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令和2年度 秋季学位記授与式(2020年9月25日)

総長式辞・挨拶等

令和2年度 九州大学秋季学位記授与式告辞(2020年9月25日)

 本日、皆さんが九州大学での勉学を修められたことをお祝いするとともに、皆さんのこれまでの学習・研究を支えて下さったご家族、ご指導を頂いた先生方、学科・専攻・研究室等の関係者に対しても、心からのお祝いと御礼を申し上げます。
 今年に入ってから、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が世界中に広がっています。新型コロナウイルス感染症は世界中の社会経済に多大な影響を与え、日常生活を制限しています。誰もが苦労を強いられていることと思います。
 そのような厳しい状況にもかかわらず、本日は、学士60名、修士146名、専門職6名、博士201名、合計413名の皆さんが卒業・修了します。この内、留学生は272名です。皆さんの、これまでのたゆまぬ研鑽努力に対し深い敬意を表し、学位を取得されましたことを心からお祝い申し上げます。

 さて、皆さんが入学してから、国内外において、実に様々なことがありました。少し、振り返ってみたいと思います。

 国際的には、2017年にはエマニュエル・マクロン氏が39歳でフランス大統領選に勝利し、フランス史上最年少で大統領に就任しました。北朝鮮による弾道ミサイルの試験発射が繰り返し行われ、国際的な緊張が高まっています。2018年にはシンガポールで米朝首脳会談が開催されました。2019年、ボリス・ジョンソン氏が英国首相に任命されました。香港では、中国本土への犯罪容疑者引き渡しを可能とする条例改正をめぐって大規模な抗議が行われました。2020年、米国がバグダッドを空爆しイランの司令官が殺害されました。イギリスが正式にEUを離脱しました。新型コロナウイルス感染症が世界的に大流行しました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、世界中の社会経済、国際社会に壊滅的な打撃を与えています。中国で香港国家安全維持法が可決されました。 

 国内的には、2017年7月5日と6日に九州北部で集中豪雨が発生しました。この災害は、九州北部、特に福岡県朝倉市に大きな被害をもたらしました。本学では、多様な分野から研究者や学生の叡智を結集して「九州北部豪雨災害調査・復旧・復興支援団」を結成し被災地への効果的な支援を行いました。「『神 宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が世界文化遺産への登録決定は明るい話題となりました。2018年、日本は度重なる自然災害や異常気象に見舞われました。大阪府北部地震、北海道胆振東部地震、西日本集中豪雨が発生しました。2019年、5月1日に「令和」という新しい時代が始まりました。7月6日に大阪の「百舌鳥・古市古墳群」が世界遺産に登録されました。2020年、3月24日に、世界的なCOVID-19感染拡大の懸念から東京オリンピック・パラリンピックの開催が2021年に延期することが決定しました。また、4月7日には日本国内に非常事態宣言が発令されました。7月には大雨で九州全域が水害に見舞われました。9月16日に菅内閣が発足しました。 

 2年前の9月29日に伊都キャンパス完成記念式典を挙行し、今後、伊都キャンパスを拠点として新たな時代を歩み始めるに際して、これまでの感謝と将来への決意を込めた「伊都キャンパス宣言」を公表しました。
 1. 世界をリードする人材と新しい科学を生み出すキャンパス
 2. 未来社会を切り拓く研究成果の実証実験の場としてのキャンパス
 3. 歴史や自然など豊かな環境と共生するキャンパス

 その他の病院地区、大橋地区、筑紫地区キャンパスの整備もなされています。一方、箱崎地区は売却に向けて建物の解体が着実に行われています。 

 このような世界、日本、九大の状況のなかで皆さんは新しい道に踏み出すことになります。
我々大学人は、民族や宗教、文化や認識等の違いや多様性をお互いに認め合い、尊重し合い、研究や教育を始めとする様々な交流を推進し、維持することが重要です。また、社会の未来に対する処方箋を示し、新しい価値観や文化の方向性を提案し、発信することが求められていると思います。この意味でも皆さんのこれからの活躍に期待されるところが大きいと思います。 

 皆さんは今後様々な困難に直面することと思います。私たちは「with and post Corona」の時代を生きていかなければなりません。困難なことに直面した時、自分を励ます言葉や考え方を持っていることは重要です。皆さんに3つの“C”の言葉を贈りたいと思います。挑戦Challenge、 変化Change、 創造Creationです。

 昨年12月、本学高等研究院特別主幹教授の中村哲先生がアフガニスタンで凶弾を受け亡くなられました。このような形で命を落とされることは痛恨の極みであり、本当に残念でなりません。中村哲先生は昭和48(1973)年に本学医学部医学科を卒業された、皆さんの偉大な先輩です。ペシャワール会現地代表となられて以来、パキスタンやアフガニスタンにて医療活動に従事する傍ら、農村復興のための水利事業を続けてこられ、アフガニスタンに全長25キロにもわたる用水路を整備されました。中村先生のご子息に、「行動で示す」ことの大切さを繰り返し説かれていたそうですが、これらの事業は先生の行動力のなせる業だと思います。先生が言われた言葉に「困っている人がいたら手を差し伸べる。それは普通のことです。」というものがあります。思いやりの気持ちと実際の行動に移す力を皆さんにもぜひ引き継いでいってもらいたいと思います。 

 九州大学は、卒業された同窓生の方々との繋がりを大切にしています。九州大学同窓会連合会には、各学部・学府の同窓会、各地域における地域別同窓会、さらに海外同窓会があります。その他、ゼミやサークル活動などで組織されているグループも多数あります。卒業後も九州大学との繋がりや交流を持ち、相互の親睦を深めていただきたいと思います。大学からも積極的に情報を発信するなどして、皆さんとの交流を図ってまいります。 

 皆さんが九州大学を卒業したことに誇りをもって、学んだことを生かし、夢を持って今後の未来を切り開いて、大きく飛躍し、グローバル社会を力強く牽引するリーダーとして大成されることを期待しまして告辞といたします。

 令和元年9月25日
九州大学総長 久保千春