Research Results 研究成果
九州大学大学院医学研究院の今村拓也准教授、星薬科大学先端生命科学研究センターの山本直樹特任助教らの研究グループは、九州大学大学院医学研究院の中島欽一教授、京都大学大学院理学研究科の阿形清和教授との共同研究により、ほ乳類神経モデル細胞を用いて、1,000を超える遺伝子にプロモーターノンコーディングRNA(pancRNA)がペアとなって存在することを発見していましたが(2015年2月15日付けプレスリリース)、これらは、エネルギーを供給されても細胞が増殖せずに安定的に維持されるメカニズムに必須であることを今回新たに発見しました。今後、動物組織や細胞の多様性を生み出し、維持するための基本メカニズムを解明する研究の促進、また、再生医療に役立つ細胞における遺伝子スイッチをON・OFFの両面から制御する応用展開が期待されます。
本研究成果は、2016年3月4日(金)午前7時5分(英国時間)に、英国科学雑誌『Nucleic Acids Research』のオンライン版で掲載されました。
神経伝達のモデル図。神経細胞が分裂してしまうと、新たに作られた細胞(図中に紫で表示)が神経伝達(図中に赤で表示)にノイズを生んでしまう。
神経モデル細胞の増殖抑制メカニズム。PC12細胞が神経のようになるとき、経路IIにノンコーディングRNAが作用することで、細胞分裂を完全に停止し、異常な細胞増殖を抑制できる。
ゲノムにコードされるpancRNAの発見。ゲノムには、矢印で示したタンパク質をコードする遺伝子以外にも、橙色で示したノンコーディングRNAがたくさん見つかってきていた。昨年までに、本研究グループは、次世代シーケンサー技術によるビッグデータ解析から、遺伝子とペアとなるpancRNA(図中の青矢印)を数千発見していた。
神経細胞には「増えない」という性質が備わることで、一生を通じて神経回路の安定性を維持しています。今回、細胞を増やさないメカニズムに関わる重要な因子としてノンコーディングRNAをカタログ化できたことで、疾患の治療応用研究に資すると考えています。