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熊本地震による地殻内部の時空間変動を測定することに成功 〜地震断層・火山の状態を予測する新たな情報の提供へ向けて〜

2017.11.27
研究成果Physics & ChemistryTechnology

 九州大学大学院工学研究院地球資源システム工学部門/カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所(I2CNER)の 辻健 教授、池田達紀 助教、二宮啓 修士学生は、2016年4月に発生した熊本地震(マグニチュード7)の際に地殻深部で生じた時空間変動を測定することに成功しました。本研究のように、高い解像度で地殻深部の時空間変動を調べた例はこれまでになく、今後の地震や火山活動の評価に利用できると考えられます。
 研究グループは、防災科学技術研究所の地震計で記録された微小な振動(微動)に対して地震波干渉法と呼ばれる手法を適用し、熊本地震の震源断層周辺での地震波が伝わる速度(地震波速度)を調べました。地殻変動や、地震に伴う地殻へのダメージによって、地震波速度は変化します。つまり、地震波速度の時間変化を調べれば、地殻深部の変動をモニタリングすることができます。
 解析の結果、熊本地震に伴う断層周辺での地震波速度の低下を観測でき、地震でダメージを受けた地殻をマッピングすることに成功しました(図bの赤色の地域)。さらに地震後に発生した阿蘇山の噴火によって、地震波速度が上昇したことも明らかになりました(図dの青色の地域)。これは噴火によってマグマ溜まりの圧力が低下し、阿蘇山が硬くなったことを反映していると考えられます。このように本研究で開発した手法を使用すると、地殻内部で生じている複雑な変動を明らかにすることができます。地震断層と火山体内部のマグマ溜まりの時空間変動を、高い解像度で調べることができたのは、世界で初めてです。
 本研究で開発した手法は、GPS等の測地データ(地表変動データ)の地殻深部版と考えることもできます。地震や火山活動は地殻深部で生じる現象であり、その変動を正確に理解するためには、地殻深部を伝わる地震波を利用する本手法は有効であると考えられます。本手法を用いて、地震前に発生する微小な変動や、噴火前のシグナルを捉えることができれば、断層や火山の活動を予測する新たな情報源になる可能性があります。現在は、日本列島全体の地殻モニタリングに向けて、研究を継続しています。
 本研究は、日本学術振興会 新学術研究領域「地殻ダイナミクス」(JP15H01143)の支援を受けました。この成果は2017年11月25日(土)午前4時(日本時間)に米国の科学誌『Science Advances』に掲載されました。

図:熊本地震に伴う九州中部の地震波速度の時空間変化。地震前(パネルa)は地震波速度の変化はみられない。地震によって、断層周辺で地震波速度が低下(パネルb, cの赤色部)。さらに、阿蘇山の噴火によって地震波速度が増加(パネルdの青色部)。

研究者からひとこと

熊本地震で得られた貴重なデータを未来の防災へ反映できればと思いました。
今後も本研究を継続し、断層や火山の時空間変動を捉え、そのメカニズムをより正確に理解し、防災に利用できる情報を提供したいと考えております。

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