Research Results 研究成果

重水を使ってミドリムシの光合成能力を調べる方法を開発 -再生可能なエネルギー実用化の促進に期待-

2017.08.24
研究成果Life & HealthTechnology

 九州大学大学院工学研究院の与那嶺雄介特任助教、星野友准教授らの研究グループは、重水を使って、藻類の一種であるミドリムシの光合成能力を調べる方法を開発しました。
 ミドリムシは光合成によって、水と二酸化炭素から糖類を生産します。ストレス環境下では、この糖類をパラミロン顆粒として備蓄し、さらにバイオ燃料にも使える油脂に転換します。光合成能力の高いミドリムシ個体を探し出すことができれば、再生可能なエネルギーの実用化を促進できます。本研究グループは、光合成の原料となる水の代わりに、通常の水素よりも重い「重水素」を持つ水(重水)を使って、光合成により重水素をミドリムシに取り込ませました。ラマン分光法を原理とした顕微鏡で観察した所、重水素標識された個体を見分けることができました。上記の手法は、光合成能力の高いミドリムシを選別する方法として、活用が期待できます。
 本研究成果は、2017年8月14日(月)にWiley Online Libraryの「ChemBioChem」オンライン速報版として公開されました。
 本研究は、内閣府革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)「セレンディピティの計画的創出による新価値創造」(合田圭介PM)の支援を受けて行われたものです。

光合成により重水素をミドリムシへ取込ませ、ラマン顕微鏡で追跡する、本手法の模式図。

(左)通常の顕微鏡でミドリムシを撮影した画像。
(右)同じ視野を、ラマン顕微鏡で撮影した画像。光合成で重水素が取り込まれた細胞のみが検出された。

研究者からひとこと

 本研究で開発した方法と、ImPACT合田プログラムで開発中の、超高速細胞分取装置とを組み合わせることにより、バイオ燃料を高効率に生産する「スーパーミドリムシ」を探し出せると期待できます。

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