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ひきこもり・信頼に関連する血中バイオマーカーを発見 - 社会的ひきこもりの病態解明・予防・早期介入・治療法開発に期待 -

2018.02.16
研究成果Humanities & Social SciencesLife & Health

 社会的ひきこもり(以下、ひきこもり)は、就学・就労などの社会参加を回避し、半年以上に渡り家庭に留まり続けている状況のことで、ひきこもり者は15歳から39歳に限っても50万人を越え、少子高齢化を迎えている日本においてその打開は国家的急務です。様々な心理社会的支援や治療的介入がなされていますが、いまだ抜本的な解決策は見出されていません。
 文部科学省科研費・新学術領域研究「意志動力学」などの支援により、九州大学大学院医学研究院・九州大学病院の神庭重信教授(精神医学)、加藤隆弘講師(同上)、早川宏平共同研究員(同上)、米国オレゴン健康科学大学のアラン テオ助教(精神医学)、マレーシア・モナッシュ大学の渡部幹准教授(社会心理学)らを中心とする国際共同研究グループは、ひきこもり評価のための診断面接法やパソコンを使った評価システムを近年開発しており、海外にもひきこもり者が存在することや、ひきこもり者の多くに回避性パーソナリティ傾向や信頼感が乏しい傾向を見出しました。
今回、ひきこもりに関連する生物学的基盤を探索するために、ひきこもりではないボランティア(大学生)と九州大学病院ひきこもり研究外来を受診したひきこもり者から採血を行い、探索した血中物質のうち、血中の炎症関連マーカー(高感度CRP・FDP)の高値や尿酸・HDLコレステロールの低値が、男女それぞれ違う形で、ひきこもり傾向に関連していることを発見しました。さらにこれらの血中物質は、他者への協力や信頼といった向社会的行動とも関連していることが、「信頼ゲーム」とよばれる経済ゲームを使った行動実験により明らかになりました。
 本研究成果は、心理社会的側面以外に生物学的因子がひきこもり傾向と関連する可能性を示唆する初めての報告であり、ひきこもりの病態解明が進展するばかりでなく、ひきこもりの予防、早期介入、栄養療法などの治療法開発に貢献することが期待されます。
 本研究は新学術領域研究「意志動力学」(A02計画班)JP16H06403の支援を受けました。本研究成果は、平成30年2月13日(火)午前10時(英国時間)に、オープンアクセスの国際科学雑誌「Scientific Reports」に掲載されました。

(図1)一般若年成人のひきこもり回避傾向と関連する血中物質(非ひきこもり者のデータ)

(図2)ひきこもり者で低下していた血中物質(男性では尿酸値、女性ではHDLコレステロール値)

研究者からひとこと

 地域のひきこもり支援関連機関および海外の研究機関と連携し、世界初のひきこもり研究外来を大学病院に開設しており、ひきこもり傾向を有する患者さんの評価・診断・治療に加えて、ひきこもりに関する心理的・社会的・生物学的側面からひきこもりの病態解明とその予防法・治療法開発をすすめています。今回のパイロット研究をさらに発展させることで、心理社会的介入に加えて、生物学的アプローチによるひきこもり打開策の創出が期待されます。

論文情報

Blood biomarkers of Hikikomori, a severe social withdrawal syndrome ,Scientific Reports,
10.1038/s41598-018-21260-w

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