Research 研究・産学官民連携
芸術工学研究院 環境設計部門
講師 土屋潤
建築物を構成する建築材料には大きく分けて「構造材料」「仕上(しあげ)材料」の2種類があります。これらの建築材料のうち、わたしたちが身近に接する機会が多いのが「仕上材料」です。
九州大学芸術工学部土屋研究室は、人が暮らす空間をより快適にするため、あるいは地域の材料を生活のなかで生かしていくために、身近な仕上材料の色彩・質感、成分、経年変化などを調査・研究しています。そんな仕上材料のなかに気になるマテリアルはたくさんありますが、今回は建築のほかにも幅広く使用される材料、木材について、都市樹木を利用したストリートファニチャーに関する取り組みを紹介します。
土屋研究室では九州大学総合研究博物館三島研究室と共同で、九州大学箱崎サテライト(旧箱崎キャンパスの保存地区)にて2023年に伐採された、ヒマラヤスギ(マツ科ヒマラヤスギ属)の丸太から製材した木材の活用を計画しました。このヒマラヤスギは長年、九州大学の人々を見守ってきた箱崎キャンパスのレガシーのひとつでもあります。
建築・製品の材料用として植林されていない都市樹木から製材・作製した、ストリートファニチャーの実用性と汎用性を評価することを目的にベンチを作製し、並行して吉岡研究室と共同で木材の強度試験を行いました。ベンチは研究室の学生たちが設計・制作・施工しました。2024年6月に大橋キャンパスに設置したベンチは、設置後の表面色、含水率、質感、使用感の変化を経時的に観察・測定しています。またこの取り組みは、近年顕在化する街路樹・公園樹等の都市樹木の高齢化に伴う管理や伐採などの都市問題や、木質材料を用いた建築物・製品の屋外使用における維持管理の一助となることを目指しています。
[参考文献]
佐藤孝, 土屋潤, 吉岡智和, 三島美佐子
都市樹木を利用したストリートファーニチャーの提案 ヒマラヤスギの材料特性とベンチのプロトタイプの検証, 芸術工学会2024年度秋期大会, 2024.10.5
Fig.1 ヒマラヤスギ丸太の製材の様子
Fig.2 丸太から切り出した横架材の強度試験を見学する環境設計コースの学生たち
Fig.3 塗装した天板(ベンチの座面)
Fig.4 組み立て作業
Fig.5 ベンチ完成後に研究室メンバーと
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講師 土屋潤