進百大」、すなわち、すべての分野において世界のトップ百大学に躍進する、というスローガンを掲げ、基本理念は「自律的に改革を続け,教育の質を国際的に保証するとともに、常に未来の課題に挑戦する活力に満ちた最高水準の研究教育拠点となる」としています。
 私は、2年半前に総長に就任しました。大学の主な役割は、教育、研究、社会貢献です。一昨年10月には今後の大学の活動指針となる「アクションプラン2015-2020」を策定しました。6つの項目があります。

  1. 世界最高水準の研究とイノベーション創出
  2. グローバル人材の育成
  3. 先端医療による地域と国際社会への貢献
  4. 学生・教職員が誇りに思う充実したキャンパスづくり
  5. 組織改革
  6. 社会と共に発展する大学

であります。この実現に向けて教職員や学生の皆さんと一緒に努力していきたいと思います。

 ところで、皆さんは、これからどのような学生生活を送ることになるのでしょうか?すべての入学生の皆さんは最初、教養教育としての基幹教育をここ伊都キャンパスで受けることになります。
 基幹教育とは、文系理系を問わず、専攻の異なる学生が一緒に対話型の協働学習をしながら、「ものの見方・考え方・学び方」を学び、生涯にわたって自律的に学び続けるアクティブ・ラーナーを育成する教育を言います。高校までの教育では、先生から生徒への知識の伝達に比重があったのではないでしょうか。しかし、大学での学びは論理的思考力を養い、知識そのものを新たな視点から創造的・批判的に“なぜか”と問うことで、答えのない問題に答えを創造していくことです。やり方として、課題発見型や英語による授業などを行います。1年間の基幹教育が終わると、それぞれのキャンパスで学部専攻教育を受け、専門性を身につけることになります。

 次に皆さん方にお願いしたいことが3つあります。一つは“広い学問への興味”、二つ目は“国際的視野と活動”、三つ目は“政治への関心”です。

 一つ目の“広い学問への興味”については、九州大学では人文社会学分野から理系分野のさまざまな分野の一流の専門の先生方がたくさんいます。基幹総合大学としての大きな強みです。ぜひ積極的にいろいろな学問分野に興味を持って勉強していただきたいと思います。

 二つ目は“国際的視野と活動”です。現在はインターネットの普及、経済や人の交流のボーダーレス化、企業の国際化、などがあり、皆さんは今後、グローバル化社会を生きていかなければなりません。国際性とは単に外国語が出来るということではなく、自国の文化や歴史を知り、自分の考え方を国際社会で主張出来る論理的思考力、積極的姿勢や発信出来る語学力を兼ね備えることです。そのための近道は海外留学体験と外国人留学生との交流です。
 海外留学制度は九州大学基金を利用する制度、短期留学体験制度、九州大学カリフォルニアオフィスを活用した「ロバートファン・アントレプレナーシップ・プログラム」、「トビタテ!留学JAPAN」などがあります。こうしたプログラムを積極的に活用し、世界に飛び出していただきたいと思います。若いうちに留学体験することにより、俯瞰する力、日本や地域、そして自己を客観視する力などが養われます。
 また、九州大学は国際化を進めていますが、世界97カ国・地域から2,300名を超える外国人留学生がいます。九州大学の中も多様性豊かな国際キャンパスであります。留学生と日常的に切磋琢磨し交流することで、国際的な視野を身につけ、世界の舞台で指導的役割を担うグローバル人材に育つと思います。
 一方、グローバル化の進行は、経済摩擦、地球温暖化、宗教や文化の違いによる紛争、などの地球的規模の課題をもたらしています。これらの課題を克服していかなければ、地球の未来はないと考えられています。これらの課題にも挑戦していただきたいと願っています。

 三つ目の“政治への関心”ですが、一昨年、選挙権年齢が20歳から18歳に引き下げられる改正公職選挙法が成立しました。政治のあり方は、社会や国民の日々の生活に大きく関係します。日本は、急速な少子高齢化、過疎化、財政難、医療・介護問題などに直面しています。これらの問題を解決するためには、政治のあり方が重要であり、日本の未来に大きく関係します。ぜひ、政治に関心を持ち、選挙に参加してください。

 以上、“広い学問への興味”、“国際的視野と活動”、“政治への関心”の三つです。

 九州大学は皆さんが持っているさまざまな可能性を大きく成長させてくれる 素晴らしい人材と環境に恵まれています。この恵まれた環境を存分に活用して、学問への夢を育んでください。また、学生の中には、自分でベンチャー企業を起こしたりする人達もいます。東北大地震や熊本地震のボランティア活動を続けたりしている人達もいます。学生時代にいろいろな体験をすることは、将来に役立ちます。失敗を恐れず、チャレンジ精神で学生生活を送ってください。私たち、教職員は、皆さんの夢の実現を全力でサポートしたいと思っています。
 終わりにあたり、皆さんのこれからの大学生活が、新たな発見、体験や出会いなどで実り多いものになることを心から願いまして祝辞といたします。

平成29年4月5日
九州大学総長
久保千春