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タンパク質分解酵素の前駆体から活性型への不安定な中間状態(遷移状態)を捕まえる ~感染細菌を高感度で検出するタンパク質分解酵素の初期反応を解明~

2018.06.08
研究成果Life & HealthPhysics & Chemistry

 今回、理学研究院の柴田俊生助教、川畑俊一郎主幹教授らの研究グループは、タンパク質組換え体の技術で調製したカブトガニ凝固因子のひとつであるC因子の変異体を用いて、遷移状態のC*因子を捕らえることに成功しました。グラム陰性菌の細胞壁成分であるリポ多糖(LPS)は、過剰に感染すると発熱や多臓器不全、さらには致死性のショック症状を引き起こします。一方で、カブトガニ血球から分泌されるタンパク質分解酵素前駆体のC因子は、ごく微量のLPSに鋭敏に反応して活性型のα-C因子となるため、LPSの高感度検出試薬として利用されてきました。これまで、細菌表面のLPSに結合したC因子は、不安定な中間状態である遷移状態のC*因子となり、C*因子同士が接近して活性型のα-C因子に変換されると推定されていました。この活性化の過程をタンパク質分解酵素前駆体の自己触媒的活性化といいます。しかし、自己触媒的活性化の重要なステージである遷移状態は不安的で寿命が短く、その実態を捕らえることはできませんでした。今回の遷移状態を捕らえる研究手法は、自己触媒的活性化を介して活性化される他のタンパク質分解酵素前駆体の研究に応用されることが期待されます。
 本研究成果は、米国の国際学術誌『The Journal of Biological Chemistry』のオンライン速報版で2018年6月5日(火)(日本時間)に掲載されました。近日中に確定版が掲載される予定です。

細菌表面におけるC因子の自己触媒的活性化モデル:C因子は、細菌表面のLPS上で複合体を形成すると遷移状態のC*因子となり、C*因子同士が互いを自己触媒的に切断することで活性型のα-Cに変換されます。

研究者からひとこと

今回、私(川畑)の学生時代から約40年来の懸案であったC因子の遷移状態を捕まえることできました。それは、タンパク質組換え体の作成技術の進歩と若手研究者の精進の賜物です。ようやく、グラム陰性菌を高感度で検出できるC因子の初期反応の本質に近づくことができました。

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