Research Results 研究成果

分子の右手・左手を識別する新たな仕組み -光学活性化合物の簡便・高感度な蛍光センシング-

2017.09.22
研究成果Physics & ChemistryTechnology

 九州大学大学院工学研究院の野口誉夫特任助教と高等研究院の新海征治特別主幹教授らの研究グループは、公益財団法人九州先端科学技術研究所(ISIT)との共同研究により、光学活性化合物の右手・左手(キラリティー)を簡便に識別し定量化できる蛍光センシング技術を開発しました。
 アミノ酸や糖などの光学活性化合物には、右手と左手のような鏡像の関係にある分子が存在します。右手型か左手型かの違いで生体中では薬にも毒にもなることが知られているため、右手型・左手型を識別し定量化できる分析技術は創薬研究等において不可欠なものとなります。本研究グループは、代表的な光学活性化合物(左図RR-体, SS-体)の識別に取り組み、右手型・左手型という僅かな立体の差が自己組織化過程で増幅されることで、結果的に大きな蛍光強度の差として識別できることを見出しました(左図)。この仕組みにより右手型と左手型の存在比(光学純度)を蛍光分光法で簡便・高感度に決定できるようになりました(右図)。これは、光学活性化合物の識別の歴史では画期的なことです。
 本研究成果は、分子のキラリティー情報を蛍光強度として読み出す計測技術として、生命科学・創薬・食品分野への応用が期待されます。本研究は、JSPS科研費JP16K17937(若手研究B)の支援のもとに行なわれ、2017年8月28日にドイツ化学会の国際学術誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン速報版に掲載されました。(URL:http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/anie.201706142/full)

図1.分子の自己組織化に基づくキラリティー識別

図2.蛍光法による光学純度の決定

研究者からひとこと

大学の「殻」に閉じこもっていては決して得られなかった成果だと思っています。オープンな環境を提供して下さったISITの皆様に感謝致します。(野口)

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