Research Results 研究成果

ナノバブル発生に誘発される非ガス粒子形成の発見

ナノバブルと考えられていた粒子の沈降による質量の計測
理学研究院
木村 康之 教授
2024.07.09
研究成果Humanities & Social SciencesPhysics & Chemistry

ポイント

  • 理論的に存在しない長時間安定なナノバブルが2000年代より相次いで実験で観測されていた。
  • ナノバブルと思われていた粒子の質量を計測し、それが非ガス粒子であることを発見した。
  • 顕微鏡のみを使ったナノバブルの質量の計測は、世界で初めてである。

概要

 国立大学法人九州工業大学大学院情報工学研究院 植松祐輝准教授、国立大学法人九州大学大学院理学研究院 木村康之教授らの共同研究グループは、微小な気泡を水中に多数発生させ、長時間経過した溶液中に残存するナノ粒子の粒径と質量密度を計測し、そのナノ粒子が気泡ではないことを発見しました。今回の発見は産業応用が進んでいるマイクロバブル(※1)による洗浄技術の革新やナノバブル(※2)が本当に“バブル”(中身が気体)なのかという根本的な問いへ答えを出すにあたって、大きな貢献をするものと期待されます。
 この研究成果は、英文雑誌「Physica A: Statistical Mechanics and its Applications(論文誌)」(2024年7月6日)に掲載されました。

図. (a). 顕微鏡により水中のナノバブルをさまざまな高さで観察した実験系の模式 図. (b). 暗視野顕微鏡によるナノバブルの観察画像。図. (c).ナノバブルの粒子数密度の時間変化の模式図。0分時点では水中に均一に存在していたナノバブルが、時間経過とともに下の部分に沈降していっているのが分かる。

用語解説

(※1)マイクロバブル
直径1マイクロメートルから100マイクロメートルの気泡。ファインバブルとも呼ぶ。(1マイクロメートル=1000分の1ミリ)

(※2)ナノバブル
ナノメートルオーダーの直径の微細気泡に対して使われることのある呼称で、ISOでは直径1µ未満の気泡は「ウルトラファインバブル」と定義されている。

論文情報

雑誌名:「Physica A: Statistical Mechanics and its Applications」
論文タイトル:Nanobubble-Assisted Formation of Non-Gaseous Nanoparticles in Water
著者:Riku Miyazaki, Yasuyuki Kimura, and Yuki Uematsu
DOI 番号:10.1016/j.physa.2024.129932