Research Results 研究成果

カオス軌道を用いた地球–月系における探査機の軌道設計に成功

月周回有人拠点への貨物輸送や惑星探査機の軌道設計への応用に期待
工学研究院
坂東 麻衣 教授
2024.05.30
研究成果Math & DataPhysics & ChemistryTechnology

ポイント

  • ローブの動力学に注目して、短いカオス軌道をいくつも連結する軌道設計が可能なことを発見。
  • 地球−月円制限三体問題において、従来の結果を上回る高効率かつ頑健な軌道を構成。
  • 月周回有人拠点への貨物輸送や惑星探査機の軌道設計への応用に期待。

概要

 北海道大学電子科学研究所の佐藤 讓准教授と九州大学大学院工学研究院航空宇宙工学部門の坂東麻衣教授、同大学工学府航空宇宙工学専攻博士後期課程3年の平岩尚樹氏、リオデジャネイロ連邦大学数学研究所のイザイア ニゾリ博士の研究グループは、短いカオス軌道をいくつも連結して地球から月へ向かう探査機の軌道を設計することに成功しました。
 研究グループは力学系におけるローブの動力学に注目し、いくつかのローブ系列の間をジャンプして目的地へ到達する制御法を考案しました。最適化の結果、地球−月円制限三体問題のモデルであるヒル方程式系で地球周回軌道から月周回軌道へ向かう探査機に対して、従来の結果を上回る高効率かつ頑健な軌道を設計できました。本研究成果は、月周回有人拠点への貨物運搬や惑星探査機の軌道設計への応用が期待されます。
 なお、本研究成果は2024年5月24日(金)公開のPhysical Review Research誌に掲載されました。

地球−月系における探査機の軌道

安定多様体(緑)と不安定多様体(赤)に囲まれたローブとその系列(黄、青)(左図) 出発点(▲)から目標点(★)までローブ系列(赤、紫)の間をジャンプ(d1、d2、d3)させる軌道設計法(右図)

地球-月系における探査機の軌道: 地球周回軌道から二つのカオス軌道(赤、緑)を経て月周回軌道へ到達する。地球は青い点、月は黄色の点で示されている。

論文情報

タイトル Designing robust trajectories by lobe dynamics in low-dimensional Hamiltonian systems(ローブ動力学を用いた低次元ハミルトン系の頑健な軌道設計)
著者名 平岩尚樹1、坂東麻衣2、Isaia Nisoli3、佐藤 讓4(1九州大学大学院工学府航空宇宙工学専攻、2九州大学大学院大学院工学研究院航空宇宙工学部門、3リオデジャネイロ連邦大学数学研究所、4北海道大学電子科学研究所)
雑誌名 Physical Review Research(物理学の専門誌)
DOI 10.1103/PhysRevResearch.6.L022046

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工学研究院 坂東麻衣 教授