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Research Results 研究成果

弱酸性条件で進行するベンジリック位チオール化反応の開発に成功 〜生体共役反応の新たな選択肢〜

2018.02.22
研究成果Life & Health

 タンパク質などの生体由来の分子と合成分子を結びつける手法に生体共役反応があります。医薬の分野において幅広く用いられており、抗体と薬物の複合体や生命機能を解明するための分子を合成する上で欠かす事ができません。多くの場合、高い反応性を持つことから、タンパク質中に含まれるチオール基*¹が生体共役反応の反応点としてよく用いられてきました。しかし、これまでに開発されてきた反応は適用可能な水素イオン濃度指数(pH)に制限があり、pHによってはチオール基の空気酸化、チオールの付加物からのチオール基の脱離が起こるなど問題点がありました。
 今回、九州大学大学院薬学研究院の大嶋孝志教授、渡邊賢司学術研究員らはこれまで生体共役反応の反応点として用いられてこなかったベンジリック型水酸基*²に着目しました。ベンジリック型水酸基が適切に配置された反応剤(図)を用いる事で、チオール基の空気酸化が起こらない弱酸性条件の下で生体共役反応を開発することに成功しました。本反応剤は、中性やアルカリ性条件ではベンジリック位水酸基が活性化されないため、チオールやアミンと反応せず、弱酸性条件でチオールとのみ特異的に反応しました。反応によって生成したチオールの付加物は、他のチオール類が共存する条件でもチオール基の交換を起こさず、安定に存在しました。さらに、本反応が実際に様々なタンパク質のチオール基の修飾に適用可能であることを見出し、タンパク質への機能性分子の導入にも成功しました。今後は次世代の医薬品として注目される抗体–薬物複合体や生命現象を理解するためのツール分子の作製に本反応が用いられることが期待されます。
 本研究成果は、Wileyが出版する国際総合化学誌「Chemistry–A European Journal」のオンライン版に2018年2月19日(月)に採録されました(DOI: 10.1002/chem.201706149)。また、本論文は同誌の編集者が重要と認める論文としてHot Paper及びFrontispieceに選出されました。
 本研究は日本学術振興会 科学研究費助成事業新学術領域研究 (JP15H05846)、若手研究B(JP16K17902)の支援を受けました。

*1 水素化された硫黄を末端に持つ官能基
*2 芳香族基に直接結合している炭素の位置にある水酸基

(図)今回開発した、ベンジリック型水酸基を持つ反応剤と生体共役反応への応用

大嶋孝志教授(左)と渡邊賢司学術研究員

論文情報

Bioconjugation with Thiols by Benzylic Substitution ,Chemistry–A European Journal,
10.1002/chem.201706149

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